187. 注意

 なんか不味い雰囲気を感じて逃亡。


 どうも夜に改造したドラゴンが原因で騒ぎになり始めてるようだった。なので寒いけど今日は朝から街へ出ることにした。


 でも人通りも少ないし、あんまり行くところないんだよなぁ。秋まではわんさかいた観光客っぽい人たちも今はもういないっぽい。帰ったのか宿にこもっているのかどっちかだと思う。お店もほとんど閉まってるから、おこぼれをもらうこともできない。


 しばらくフラフラと飛び回ってみる。こうして改めて見ると、街も大分変わったなぁ。至る所に小さな妖精のオブジェがくっ付いてる。おもいっきり妖精で観光PRする気満々なのが見て取れてちょっと笑ってしまった。


 街のそこかしこにある小さめの橋の柵に並んでいる妖精オブジェ、かなりできが良い。これに紛れて本物の私が並んでいても気付かれないかもしれない。春になってまた観光客が来たら、観光客相手に本物ドッキリとか面白いかもね。



 そういや、ずーっと前に錬金術師の建物にポーションを作り置きしてたけどどうなったかなぁ。ちょっとは使ったりしてるんだろうか。ふと気になってもう1度錬金術師の建物の地下に行ってみると、ポーションは1個もなかった。


 え、めっちゃ大量に置いておいたのに全部使った? それとも何処かに売り払ったんかな。捨てられてたりしたら悲しいんだけど。ちょっと気になる。


 しょうがないからもう1度ポーションを倉庫いっぱいに補充しておいた。そして今後、これを定期的に観察するのだ。それで以前のポーションが使われたのか捨てられたのか分かるでしょ。



 冒険者ギルドにも行ってみる。暗い期間中は中の飲食コーナーに人がいっぱいいたのに今はほとんど人がいない。あ、お酒マンだ。相変わらず飲んだくれてるっぽい。


「肉! 肉!」

「……、XXX」


 お酒マンから一口サイズに切ったお肉をもらう。いやぁ、喋れるって素晴らしいね。イマイチ何言われてるか分からないけど。すかさず店の奥から店員のおじさんが小さい私サイズの串を用意してくれた。串くらい自分で作れるんだけど、毎回わざわざ用意してくれるんだよね。うん、うまうま。


 お酒マン、1日中ここで飲んだくれてるのかな。結構ここ寒いと思うんだけど。しかも夜はめっちゃ暗いし。お城みたいな魔法の照明はなくて壁際にいくつかランプがあるだけなんだよね。


 しょうがない、ギルドにも照明暖房を取り付けてあげよう。中央に1個で良いよね。お城の照明は魔力のある石が動力源になっていた。似たモノなら余裕で作れるってもんよ。ちょっと大きめの玉を作って……、周囲が暗くなったら光るようにして、寒ければ暖かい風を出す。よし。


 装飾にも凝っておこうかな。黒い金属棒をくるくる巻いて、玉に絡ませる。妖精のシルエットも付けとこ。そんでもってこれを天井からぶら下げて、完成!


 お酒マンが何か言っている。たぶんお礼だろう。お城の人たちの言葉はちょっと分かるようになってきたんだけど、町の人たち、特に冒険者っぽい人たちの言葉は分かりづらいんだよなぁ。たぶん言葉使いが上流階級と一般階級で違うのだと思う。


 しばらく冒険者ギルドでお肉を堪能して、また外に出た。そう言えば、まだ行ったことがない大きめの建物が残っているんだった。外からは何の建物か分からなかった上に、どうも観光っぽい施設じゃないっぽかったから後回しにしてたんだよね。


 それじゃぁ、ちょっとお邪魔しますよっと……。うん、商人っぽい人たちやお店の店員さんっぽい人たちが多いかな。思ったより人がいる。カウンターがあって、なんか市役所っぽい施設だなぁ。


 って、うわ! 超でかい私の肖像画がある!?

うわ! しかも上の階からドタバタとおじリーダーが下りてきた! めっちゃ笑顔だ! 揉み手しながら近付いてくる! 後ろにはおじサブもいる!


 なるほど、おじリーダー基地だったか。たぶん商工会議所みたいな所なんだろう。ここはダメ、逃亡だ。おじリーダーに関わるとロクなことがない。もう2度とここには近付かないよ。


 うーん、色々まわったし今日はもう満足かな。そろそろお城に帰ろ。

そうしてお城に帰った私は、夜まで鳥籠メイドさんにおこられたのだった……。


 忘れてた、ドラゴンのこと。


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