065. ご近所ペットトラブル
筋肉オバケが手招きしている。行くべきか、行かざるべきか……。
意図してなかったとはいえ、何かに頷いてしまった私は行くべきなんだろう。でも筋肉オバケはなー、ちょっと怖いよね。しかもちょっと脂ぎってて表面しっとりだし……。
かと言って、悪意みたいなのを感じるナヨ冒険者や路地裏マンは論外だ。小太りさんと受付姉さん、そしてお酒マンはもういない。どこかへ行ってしまった。残った3人が私をどこかへ連れて行きたい素振りを見せるのだけど、この組み合わせは正直勘弁してほしいよね。
そこで私は良い人選を思いついた。ティーカップを片付けていた受付
受付
受付
ほら、早く早く! 筋肉オバケも他の冒険者も行ってしまうよ。私は指さす動きを速めて急ぐように伝えた。驚愕
うわー。良かった、驚愕
筋肉オバケの横にせせこましく座っている戸惑
ところで何処に向かっているんだろう? この先は貴族街なんだけど……、もしかしてお城か? お城に行っちゃうのか? 「お宅のペットがウチの大事な会議に割り込んで邪魔してきたんやが、どう落とし前付けてくれんねんワレほんまいてこますぞ」案件だったりする?
ご近所ペットトラブルの当事者になるなんて思わなかった。しかもペット側の当事者になるなんて、なかなかない体験だ。これはマズいかもしれない。私のせいでお城と冒険者のガチンコバトルが発生してしまうのかも!
やめて、私のために争わないで! いやいや、現実逃避してふざけるのは止めよう。王家のペットという強権に守られ、なおかつ子どもを助けた街の人気者というステータスに甘えて、好き勝手し過ぎたのかもしれない。
子どもを助けたのなんてもう何日も前だ。過去の栄光をいつまでも振りかざして大きな顔をし続けていたせいで嫌われ者になってしまったのかもしれない。ヤバい、震えてきた。
そうこうしていると、馬車はホントにお城に到着してしまった。門番の人が慌てて対応している。なんだかんだあって出て来たメイドさんが、私達を大きめの部屋に案内した。ここは応接室かな? それとも待合室? メイドさんが筋肉オバケたちに紅茶を出してチラりと私をみる。ふむ?
しばらくしたら鳥籠メイドさんが来た! やった、これで勝てる! 私は鳥籠メイドさんの頭に移動した。助けて鳥籠メイドさん! すると戸惑
お城側のお偉いさんっぽい人たちもやって来た。銀髪ちゃんも来てるね。お城のお偉いさん2人と銀髪ちゃんが座り、その後ろに兵士やメイドさんがズラリと並んだ。徹底抗戦の構えだ! 対する冒険者ギルドは筋肉オバケと冒険者2人が座り、その後ろに戸惑
ごくり……、いよいよお城vs冒険者のガチンコバトルが……。怒号が飛び交うのかと戦々恐々としていたけど、意外にも話合いは冷静だった。良かった、穏便に示談に持ち込めそうかな?
路地裏マンが地図を広げようとする。いやいや、地図くらい私が出しますとも! へへへ、旦那、これでいっちょ許してくれやしませんかね? 私はお城周辺のマップを表示した。ほらほら、そんな紙の地図よりこっちは立体ですぜ、旦那!
部屋の中にいた全員が驚きの声を上げた。そうでしょうそうでしょう、すごいでしょう。ふふふ、なんてったってこの地図、リアルタイム更新だからね。街の横を流れる河の上には、行き交う船が動いているのも見て取れる。なんだか謎の優越感を感じてきた。
ナヨ冒険者がマップの南側端のさらに南を指して、手を動かしつつこちらを見てくる。む、もっと南が見たいって? 私はマップ表示をできる限りの広域に切り替えた。
あー、この話し合いってあれか! 冒険者ギルドの会議の続きか! 冒険者ギルドでは地図の南を見て何やら話し込んでいた。あのときは南の山の近くを指してたハズ。でも残念、南方向には河上の1つ先の街までしか表示できない。そこまでしか行ったことがないからね。
みんなあからさまに残念がってる。うーん、お役に立てなかったか……。でも良いや。この集まりがご近所ペットトラブルガチンコバトルじゃなかったのなら、私は何も悪くないハズ。
良かった良かった。
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