096. ふにゃ剣
お昼前に解放された私は、まずお城の地下を確認しに行くことにした。
地下に悪意みたいなのをわんさか感じるのだ。南に行く前は絶対こんなのいなかったはずだ。
お? 牢屋だ。鉄格子の向こうに大量に捕まってる。ちょっと留守にしている間に大規模窃盗団でも捕まえたんだろうか。でも格好が兵士っぽい。お城でお城の兵士が捕まえられた? 違うね、よく見るとこのお城の兵士とは装備が違うっぽい。
どこかで紛争でもあったんかな? それにしては捕まってる兵士に怪我とかなさそうなんだけど。
そんなことを思って眺めていたら、捕まってる兵士に見つかってしまった。大きな叫び声を上げられた後、他の捕まってる兵士たちも私に気づいて怯えたり怒鳴ったりの阿鼻叫喚。うわー、なんだこの地獄絵図……。
私が左に行くと吠えてる兵士も左へ、怯えた兵士は右へ。私が右に行くと吠えてる兵士も右へ、怯えた兵士は左へ。なんだか楽しくなってきちゃったぞ。右へ、と見せかけて左! と思ったけどやっぱり右! って思った? 残念、左!
ヒートアップした吠え士が鉄格子を掴んでガシガシやりだしたところで、牢屋の見張りの兵士に呆れた顔で止められた。この兵士はこのお城の兵士だね。見張り業務の邪魔っぽいからそろそろお暇しようかな。
地下から上に戻る際に宝物庫を見かけたので、久しぶりに中を覗いてみる気になった。なんか新しいお宝は増えてるかなー? って、うわー! 私人形だ!
ボロボロになって部屋からいなくなったと思ってたら、宝物庫に入れられてたのか! なんか小さな剣と槍を構えてかっこいいポーズ決めてんね。なんでこんなボロボロの人形をお宝扱いしてるんよ……。
あ、もしかして? 私が勝手に宝物庫と思ってたこの部屋って、実はただの倉庫だったりする? そっかー、宝物庫にしてはお宝が少ないと思ってたんだよね。
よく見ると私が作った力作の剣もなくなってる。めっちゃ力作だったし、倉庫の肥やしにしておくのはもったいないとか思われて何処かに持ってかれたのかな? それこそ今頃は本物の宝物庫に入れられてるかもしれない。
その後街に来てみた。もしかすると今日はお祭りなのかもしれない。南に行く前の普通の日に比べて、明らかにみんなお祭り騒ぎをしている。そこかしこから楽器の音が聞こえてくるし、歌ってる人も多い。昼間っからお酒飲んでる人もいるし、絶対今日はお祭りだ。屋台だっていつもより多い気がする。
私が近づくと街の人のお祭り騒ぎは一層騒がしくなった。近くにいたメッチャご機嫌なおっちゃんからお肉の欠片をもらった。それを皮切りに色々もらう。うひょー、もう持ちきれないよ! 私の周りは魔法で浮かせたもらいものの食べ物でいっぱいだ。
よーし、私もお祭り感アップに一役買っちゃおっかな! 私は魔法で光を振りまいた。それを見た街の人たちはさらにヒートアップ、私を拝む人まで出てくる始末だ。ほらー、光だよー、崇めよー! 我を崇めよー! ふはははははは!
もらった食べ物を食べながら街を見て回る。初めて来たときは咲いてなかった各所の植木鉢も花であふれている。街の中央広場には工事でもするのか測量みたいなことをしている人がいるね。お祭り用に何か設置するのかもしれない。ということはお祭り本番は今日じゃないのかな?
たまに一緒に遊ぶガキンチョ共もはしゃぎまわっていた。チャンバラごっこで大暴れしているっぽい。危ないなー。
以前はカエルのオモチャを飛ばしたりともっと大人しい遊びをしていたはずなのに、つい最近英雄でも見たかのようにチャンバラごっこに夢中になっている。木の棒でチャンチャンバラバラ暴れている姿を眺めていると、いつ怪我するかと思ってヒヤヒヤだ。
しょうがないなー、今日はお祭りだしね。私から安全な剣をプレゼントしようじゃないか。
チャンバラごっこで怪我しないように、刀身が何かにあたるとグニャっとなる柔らか剣を作る。でも見た目は一見固そうな金属製に見えるようにした。子どもは見た目のかっこよさを重要視するもんね。
デザインは前に作った宝物庫の剣と同じで良いかと思ったけど、よく考えるとお城のお宝と同じ見た目は問題があるかもしれない。だから違うデザインにした。私からのプレゼントだと一目で分かるように、柄のデザインは妖精の羽をモチーフにした。
ガキンチョの親がこの剣を見ればすぐに私が関わってると分かるだろう。そして私にお礼しにくるのだ。甘いモノで良いよ?
ふにゃ剣は5本、前と同じで赤、青、緑、黄、茶の色を付けた。鞘から抜くと刀身が各色で淡く光るのだ。かっこいい。振るとブォンと音がなるようにしよう。まぁ待て待て、ガキンチョ。もう少しでできるから。よいしょっと。ほら、贈呈! ぱっぱら~♪
こらこらケンカしない! みんなで仲良く使いまわせ!
そのままガキンチョと遊んでいたら夜になって、その後大人たちからどんちゃん騒ぎに誘われて、そうして気付けばすでに深夜だった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます