181. ハウス
雪だ。まだ積もりそうな程じゃないけど、秋が過ぎたばかりで雪が降りだすってことは真冬はめっちゃ積もるのかもしれない。
白虹で太陽が隠れていた期間、後半はそこそこ寒かったんだけどその寒さは明るくなって緩和した。それが冬になってまた寒くなってきたのか。服もちょっと厚手の服を着せてもらっている。
あれから銀髪ちゃんはまたどこかへ出かけて行ってしまった。なんか深刻な顔してたから忙しいのかもしれないなぁ。銀髪ちゃんはだいたいいつも仏頂面なんだけど、だんだん仏頂面にも種類があって感情が違ってるってことが分かるようになってきたよ。言葉が分からない分、私も周りの機微に聡くなったもんだよね、うんうん。
おじゃーさんとか、久しぶりに見た筋肉オバケも銀髪ちゃんと一緒に出発した。金髪兄さんも最近見ない。逆に勇者くんはずっとお城に居る。勇者らしく冒険の旅とか行けば良いのに。仕方がないから勇者くんには定期的に試練を与えているのだ。
んで、今私の部屋には、ぽちゃ商人さんと職人ぽい人が来ているんだよね。ぽちゃ商人さんは私用のドレスとか小物を用意してくれてる商人さんだ。職人さんは壁にドールハウスを設置中。そう、私用の家が建つらしい。これで真冬にドカ雪が降る寒さになっても凍えずに済みそうだね。ハロー夢のマイホーム、さらば鳥籠生活!
壁際に小さめのテーブルを置いて、その机の上に設置するっぽい。ドールハウスの剥き身の壁を部屋の壁に設置、そこに床を繋げて階段を設置して……。そう、階段。なんと2階建てなのだ。かなりでかい。
たぶん私は身長15cmくらいで1/6サイズだと思うから、1/6サイズのドールハウスってことになる。鳥籠メイドさんの腰から頭までより高いよ。
それから中身丸出しのドールハウスに小さな内装を置いていって、四方を壁で囲んで、それから屋根。ドアや窓は元から壁に付いていた。壁は石壁だ。本物の小さな石を積み上げて固めて作ってある。プラスチック製みたいなチャチさはない。
そうして、あれよあれよという間にドールハウスが出来上がった。重厚な石造りの青い屋根の私サイズの家だ。職人さんが私の方を見てくる。よしよし、じゃぁ内見といこうじゃないか。
まずは玄関。ドラゴン頭の黒いドアノッカーも付いてる重厚な扉だ。ノッカーに紐がついてる。なんだこれ? 紐をたどってみると人間サイズのレバーに繋がっていた。レバーを押し下げてみると玄関のドアノッカーがコンコン鳴る。なるほど、私がドールハウスの中に居るときはこれでノックするのか。そこまで凝らなくても屋根とかコツコツつつけば良かったと思うんだけど。
まぁ良いや。ドアノブを捻って……、外開きか。うわっ!? びっくりした! 私人形がドールハウスの中にいる! いつも私人形が設置されてる壁際の台を見るといつの間にかいなかった。ドールハウスを組み立ててたときに先に中に入れてたのか。
うーん、1つ屋根の下にコイツと一緒にいるのヤなんだけど……。今までもお城という1つ屋根の下だったんだけどさ、狭さが違う。この密閉空間に同居は……。とりあえず今は良いか。
内装は結構豪華。海へ行ったときに寄った貴族の屋敷並に豪華だよ。1階に2部屋、片方の部屋は私人形が占拠しているけどね。2階に寝室1部屋、ベッドは天蓋まで付いててそこそこフカフカで良い感じ。タンスとかクローゼットは空っぽだけど普通に使えそう。だけど暖炉はさすがに飾りで実際には燃やせないか。
うわっ、びびった! 窓の外から職人さんがのぞき込んでた! でかい人間なんてもう見慣れたと思ってたけど、窓越しにでかいドアップの顔を見るとホラー感ハンパない。後で全部の窓にカーテン付けよ……。
とりあえず両手で丸を作ってオッケーのサインを出す。そして壁をすり抜けてドールハウスの外に出た。今思ったけど、玄関のドア2度と使わないな、これ。ドア開けて入って閉めてをするなら、壁すり抜けた方が早いし……。
職人さんが鳥籠メイドさんと見習いメイドちゃんに話しかけてる。何話してんだろと思ったら、おもむろに職人さんがドールハウスの一部をガバッとスライドさせた。うわー、私の家が2つに割れた!
そして小さな道具でなんやかんやしてる。なるほど、ドールハウスの中身の掃除手順か。ついに私のプライベート空間ができたと思ったけど強制公開できるなんて、プライバシーも何もないね。一通り説明して職人さんとぽちゃ商人さんは帰っていった。
そういや、こういうイベントのときってほぼ必ずドアップ様が来るのに今回は来なかったな。なんか結婚とか婚約とか言ってたし、息子のお嫁さん探しに忙しいのかもしれない。ちゃんと聞き取れなかったけど、金髪兄さんか勇者くん、どちらかが結婚するんだと思う。
さて、もう自由時間だよね。じゃぁ、アレをやるか。外に行っても寒いからね。室内でできる遊びを考えてたんだ。
まず、テーブルにボードゲームのボードを広げる。でもボードゲームはやらない。だって勝てないし。駒はボードの中央に並べるのだ。
そして2本の金属棒を用意。相変わらずどういう原理で生成されているのか分からないけど、思った通りの棒が出てくる。それを隙間を開けて2本並べてレールにして、そのレールの中央に支点を付けてシーソーのようにギッタンバッコンできるようにする。それを回転軸の上に乗せて向きを変えられるようにしてっと……。
このレールの上をボードに向けてビー玉サイズの玉を転がすのだ。タイミングを合わせてレールを跳ね上げ玉を飛ばし、ボードの駒にブチ当てる。駒が全部倒れれば満点。要はボウリングみたいなもんだよね。
ボードゲームのボードと駒は結構高級そうだ。これに玉をブチ当てたら壊れるかもしれない。なので壊れないように保護魔法を掛ける。これで、ドラゴンを倒してお城に突き刺さっても壊れなかったチェケラ号並の強度になったハズだ。よしよし。
今度は転がすための玉。ボードと駒が高級っぽいから玉も高級っぽくしないとね。むむむむ……っと、はいできた。傷一つない透明な玉。適当に作ったから何でできてるか分からないけど、一見水晶玉に見える。何故かうっすら光ってて高級感バッチリだ。
さっそくレールの上に乗せて、向きよーし、角度よーし。玉から手を離すとレールに沿って転がって……、ここでレールを跳ね上げる! ……外れたか。ムズいな。よしもう1度。
と思ったら鳥籠メイドさんが何か言ってきた。うーん、作る……、作るな? 果物……、うん?
なんだって?
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