018. 宝物庫
色々探して私は宝物庫を見つけた。それはお城の地下にあった。お城の地下構造は何層もあり、宝物庫はその中ほどにあった。ちなみに最下層は地下水路に繋がっている。
ひんやりした廊下の先でイカツイ門の前に兵士が2人見張りをしていた。ずっと立ってるのかな、こんなところ誰も来ないだろうに。
私は見つからないように壁抜けで進む。壁抜け状態で廊下の壁の中を進むのだ。この世界の人間は、どうも小さいモノを認識する力が高いらしい。薄暗い夜の廊下でも森の木々の中でも、こんなに小さな私を見つけてくる。だけど壁の中を進めばさすがに見つからないでしょ。
中に入ると真っ暗だった。私は魔法で光の玉を浮かべ、辺りを照らした。
静かだね。静かすぎて耳鳴りがしてきた。入り口付近に本がある。これは目録かな? 私はページをめくり中身を確認してみた。なるほどわからん。
壁際には棚があり、宝石や装飾品がいくつか置かれている。なんかこう、宝箱が置いてあって開けるとお宝ザックザクというイメージだったけど、そんな雰囲気じゃないね。どちらかというと博物館みたいだ。展示されている感じで保管されている。つまりこの宝物庫は、ただ保管目的で置かれているのではなくて、外部の人間を招いて楽しませる目的がある? 私は重厚な宝箱も見てみたかったけど、無いならしょうがない。
宝石の置かれている棚を見て回る。さすがお城、でかい宝石だねー。こういう高級品の展示を見るときってついつい、今 服がひっかかったりして棚が倒れたらすごい賠償金で人生詰んじゃうな、とか思ってしまう。気を付けて見てまわろう、壊さないように。私は念のため、壁抜けモードで宝物庫を見て回った。これなら棚に当たって倒しちゃったりはしない。
部屋の中央には台座があり王冠が置かれている。王冠て王様がかぶってるんじゃないの? ここにあって良いのか。予備かな?
しかし、部屋はそこそこの広さはあるものの、全体的にガランとしていて正直に言えば期待外れだ。
例えばほら、この剣が立てかけられているラックなんて、本来剣が5本収まるスペースがあるのに実際には1本しか剣が収まってない。
柄が長めの両刃の剣で、片手でも両手でも使えるようにしてあるのか、刃はそこまで広くない。金色の鍔には赤い宝石があしらわれていて立派な剣だ。刃は鞘には刺さっておらず、鞘は剣の横に並べられている。装飾がすごいから儀礼剣なのかな?
この1本の剣はとても素晴らしいものなのに、それでもまわりの状況が台無しにしている。私は不揃いのモノがあまり好きじゃない。やっぱりバシっと揃ってこそ見栄えがするというものだ。前世の私はコレクターだった?
よし、ここは私が補充しておいてあげよう。
んーと、やっぱお揃い感が出た方が良いよね。形は同じにしつつも、全く同じのを作るのも味気ない。鍔の宝石の色を変えておこう。赤はすでにあるから、青、緑、黄、茶だ。
私は魔力をどんどん集めてぐりぐり固めてベースとなる無色透明な宝石を作り出す。そして色を付けるために水属性を付与……、よし、青い宝石ができた。同じように緑、黄、茶の宝石を作った。
剣はっと、どうせならファンタジーなのが良いね、ここで鉄製とかじゃもったいない。
……よしっと。
私は作った剣を、元からあった剣の横に並べた。うんうん、やっぱり揃っていてこそ見栄えするよね。でも今度は、元からあった剣と私が追加した剣の魔力的な違いが目立ってアンバランスな感じになってしまった。えーい、元の剣は赤いから火属性だ、付与付与っと……。ふむ、良いね!
他に見るものもないしそろそろ戻ろうか。うーん、まだ午前中だよね……。外はびしょびしょだったけど、街に行ってみるかなー。
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