076. 敵襲
よし、今日も頑張りますよ!
我が家はしがない男爵家ですが、それでも以前はそこそこの領地経営ができていたそうです。しかし戦役や数年におよぶ不作により経営が悪化、私は9歳でお城に奉公することになりました。我が領地の経営には、私の給金をアテにしているところもあるほどです。
私は第一王女殿下のお生まれになった前後の貴族ベビーラッシュ組です。しかし男爵では位が低く、王女殿下のお友達候補になることはかないませんでした。そうでなくとも隣国との開戦により王女殿下主催のお茶会などほとんど開かれておらず、高位貴族のご令嬢であっても王女殿下との繋がりはそれほど持てることができていないそうですが。
しかし、お家のために見習い侍女として頑張っていた私は、最近大きなチャンスをつかむことができたのです。そう、妖精様のお傍付き補佐! これにより私は、年齢のわりには高給取になることができました!
私の
今は妖精様と専属侍女のシルエラさんは長期不在でして、私が留守を預かっている状況です。いつ妖精様が帰ってこられても問題ないように、私は毎日妖精様のお部屋を管理・維持させて頂いているのです。もちろん本日も、早朝から妖精様のお部屋を確認しに参りました。
ガチャ
ドゴォォォォォォォォォォンッッ!!!!
ピカピカピカピカピカピカピカピカ!!
「ひゃぁああああっ!?」
なになになになに? 私が妖精様のお部屋のドアを開け1歩中に入ると、部屋の中が大爆発! 何かが飛んできて私に当たり、私は無様にも廊下に転がる羽目になりました。掃除道具が廊下に散らばります。
「なんだ!? どうしたッ!?」
「何があったのです!?」
「おい! 大丈夫かッ?」
「うう……、お部屋が……、妖精様のお部屋の中が爆発しましたぁ!」
「これは……、魔力! 魔術攻撃だ! 敵襲ッ!! 敵襲だッ!!」
「なんですって!?」
集まってきた衛兵さんの1人が敵襲と叫び始めました。敬愛する私の
「何してる、部屋に入るなッ! 危険だ!」
「で、でも!」
「どうしたのです! 何事ですか!?」
「王妃様!」
部屋の前で数人が騒いでいると、なんと王妃様がやって来ました。以前は雲の上の存在でしたが、最近は王妃様が妖精様の部屋を頻繁に訪れておられたため、少しばかりの交流があります。
王妃様の質問に、駆けつけてくれていた衛兵さんが状況説明を始めてくれました。
「はッ、敵襲でございます! 妖精様の室内にて爆発、魔力の残滓あり、外からの魔術攻撃と思われます!」
「そうですか、今すぐ城内の者を第一ホールに集めなさい。外せない任務を遂行中の者以外全て、非番の者もです。戦えない者はホール奥に、戦える者はホールを封鎖。防衛しますよ!」
「はッ!」
た、大変なことになってきました! その後城内が慌ただしくなり、多くの人がお城で最も大きいホールに詰め込まれていきます。私もその1人です。城内に私室を持っている高位貴族の
「なんだね! 敵襲? 本当なのかね?」
何も知らずに集められた人たちから敵襲を疑う声があがり始めますが、そのような疑問も次の瞬間には収まり、今度は動揺が広がり始めました。爆発音が断続的に鳴り始めたのです。
ドーン!
ドーン!
「すでに侵入されているのか!」
ドォォオンッ!
ドゴォォォォンッ!!
「ち、近付いてきてないか?」
ああ、お城の中で敵襲など初めてのことです。聞いたこともありませんから、王国史上初めてのことかもしれません。ど、どうなってしまうのでしょう……。
ホールの前の方に、王妃様や王太子殿下など主要な人たちが話し合っているのが見えます。私は王妃様と少しばかり交流があることを言い訳に、その会話が聞こえる範囲まで近づいてみました。
「国王陛下をお連れすることはできませんでした。どうやら近衛がすでに戦闘中。敵の侵入経路は少なくとも2箇所はある模様ですが……」
「どうした、ハッキリ簡潔に報告しろ」
衛兵さんの報告に王太子殿下が聞き返しました。
「はッ、敵が我々ではない何かと交戦中です。先ほどから聞こえる爆発音、あれは何かが帝国兵と交戦している音のようです」
「我々ではない何か? どういうことです?」
王妃様が当然の疑問を投げかけます。
「その……、目撃した者によると……、ボロボロの人形だったと……」
「人形? それはもしかして、妖精様ではないのですか!?」
「いえ……。その、もっとこう、無機質と言いますか。腕も足も顔も動かさず、直立のまま空中をススーと平行移動しているそうです。そして顔も動いていないのに、視線だけは絶えずこちらを見ていたと……。その無機質な人形が、帝国兵に突っ込んでは爆発、突っ込んでは爆発、を繰り返しているそうでして……」
「……どういうことです?」
王妃様、私も思いました。どういうことです?
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