153. 収穫祭
最近見習いメイドちゃんがドレス姿になってテーブルマナーの教育を受けているのをよく見るようになった。ついでなのか、私もそれに付き合わされている。私までドレスをとっかえひっかえする必要はあるのかな。お菓子が出るときは付き合ってあげてるけど、お菓子が出ない教育は脱走だ。
今日もそんなマナー教育なのかと思っていたら、どうも今回は本番らしい。何故なら連れられた先が外なのだ。いつもは屋内で見習いメイドちゃんと一緒に座っているんだけど、見習いメイドちゃんは先に来ていた。そして私は銀髪ちゃんと一緒に登場、さらに知らない女の子が居る。女の子と言っても銀髪ちゃんよりはだいぶ年上で、勇者くんくらいかな。
知らない子が話しかけてきた。えーと、妖精様……の、目? どういうこと? 私の目が何だって? 目、目……、目が綺麗とかかな? まさか目が欲しいから刳り抜くとか言ってないよね? 見た目に反してすごいバイオレンスだったり?
いや、これは拝まれてる? うーん、つまりこの子は目が好きなのかな。目フェチさんか。この世界の人の瞳っていろんな色があって宝石みたいだもんね。そう思って見てると、なんだか自分の目も気にしてる感じがするし。
とりあえず何かリアクションしないと。拝まれてるから仏のポーズで良いか。見よ、そして崇めよ、この完璧な仏像ポーズ。おお迷える子羊よー、汝の道に幸あらんことをー。
うお、子羊出てきた! 迷える子羊だ! どんどん出てくる! 消えて消えて! あ、消えた。あぶねー。
目フェチさんもその後ろのメイドさんも驚いてたけど、銀髪ちゃんが冷静に執り成してくれたら落ち着いたっぽい。ここは全力で何事もなかった風を装わないと。羊なんて居なかった。良いね?
その後は何事もなくお茶飲んでお菓子を食べて解散。完璧優雅な私ならお茶会開催もオチャノコサイサイなのだ。だけど、その後日にも何回も何回もお茶会に参加させられたのはまいっちゃったよ。正直最初の目フェチさん以外印象に残ってないけど、しょうがないよね。
そして今日もドレスを着せられお茶会か、と思っていたらそのまま馬車に乗せられてしまった。前にも後ろにも豪華な騎士団、前の方には音楽隊もいるっぽい。同じ馬車には金髪兄さんと銀髪ちゃんも乗っていて、びっくりすることに1つの前の馬車には
パッカパッカカッポカッポ馬の蹄を鳴らして貴族街を通り過ぎて街に出ると、街はやっぱりお祭り騒ぎだった。ちょっと前に収穫祭の準備をしていたから、たぶん今日が収穫祭なんだと思う。海に行く前もお祭りしてたし、この街はお祭りの多い街なんだねぇ。
パレードは中央広場を1周まわって東へ、教会の前で止まる。1つ前の馬車から赤絨毯がズアーッと敷かれてその両脇に音楽隊がズババっと並ぶ。そして馬車から降りた
たぶんこれは付いていくべきなんだろう。空気を読める私は銀髪ちゃんと一緒に教会へ。ラッパがパーパー鳴って多くの人が見守る中、暖簾みたいな布がかかった教会内の門をくぐる。
出た、ここも暖簾だ。最近門という門に暖簾みたいな布が掛かっていることが多い。しかも暖簾みたいな中途半端な長さじゃなくて床すれすれくらいまでの長さだ。だから人が通る度に布を搔き分ける必要がある。これから冬になってくんで寒さ対策なのかな。魔除けの意味合いとかもあるんだろうか。
そんなことを思っていると祭壇までたどり着いた。前に見たとおり野菜や果物が並べられている。脇には
一旦地面付近まで高度を落とし、タイミングを見計らって……、いっきに観客に紛れる! みんなの足を縫って前方へ、そして物陰を飛び渡りながら祭壇裏に到着。完璧!
ふんふん、果物は分かりやすいね。まるまるとしてゴツくて緑じゃなく瑞々しいのは、たぶんだいたい果物でしょ。私用の料理にはあまり果物が出ないから、見たことないのが多くて興味深い。南国っぽいドギツイ色の果物は無いのか。全体的にくすんだ色が多くて、あんまり美味しそうじゃない? むー。
それから葉っぱ系。これは冒険者ギルドで見たことあるヤツだ。なるほどなるほど、全部が全部野菜ってワケじゃなさそうだね。たぶん薬草とかも混じってるな。
お、これはすごく甘い香りがする。触ってみると場が盛り上がった。なんだなんだ!? いつの間にかみんなに注目されてたっぽい。全体的にざわざわしている中、なんか喜んでる人が数人、それからがっかりしている人が数十人……。うん?
多少言葉が分かるような気になってたけど、全然分からん。って言うか、お城の人たちの言葉遣いに対して街の人たちの言葉遣いって違うんだよね。なんか略されていると言うか、音の流れが違って聞こえるんだよ。
おっと。
うーん……。退屈だな、収穫祭。
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