第2話 運も実力のうち1
「ねぇ金城。あそこに行っても大丈夫だよね。」
「大丈夫と思う。涼音は先に行ってて。」
「でも⋯⋯」
「ちょっと周りを見るだけだから。すぐ終わるよ。」
「分かった。⋯⋯急いでよ?」
「分かってるって。」
涼音を見送った正志は『桐ヶ谷迅』の元へと近づいた。
「完全に脳を撃ち抜いてるな。あのモニターの裏に銃なんて見えなかったが。分からんな。」
まあいい。他の扉を探そう。
「何をしているのかな?」
壁を確認しに行こうとすると色白の男?に話しかけられた。
「君は?」
「佐野ひなの。よく男っぽいって言われるけどちゃんとした女さ。」
「そうなんだね。それで佐野さんはなんの用?」
「壁に他の扉がないか探してるんでしょ?」
この女。勘がいいな。
「まああれを見たら探すしかないだろう。」
「だよね。でも少なくとも今は壁に扉はないよ。」
「それはどういうこと?」
「あの扉というか壁はね。彼が打たれてから上に動き出したんだ。」
「上に?」
「そう。車の窓みたいな感じでね。だから探しても無駄さ。」
「そうなのか。ありがとう。」
「どういたしまして。それじゃあ異常者同士仲良くしようね。」
「⋯⋯そうだな。」
彼が殺されているところなんて目もくれずに当たりを見回していた。たまたまあそこを見ていた可能性もあるが間違いなく一番厄介な人は彼女だな。そう考えながら正志は扉へと向かった。
*****
「金城遅い!」
「ごめんって。他に扉が隠されてないか壁を見てたんだよ。」
「⋯そうなんだ。何かあった?」
「なにも。ところで今はどんな状況?」
「分かんないけどテーブルが3つ合ってインフルエンザ1つのテーブルに4人座るみたい。金城はそこね。」
「はいはい。それで何をするの?」
「いやわかんない。」
【どうも。さっきぶりですね。フクロウです。ではゲームを説明します。】
フクロウがそういうと机の上には複数枚のカードが裏の状態で現れた。
【今回するゲームは『真剣衰弱』です。ルールは簡単。同じ絵札を揃えればいいだけ。ただ一般のルールとしては1度カードを揃えた後、もう一度できますが今回はカードが揃ったとしても次の人がカードを捲ります。】
それだけ?何かあるんじゃ⋯。
【このゲームでの敗北条件はカードが一番少ない人。もしくは『罪』を暴かれた人です。ぜひ、頑張ってくださいね。それとパスを使うのは有りです。ただし連続では使えませんので注意してくださいね。】
「なんだか拍子抜けだね。」
「そうだな。でも気を抜くなよ?何をされるか分かったもんじゃない。それに⋯⋯⋯。」
俺は先程話した佐野ひなのを見る。寄りにもよって同じテーブルに座りやがって。
「それに?」
「いや、なんでもないよ。ともかく最下位にはならないように気をつけよう。」
「そうだね。」
「じゃあいきなりだけど僕から始めていい?」
佐野ひなのはそう言うとカードを捲る仕草をし出した。
「どうぞ。順番は時計回りでいいか?」
「うん。」
「どうぞ。ああ、神様。どうか私をお助け下さい。」
なんか大丈夫かってやつがいるな。目の焦点があってないような。
「はい!あ〜違うか〜。残念。次、どうぞ。」
「ああ、お願いしますお願いします。」
そういうと彼女は10のカードを揃えることができた。
「やった。神様、ありがとうございます。ありがとうございます。ありが⋯⋯」
【悪夢レベル10】
「ああああああああああああああああああ!」
「な、なんだ!?」
「うわぁ〜。そういうのか。嫌だな。」
「だ、大丈夫!?何が起こってるの!?」
突然彼女は発狂したかと思うと今度は「ごめんなさい、ごめんなさい、」と呟き続けるようになった。
「10であれか〜。上3つはどうなるんだろうね。」
