145. 試乗会
港町で買ったお土産は、その日の内に取り合いのように分配された。どれが誰用のお土産とか特に考えてなかったから、適当に自分たちで分配してくれたのは逆に良かったよ。いやー、取り合いになるくらい喜んでくれて良かった良かった。
貝殻イヤリングだけは銀髪ちゃん用に用意したから、それだけは自分で銀髪ちゃんに付けてあげたらめっちゃ喜んでた。いやー、良かった良かった。子どもでも王族だから貝殻のアクセサリーなんて嬉しくないかもしれないと、渡す直前で急に心配になったんだよね。うんうん。
ただ誤算だったのは、自分用に買った
ってなワケで、今はチェケラ号を取り囲んだお偉いさんたちの集団を遠目に観察しているところなのだ。普通に飛ばせば良いものを、何をトチ狂ったのか
いくらチェケラ号が大きいからと言っても人が乗るには小さすぎる。羽の端から端までは成人男性が両手を広げたくらい大きいけど、胴体部分はスケボーやスノボーのボードくらいしかない。
みんなが見守る中、いつも
うお、
たまに思うんだけど、こっちの世界の人間て運動神経良すぎだよね。でもまさか王様みたいなずっと座ってる人が高速スカイボードを乗りこなすとは思わなかったなー。
でも残念、時間切れ。排出された銅貨が
えーと、チェケラ号はどこ行ったかな? げ、お城の壁に突き刺さってるわ。でも私のせいじゃないしね、知~らないっと。そのまま私は街に出た。
街も、海へ行く前からかなり様変わりしていた。街のいたるところに妖精モチーフの飾り付けがされている。そして観光客らしき人たちも多いっぽい。私を指さして驚いている人が結構いるね。いぇーい、本物の妖精だよ、ピースピース。
以前のお土産屋さんの妖精グッズは妖精印のクッキー程度だったのに、今や他にも妖精グッズが色々と置かれていた。蓋に妖精モチーフの彫り絵があるオルゴールは、前におじリーダーがお城に持ってきてたヤツだね。つまり、これらの売り上げは全部おじリーダーに行ってるのか?
他にも見たことないバリエーションが増えていて、立体的な妖精がちょこんと座ってるオルゴールなんかもある。アクセサリー屋にも妖精モチーフのが多い。あとは妖精モチーフの園芸グッズが主流かな。いやー、清々しいまでに妖精で儲ける気満々だねぇ。私としては自分がここに居て良いよって言われてる感じがするから全然良いんだけどね。
久しぶりに冒険者ギルドにも行ってみる。お偉いさん用っぽい席に受付小さんが座って書類仕事をしていた。やっぱ受付小さんは、受付嬢じゃなくてお偉いさんなのか。筋肉オバケと小太りさんはいないっぽい。あ、気付かれた。そんな驚かなくても良くない?
1階に行ってみると、いつもいるお酒マンはいなかった。代わりに見たことない冒険者がいっぱいいる。この時間にしては珍しく人が多いね。壁には1人の男性の似顔絵と全身絵が貼ってあった。前はなかったよね? お尋ね者かな? 全国指名手配?
ぼーっと見て回ってると、ふいに人の手が伸びてきた。む、捕まえようとしてる? ひょいひょいっと避けていると、捕まえようとする冒険者とそれを阻止しようとする冒険者の乱闘が始まってしまった。なんで? 受付小さんも飛び出てきてえらい騒ぎになってきたよ。やべ、逃げよ。
冒険者ギルドを出て街を飛んでいると、人の流れが教会に向かっているのに気付いた。教会は
あー、これって収穫祭的な? 秋に作物を神に捧げるってことだから、たぶん収穫祭だよね。なるほどなるほど……。
つまり、またお祭ってことね!
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