024. 妖精調査

「それじゃ、いっちょ追いかけてみますかぁ」

妖精の調査依頼を受けた俺は、とりあえず妖精の足取りを追ってみることにした。



 妖精が出て行った方向で聞き込みでもしようかと思っていたけど、聞き込みいらなそうだねぇ。街の人らがてんやわんや騒いでる。そっちで間違いないでしょ。これで違ってたらお笑いだけどねぇ。



「は~い、ちょっとごめんよ。ちょっと通してね~」


 人垣をぬって騒ぎの中心を見ると、あの妖精が複数の屋台を飛び回っていた。お~、やりたい放題だね。いっそ清々しいよ。


 ようやく追いついたと思ったんだけど、また飛んでいっちゃったかぁ。こりゃぁ、後を付けるだけで相当しんどいでしょ。ちょっと安請け合いしちゃったかなぁ。


 ふむ、やっぱり壁をすり抜けてるね。飛ぶ速さは馬より速いか? 虫みたいな羽だけど飛び方は鳥に近いかな。今はあっちに行ったりそっちに行ったりしてるから追いつけるけど、あれじゃぁ、追いかけっこになったらまともに追いつけないなぁ。他の能力も知りたいね、ギルドだとさりげなく冒険者の治癒もしてたけど、戦闘とかはどうなんだい。


 そういや、ギルドで肉を食べてたとき、それまで絶対に所持していなかったナイフとフォークを出してたねぇ。放置されてたから とりあえず回収しておいたけど、これはどういう手品だったのかな……?


 おやおや、今度はカフェかい? 食い意地張ってんねぇ。まるで王都に初めて来た観光客じゃないか。おぅおぅ、そりゃ危ないよ。店員さんがキミにびっくりして転びかけてるじゃないか。しかたないなぁ。


「っと、大丈夫でした?」


「あ、ありがとうございます……」


「いえいえ、それじゃぁ俺はこれで」


 ちょっと目を離すともういなくなってる、速いねぇ。でも見失う心配はないと、光が尾を引いてるよ。次は土産物屋かい? ホントに観光客だねぇ。え? ホントに観光しに来てるの? 妖精が?





 中央広場の冒険者ギルドから、行く先々で散々騒ぎを起こしながら南通りを南下してきたけど、ようやく方向を変えたみたいだね。あーっと、ちょっと高くない? これは付いて行けないなぁ。でも行けるところまで行くしかないよねぇ。



 はぁはぁ、ふぅ…。こんなオッサンに人通りの多い上り坂を全力ダッシュさせないでよまったく。で、なるほど、貴族街の向こうね……。貴族かお城、もしくはお城周辺の森から来たってことかな? そういや、あれほど街で騒いでた割には、衛兵は静かなもんだったね。これは上位貴族か王家絡みかなぁ、やだなぁ。



 ま、それでも調べなきゃね。ギルドの依頼っていうよりは、この前お仲間の間諜がほとんど捕まっちゃったし、母国のためにもうちょっと頑張ってみますか。


 スタンピードの準備もあるんだけどねぇ……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る