103. 状況確認
「ええ!? じゃぁ、どうやって殺されたかも分からないんですか?」
「いや、どうやって殺されたかは分かってるぞ。2人とも背中から心臓を一突きだ。傷の大きさや深さからみて、おそらく短剣で突かれたらしい。分からんのはどうやって侵入されたか、なんだが……」
帝国に内通していたってことで捕まえてたザンテンさんとノスさんは、辺境都の牢内で殺されてしまったという衝撃報告がギルマスからされた!
新人なのに何故かサブマスにさせられて、ギルマスが帰ってきたと思ったら仲間だと思ってたザンテンさんとノスさんが捕まってて、その知らせと同時に死んだって知らせも受けて、怒涛の展開すぎて付いていけないよ!
「ザンテンが使ってた姿を消せる魔道具も奪われていた。口封じと魔道具の回収が目的だろうな」
「じゃぁじゃぁ、犯人は姿を消して侵入してきたんじゃないですか?」
姿を消せるなら気づかれずに侵入し放題だよね、普通に考えて。
「その可能性もあんだがなぁ、姿を消せるだけだと牢の中にまで入れねぇだろ? ザンテンたちは牢の奥ん方にいたところを後ろからグサーだ。どうにかして牢の中に入ったか、もしくは短剣だけ操ったか……」
「回収できるように投げナイフに紐を付けて投擲した可能性は?」
「すごい! さすがサブマス! きっとそうですよぉ!」
サブマスがほんのり得意気な表情になってる。自信ありげな名推理だね!
「いーや、死体はこちら向きに倒れていた。牢屋外から投擲したなら胸に刺さって向こう側に倒れてるハズだろ」
「そっかー」
サブマスは迷推理だったね。
「王女殿下が居られる前で今更なんですけど、なんでザンテンさん達を捕まえたんです? 冒険者ギルドとしては王国の冒険者が帝国に内通していたとしても不干渉ですよね?」
「アホか。人為的にスタンピードを起こしたとなっちゃ、帝国なんざ関係なしに冒険者ギルド的には黒だ。そうじゃなくても王城の侍女、つまり一般人を冒険者が襲ったんだ。捕まえんのは当たり前だ」
「ふむー」
色々起こり過ぎてて、なんだかこんがらがってきたよ。スタンピードとか城攻めとか派手な情報に紛れて、消える魔道具とかヤバそうな情報もさらっと出てくるし。普段なら消える魔道具が見つかっただけで大騒ぎのハズだよね。今後、防犯対策とかどうするんだろ……。
「で、捕らえた冒険者が口封じされる前に何か情報は聞き出せたのですか?」
ムスっとした表情の王女殿下がギルマスに質問した。パレードのときに振りまいてた笑顔がウソのようだよ。これが王族。こんなに幼いのにすでに大人の駆け引きとかお手の物なんだろうなぁ。こわぁ……。
ちなみに王女殿下がパレードに参加していたのは、「王族の1人である王女殿下が妖精様をお連れした」ということをアピールして、民衆の王族支持力を上げたい目論見があるらしい。最近不作とか何だとかで王族の支持力落ちてたもんねぇ。
「いえ、辺境都に着いた初日の夜にヤられましたので、ほとんど何も聞き出せずじまいでして……」
普段誰にでもガーガー勢いでしゃべるギルマスも、王族にはたじたじだねぇ。今回ギルマス良いとこなしだし、報告しづらいだろうなぁ。
「そうですか……。捕縛した情報が初日に漏れるというのは早すぎるように思います。監視されていた形跡は?」
「いえ、そのような形跡は見受けられませんでしたが……。しかし、状況から見て監視されていたのでしょうな」
「ふむ……」
「ところで、敵対者が分かるというその地図、状況はどうですか?」
王女殿下が考えこまれたところで、サブマスがすかさず話題を変えてきた。サブマスって強引に話題変えるの上手いよねぇ。これが次期ギルマスの器ってことかなぁ。
「2人ほど
「それはどういうことですか?」
魔術師団長様の発言にサブマスが確認する。
「どうも、赤い点は敵対者というよりも妖精様に悪感情を持っているかどうかを示しておるようですじゃ。しかも恒久的なものではなく、たまたまそのとき妖精様にイラッとしていた、といった一時的な感情も含まれておるようでしてのぅ」
「では、当初先発隊が予想したほど便利な機能ではないと?」
「うむ」
なるほどー。地図の
「それでも妖精様が王国に友好的であるうちは、妖精様の敵対者は王国の敵対者でもある可能性が高いと判断できます。慎重に進めるべきですが、赤く表示された者の身辺調査は行うべきでしょう」
「承知いたしました」
王女殿下の指示にサブマスが答える。
もうすぐ王城だし、この場の話し合いはひとまず終わったのかなぁ。ダスターさんが妖精様にお礼を言いだした。そう言えば、ダスターさん居たんだったね……。
あー、やだなぁ。この後の謁見も、その後のパーティーも気乗りしないんだけど、そんなことが些細に思えるほど重大事項が残ってるよぉ。
……ギルマスにギルマス辞めさせられるよって、まだ伝えてないんだよねぇ!
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