186. 騒ぎ
その日は悲鳴から始まりました。
早朝、外はまだ薄暗い時間帯に1つの大きな悲鳴が上がったのです。
妖精様付き補佐のアウリに妖精様を任せて様子を見にきますと、既に人だかりができておりました。人が集まってくる度に小さな悲鳴が上がっているようです。私もそれを見て肺が縮むような恐怖を覚えました。ドラゴンが今まさに炎を吐こうとしていたのです。悲鳴は上げませんでしたが、上げなかったのではなく、悲鳴も上げられない程の驚愕でした。
しかし、よく見るとドラゴンは止まっています。今にも動き出しそうですが、動く気配はありません。なるほど、悲鳴が上がるような何かがあると予想して見にきてもこれ程の恐怖を感じたのです。これを最初に見た者が大きな悲鳴をあげたのも納得ですね。
このドラゴンに関しては、剥製にしてホールに飾ると昨日の内に通達されておりました。王国を訪れた他国の使者への牽制が目的なのでしょう。そして、王城仕えの者に要らぬ混乱が起こらぬよう、1度ホールを確認しておくことが推奨されていたのです。
そのため、
これは、妖精様の
恐怖が収まると周りの違和感にも気付きました。まだ日が昇り切っていない時間帯の筈なのですが、城内が昼間のように明るく暖かいのです。
誰かが照明の光が違うと声を上げました。その声に従い照明を確認しますと、確かに普段と異なるようです。設置されております照明の魔道具は、それ自体はギラ付く光を放つものの、明るく照らされる範囲はそれ程広くありません。
それが今は、よく見なければ照明の魔道具が光っていると気付けない程弱々しく見えるのですが、ホール全体が昼間の日差しのように自然に照らされているのです。これも妖精様によるものでしょう。
王妃様からのご指示で、妖精様にはあまりモノを作らないようにお願いしていたのですがこの有様です。モノを1から作り出すのではなく、既に存在するものを改変するだけなら
改めて注意するため部屋に戻りますと、妖精様はすでに居られませんでした。
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