126. 城塞都市
船でどんぶらこっこ河を下った私たちは、暗くなる前に街に入った。いつもいた街よりは小さいけど、それなりに大きな街だ。船だからと言って夜も航行できるワケじゃないみたいだね。照明の魔道具があると言ってもお城だけ。基本この世界の夜は真っ暗なのだ。
船の中で馬車に乗って、馬車のまま船を降りる。街に入った私たちは微妙な雰囲気の住民に迎えられた。喜び半分、悲しみ半分って感じ? いや、もっと複雑な感情っぽいね。戸惑ってる?
町全体から薄っすら悪意に近いようなものを感じる。最初にお城や冒険者ギルドに行ったときの感じに似ているような似ていないような……。私にあまり良い感情を抱いていないときの反応だ。
うーん。もっとこう、わー!妖精さんだー!うひょー!って反応を期待してたんだけど……。南に行ったときは実際そんな感じだったのに、私の人気も北には届いてないってことか。
これが井の中の蛙ってヤツ? そう言えば、下水の中のカエルちゃんは元気にやってるかな? 今頃勇者くんをビビらせてるハズなんだけど。
街は河を挟んで東西に広がっている。河が街の中央を分断しているのだ。街並みは前の街とあまり変わらないけど、それを取り囲む壁などは物々しい。城塞都市って感じだね。
河の両側が丘になっていて東側の丘にお城がある。お城っていうか砦なのかな。城砦ってヤツ? 河も街の入り口に物々しい水門があってがっちりガードしていた。船で攻められたらここが最後の砦になるのかもしれないね。
馬車はヘアピンカーブを何度も曲がって東側の丘を登って砦を目指す。馬車の前に騎士が3騎、後ろに2騎。夕暮れで半分朱く、半分シルエットになった一団がパッカパッカと進んで行く。騎士は6人いたハズだから1人足りないね。先に連絡にでも行ったのかな。
高いところに来たことである程度街を見渡せるようになった。川沿いに工事中みたいなところが多い。そう言えばちょっと前に海から海水が逆流してきていたし、そのときの被害がまだ直ってないのかもなぁ。
馬車の中には鳥籠メイドさんに見習いメイドちゃんと私、それからコックさんもいる。コックさんは相変わらず指が太い。この太い指で私サイズの小さな料理を作れるんだからすごいよねぇ。
鳥籠メイドさんは未だに私に勉強させようとしてくる。今は表に絵が、裏に文字が書かれたカードをひたすら私に見せてくるんだよ。たぶん裏の文字が表の絵の名前なんだろうね。いくつか名詞を覚えたような気になっても、数分後に同じカードを見せられると全く覚えていない自分に愕然とした。これは無理だって。
そんな感じでパッカパッカ進んで砦に近づいた。キュルキュルという音をたてながらでかい鉄格子みたいなのが上がり、その後に木製の扉がギギギともったいぶって開いていく。堀は無いから跳ね橋も無いんだけど、なかなか重厚感がある城砦だ。
砦の中の中庭みたいなところで馬車を降りて、執事さんらしき人に出迎えられた。騎士も馬を降りる。騎士の2人は馬を馬屋へ移動させるようだね。騎士3人と私たちはそのまま砦へ入る。
中に入るとエントランスホールの両脇にズラッとメイドさんが並んでいて、その奥に大きな絵画が。おわー、なんでなんで? どうしてどうして? 私の肖像画だ! 3メートルはある超でかい私の肖像画がドーンと飾られているんだけど!? 私の絵の流通は拒否ったハズなのに!
おのれ、おじリーダー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます