128. 盾
帝国兵と遭遇、戦闘になったと思えば、そのド真ん中を大岩を引き連れた冒険者達が駆け抜けていった。
あの岩が見た目に反して軽いっていう岩か。どう見ても重そうだ。そりゃぁ、冒険者達も必死に逃げるだろう。だがよく見ると水に浮いてる感じだな。あの見た目で水に浮くのか。
しかし、ややこしいことになった。この混乱した状況で、事情を知らなさそうな冒険者が追加か……。
何が何だか分からんが、周りの混乱に流されるな。冷静になれ。帝国兵との人数差は大きい。他隊と合流するか増援するまで戦闘は避けたい。この混乱に乗じて離脱したいが……。俺は転がってきた大岩を帝国兵側に蹴り飛ばす。
「離脱だ! 下がるぞ!」
どうやら向こうも戦闘を避けたいようだな。追ってくる気は全くなさそうだ。しばらく走って、ある程度距離を取ってから止まる。
「ややこしいことになった。おそらく地下の何かしらの異変に冒険者ギルドが感づいたのだろう。帝国の動きか、俺達の行動か、もしくは妖精の仕掛けか。そのいずれかを感じ取って、調査目的で冒険者を寄越したようだ。クソ、先に冒険者ギルドへ話を通しておくべきだったな。冒険者に帝国兵を見られてしまった」
「済んだことは仕方がありませぬよ。それより殿下」
「なんだ?」
魔術師団長殿が目をつむり、何かを探るように集中しだした。今度は何だ? もう何が起きてもそれほど驚かないぞ。
「異様な魔力を感じます。とても大きな魔力ですじゃ。……これは、どこかこう、妖精剣にも似た感じが」
「また妖精か。行ってみよう」
「――これか」
魔術師団長殿の誘導で辿り着いた先は、小さな部屋のようなスペースだった。下水のメンテナンス用かもしれない。そのスペースの床の真ん中に、盾のようなモノが突き刺さっている。
「なんだと思う?」
「盾では……?」
「うーむ……」
ベースは盾なんだが、盾にしてはあまり実用的に見えない。まず中途半端にでかい。重装歩兵用のタワーシールド程大きくはないが、片手で持って振り回せる程小さくはない。厚みもやけに分厚い。地面に立てて使うにしては小さ過ぎるが、手に持って使うには大きく分厚過ぎる。
そして何より邪魔なのは、両脇から妖精の羽のようなモノが突き出ていることだ。装飾用か?
後ろに回ってみると、腕に固定するための皮ベルトや取っ手があった。装飾用にしてはやけに実用的な造りだな。しかしこの裏面の構造、なるほど盾だ。間違いない。
もしかして軽いのか? さっきの大岩の件もある。見た目は重厚だが振り回せるほど軽い可能性もあるな。それにしても両横の羽は邪魔だが。
「ん、取れんな」
持ち上げようとしてみたが、がっちり床に刺さっていて引き抜くことはできなかった。しょうがない。
「よし、これは放置だ。予定通り帰還を優先……、うお!?」
急に昼のように明るくなった! まずい、
「殿下! あの人形は胸に動力源があるハズですじゃ! それを外せば止まりまする!」
なるほど。俺は持っていた照明の魔道具を投げつけた。
しかし思ったより速い! 俺の剣も半ばから斬り飛ばされてしまった。だがここまで距離を詰めれば行ける! 攻撃後の一瞬止まった隙に、俺は
――ドボン
ズバババッ!
と思ったら水しぶきを撒き散らす! 舞い上がる汚水!
「うえ、きったねぇ!」
「うわ、ぺっぺっ。勘弁してくださいよぉ」
あーもー。だが、剣が無ければただ光るだけだ。俺は下水に手を突っ込み
――ガコ
「なんだ? 何の音だ? 今度は何が起きる?」
「分かりません。しかし殿下、さすがですね。妖精様ドールをお止めになられるとは」
「殿下、盾の方です。盾から音が鳴ったように聞こえました」
「ふむ」
ボロボロの
――
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