106. 逃亡
「妖精様は見つかりましたか?」
「――いえ、未だ見つかっておりません」
「あのクソよ……、んっん」
……妖精様が突然居られなくなることは、いつものこと。王国は妖精様のおかげで滅亡を免れたのだ。妖精様は気紛れに行動しておられるように見えて、先々まで考えた行動を取っておられる。決して短絡的思考で居なくなられたのではない筈。落ち着こう。
ふぅ……。
侍女達に探させても見つからないということは、やはり城外に出られたのだろうか。
「ティレス、謁見の
「承知しました」
この王城で最も妖精様の動向を把握されているお母様の判断だ。崇高な妖精様は物欲などにはとらわれないということなのだろう。下手に爵位などを受けて王国に繋がれる可能性を排除したかったのかもしれない。
「しかし、今夜のパーティーまで欠席されるのは困りますね。街まで捜索範囲を広げて、できればパーティー開始前にお連れしなさい」
「承知いたしました」
指示を受けた侍女が下がる。これから妖精様捜索隊を編成するのだろう。しかし、あの自由奔放にしか見えない妖精様をみつけるとなると骨が折れる。第2騎士団は謁見があるため使えない。街の衛兵を総動員するか、王城の下男下女を使うしかない。
「あなたも今夜のパーティーから大忙しですよ。これまで妖精様に関われなかった貴族共がなんとか取り入ろうと集まってくるでしょう」
「そうですね。全てを遠ざけておけば問題ないかと思いますが……」
今までも貴族との繋がりは特に持たずにやってきたのだ。今更すり寄ってくるのであれば、妖精様と関係を持ちたいという下心以外ないだろう。そのような貴族と関係を持つ必要性は感じられない。
「いいえ。全てを排除すれば貴族共の不満がどこかで噴出するでしょう。王家と貴族の軋轢が広がれば帝国に付け込まれます。適度に妖精様と関係を持たせるのですよ。――まずは関わらせても
「はい」
また難しい要求をされる。これまで人付き合いなど最低限しかしてこなかったというのに。いや、今後王国を守っていくにはそういったことも疎かにしてはいけないのだろう。頑張るしかない。
「後日、あなた主催でお茶会も開くのですよ。いいかげんあなたも同年齢の友好関係を築くべきです。将来王族籍を抜けて嫁ぐ際の味方作りもしておきなさいな」
「……承知しました」
まわりからの私の最近の評価は、血気盛ん、好戦的、武力解決を優先させがち、などだ。自覚はないが、ここまで言われ続けるとなると何かしら思うところがある。
お茶会など開いて同年代の令嬢と話が合うだろうか。本番前に同年代の女子と会話の練習などしておきたいが、そのような都合の良い者など……。
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