011. 地下水路
朝起きるとまだ雨が降っていた。うーん、がっつり降ってるなー。
昨夜 採寸された後、銀髪ちゃんが部屋を出て行くのに合わせて全員居なくなったけど、鳥籠メイドさんだけは残った。鳥籠メイドさんは私のお世話係なのかな、しばらく私の世話をしようとしてくれていた。ティーカップを片づけるときに、私が作った謎ティーカップも持って行ったんだけど、今後はアレで紅茶を出してくれるのかな。どっちにしても飲めないけど。
雨が降っていてイマイチ時間感覚がわからないけど、たぶん朝の早い時間帯だと思う。この部屋には廊下に出るドアとは別に隣室に繋がるドアがあって、そちらはどうやら控室になっているみたいだ。鳥籠メイドさんは昨夜隣室に引っ込んだまま今もここにはいない。
私が入っている鳥籠の扉は開いたままだ。扉が閉まっていても透過すれば出れるんだけど、閉められていれば出るなということだと思う。つまり、扉が開いているということは自由に行動して良いってことだろう。犬というよりは猫的扱いなのかもしれない。自由に行動して良いってことは、観光に出掛けても良いってことだ。雨は降っているものの、とりあえず私はお城の外に出た。
さてどうするか、お城の周りをみてみると、お城の要所要所に装飾されているドラゴンのクチから雨水が排水されていた。マーライオンみたい。これ雨どいだったのか。
興味本位で排水を追っていく。屋根沿いには排水溝があり、その端に付けられているドラゴンのレリーフのクチから雨水は段々と下へくだって行って、最後には地面に落ちている。まるででかい打たせ湯のようにジョボボボと水が垂れ流されていた。
地面には水が落ちてくることを想定して草地の中にそこだけ大きな石が敷かれてあった。その石は水に打たれて凹んでいる。長年水に浸食されたからだろう。このお城はある程度以上古いのだ。石の侵食具合でお城の歴史を垣間見れた。
排水をたどって行くと馬車が通れそうな石畳の道の側溝につながっていた。石畳の道は中央が膨らんでおり両端には溝が掘られ、排水を意識した造りになっていた。
さらにたどって行く。
お城は丘の最も高い位置に建っているため、排水をたどるとどんどんお城から離れて行った。色々なところから流れてきた排水が集まり、やがて小川のようになって、その小川は地下につながっていた。
小川は雨水だけではなく汚水も流れ込んでいるようだ。すごく汚そうでめちゃくちゃ臭い。魔物や野盗から感じた悪意のようなものを薄っすらと感じる。こんな汚いと病気が流行っちゃうんじゃないかな。私は汚水を綺麗にしていった。
汚水を浄化しながら地下水路を進む。地下水路の片側には人が通れる道があるため、人がメンテナンスに来ているのかもしれない。今は浄化しながら進んでいるからマシになってるけど、この汚さの中で働くなんて中々きつそうだね。
地下水路は曲がりくねっていて、いくつかの支道が合流していき、次第に太くなっていく。この世界の文化レベルは思ったよりすごい。魔法があるからかなぁ。
進んで行くと鉄格子があり侵入者を阻んでいた。本来はカギがなければ進めないようになっていたのだろう。しかし通路に設置されている格子扉は何かで切断されていて、人が通り抜けられるようになっていた。切断面が新しいね、こんなところに誰か来てるんだろうか。柵を切断して侵入するなんて、どう考えても正規の手順じゃない。浮浪者が住処にしてたりするんだろうか。
構わず私はさらに進む。なんだか悪意の反応が強くなってきている気がする。そろーと近づくと、地下水路の水の中に大きな袋が括り付けられていた。人間の大人1人がやっと背負えるくらいの大きさだ。
地図で場所を確認すると街の中央付近みたいだね。なんだかよく分からないけど、よろしくないモノだということは分かる。もしかしたら何かの理由があって設置されてるのかもしれないけど、言葉の通じない私は誰かに許可を取るという手段を持っていないので、勝手に袋を浄化した。これは良いことをした、悪いことじゃない。怒られないでしょ。
んー、結構長いこと探検してしまったな。かなり入り組んだ迷路のような構造をしているけど迷子になる心配はない。地図を確認していると地下水路はお城にも繋がっていることに気付いた。探検気分だった私は、地下水路経由でお城に戻ることにした。
お城に向かう途中で通路の雰囲気がガラリと変わる。これまで通ってきた地下水路、ぶっちゃけ下水道だ。汚い。その下水道の片端の通路の壁が壊され、古いけどそれほど汚くはない地下道に繋がっていた。古い地下道はお城に繋がっているだけじゃなく、反対方向にも伸びている。
うーん? もともとあった下水道とお城の地下道を、後から無理やり繋げたのかな? 壁の破壊面はまだそんなに汚れてない。最近繋げられたんだね。よく分からないけど通れるなら良いや。私はそのままお城に向かった。
通路の終点に到着すると行き止まりだった。私は気にせず透過してお城に入る。これは隠し扉になってるのかな? お城の地下に出たので私は上を目指す。普通に道をたどると曲がりくねって面倒くさそうだったので、いくつか天井を透過して上を目指した。途中、いきなり床から出てきた私にびっくりした人に何人か会ったが気にしない。こちとら王家のペットやぞ、文句ないでしょ。
体は浄化したから汚れてはないんだけど、おそらく下水道と思われる地下水路にいたためなんとなく気持ち悪い。昨日の大捕物で飛び回ったお城の構造を思い出しながら、私はお風呂を探した。これほど排水設備が発達した文明レベルなのだ、お城ならお風呂くらいあるでしょ。
あちこち飛び回って私はようやくお風呂を見つけた。広い。円形の湯船は中央に小さめの噴水設備まであり、なかなか豪華な造りだった。蛇口とかそこかしこが金色になっている。蛇口がある? 下水道だけじゃなくて上水道まで完備してるの? すご。それともお城だけのマンパワー設備なのかな。
残念ながら、今は噴水設備からお湯が出ていないどころか、湯船にもお湯は張られていない。仕方なく私は魔法でお湯を出して湯船を満たす。脱いだ服はどうしようか、その辺に置いておけば良いか。ひゃっほー、お風呂だー! 私は飛び込んだ。
しまったな、つい並々とお湯を張ってしまった。人間サイズならちょうど良い深さだろうけど、妖精サイズだと足が付かない。私は泳いだ。泳いでいる内にふと気づく、羽だ。私は羽をバタ足のように動かしてみる。
ずばばばばばばば! あははははははは! クロールなんて目じゃないほどの速度で泳げる! 速い! 速いよ!
高速で泳いでいたことですごい水音がなっていたためだろうか、銀髪ちゃんとメイドさん達が血相を変えてやってきた。
びっくりした私は服を手に取り逃げだすのだった……。
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