032. 果実

 謁見は割とすぐに終わった。作法とか全くわからないまま放り出されたときはどうしようかと思ったけど、意外と何事もなく無事に終わって良かったよ。


 王様は金髪ヒゲおじさんだった。まさにトランプのキングみたいな王様だ。綺麗なストレートの金髪だけど、おでこが広い。まさにロイヤルなストレートのフラッシュだったよ。


 フラッシュ様の横にはドアップ様も座っていて、金髪兄さんも横に立っていた。他にもなんだかいっぱいいたけど、よく分からなかった。そしてよく分からないまま終わった。




 謁見後はすぐにドレスを脱がされ化粧も落とされて解放された。ドレスを着せ替えさせられていたときは分からなかったけど、ドレスを着て実際動いてみると、なかなかに難儀だった。糸が人間サイズなので、結び目とかがゴリゴリ体にあたるんだよ。さらに縫い代が広いのでサワサワと肌に当たり、くすぐったいったらありゃしない。


 私は脱がされたドレスのゴリゴリポイントやサワサワポイントを指さし、改善を要求した。鳥籠メイドさんが頷いてくれていたので、多分伝わったんだろう。もう着る機会ないかもしれないけどね。



 鳥籠メイドさんにいつもの部屋に戻された後、鳥籠は開放されたままにされた。ようやく自由時間かな、もう昼近いけど今からでも街に行こうかな。前に冒険者ギルドに行ったとき、よく見れなかったからもう1度行ってみようっと。


 もうすぐお昼時なので、うまくいけば食事中の冒険者もいるかもしれない。またお肉が食べたい。物々交換でなんとかならないだろうか。そう言えば前に植えた果物がそろそろなっているかもしれない。ちょっと寄って行こう。




 果樹を植えたところに行ってみると、ちょっとでかい草程度だった果樹がもう立派な木に育っていた。周りにも見覚えのない少し青みがかった白い花が生えていて、なんか光っている。これ絶対普通の花じゃないでしょ。んで青い水晶みたいなのも生えてきていた。なんか神聖なオーラを感じる。ぼく神聖ですってアピールされてるよ。


 もしかして、この花とか結晶は私の影響なのだろうか。お城の周りの他の場所にはこんなのなかったし、この場所だけあるってことは少なからず影響してそうだ。まぁ、バレなきゃ怒られないでしょ。仮にバレたとしても、綺麗だねって喜んでくれる筈だ、きっと。それは置いておいて、問題の果物は……。


 私の1クチサイズの小さい実がいっぱいなっている。これは人間にはちょっと小さすぎるね。人間だと豆粒よりも小さい、うっかり落としたら見つからないほど小さい。


 1粒食べてみる。お、美味しい。リンゴとブドウの間みたいな味だ。皮ごと食べられて種もない。これでタルトとか作ったら絶対美味しいでしょ。お城の厨房に置いておいてみようかな、もしかしたら何か作ってくれるかもしれないし。


 あ、人間サイズあった! 1つしかないけど、1つだけでかい。人間サイズでリンゴくらいある。よし、これを持って冒険者ギルドに行ってみよう。



 その前に、小さい方を厨房へ置いて来よう。私は自分の身長くらいの瓶を作って浮かし、その瓶に小さい方の実を集めていく。


 えーと、厨房は確か1階の東寄りにあったような……。船着き場のある東側にあった方が便利なのかなぁ。外から透視して、人目がない場所を見計らい厨房に侵入。


 一瞬、お肉を食べるなら冒険者ギルドまで行かなくてもここで良いのでは、と思ったけど、すでに料理は食卓に運ばれたのか調理済みの料理は置いていなかった。


 壁にはフライパンなどがいっぱい掛けられている。これは銅製かな? その横の壁際には大きな竃が3つ、窓際には色々なモノが入った瓶類、テーブルにはさっきまで調理していたのだろう食材や調理器具が色々と置かれていて、天井からもなにやら吊るされている。私は持ってきた果実詰めの瓶を、窓際の瓶類に紛れ込ませて離脱した。



 そして、もう1度果樹に戻って人間サイズの果物をゲット。


 よし、冒険者ギルドに行こう。


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