「何が起こったか分かるのか!?」
「まあね。というかカードを揃えた以外にないでしょ。カードの数字の分強い何かを見るみたいだね。」
「な、なんで笑ってるのよ!」
「す、涼音?」
「なんで笑ってるって⋯⋯ああ、笑ってたのか。仕方ないよ。面白いんだから。」
「そんなの狂ってるよ!」
「知ってるさ。でも君もだろ?」
「⋯⋯⋯。」
「はは、言い返せないか。まあ次は君の番だよ。それともパスする?」
「引くよ。⋯⋯4か。」
彼女が最初に引いた数字は4とK。どっちかはわかってる。だが手が動かない。
「あれれ?4はさっき出たよ?これこれ。それとも怖いのかな?」
「別に。4くらい大丈夫さ。」
そういい俺は4を引く。その瞬間⋯⋯
【悪夢レベル4】
「ぐあっ!」
「金城!」
「大丈夫だ!」
このくらい。あの時に比べれば大したことない。
「じゃ、じゃあ引くね。」
涼音はそういうとカードを引いた。幸いと言うべきかカードが揃うことは無かった。
「ほっとしてていいのかな?君は今Kを引いたんだよ?」
「まさかお前!シャレにならんぞ!」
「Kがどれほどのものか。その身で感じようじゃないか!」
【悪夢レベル13】
彼女がKを揃えたあといきなり椅子から転げ落ちたかと言うと痙攣しだし、その後恐ろしい程に笑いだした。
「あははははははははは!なるほど!そういうことか!僕たちにピッタリのルールだ!」
「おまえ、大丈夫なのか?」
「大丈夫さ。この程度。あの時と同じ痛みだね。っふふ。」
「気味悪いな。」
もう引いて何が起こるかはだいたい分かった。自分が味わった最大の苦痛をKとしてレベルが下がっていくんだろう。
「さあ、次は君だよ?」
「うう。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「おーい。聞こえてる?」
「ひぃ!ぱ、パスで!」
「そっか。まあそうだよね。まだ頭痛いもんね。」
「次は俺か。⋯⋯⋯まあ揃わないな。」
2回連続で揃うなんてそうそう無いだろう。だがそうなると涼音が揃う確率は上がってしまう。
「大丈夫だよ。私、強いから!」
そういうと涼音はJのカードを揃えた。
「うぐっ!」
「涼音!」
「大丈夫!大丈夫だから!」
「そ、そうか。でもあんまりきついなら次はパスしてもいいからな。」
Jをそうでも無い?無理をしてるに違いないだろう。
「う、うん。ありがとう。」
「優しいね。じゃ、私はパース。次どうぞ。」
「え?」
「早く早く。」
「まだ、準備が。」
「パスはダメだよ。前にやってるからね。」
「ううう。お願いします。お願いします。どうか揃わないで⋯⋯⋯。」
「はあ、最初は揃ってって祈ってたのに次は揃わないでなんて。図々しいね。神様とやらが可哀想だよ。」
「か、神様を!侮辱するな!天罰を落とす!クソガキが!落とす落とす落とす落とす⋯⋯。」
「はいはい。じゃあ次引いちゃって。」
「8とJOKER?」
JOKERはどうなんだ?高いか低いか。いやわかんねぇ。ひとまずこいつが爆弾なのは変わらないな。
「JOKERか。さすがに怖いね。これに手出しは出来ないね。」
「次は私。」
「大丈夫なのか?」
「うん。やるしかない。⋯⋯1のペア。やった!って何も起こんない。」
「良かった。にしてもお前危なすぎんだろ!」
「うんうん。良かったね。それにどうやら私の彼が思っている通りのものだったね。」
「金城くんが?」
「ああ、恐らくというかこれは数字が高ければ高いほど強い苦痛を感じるってやつだな。個人差があるかもしれんが。」
「そうなんだ。」
「おっ!やったね!もうひとつのJOKERだよ!」
「なに!?」
「引きたいならご自由にね。」
「うう。パス。」
「いいの?負けちゃうよ?」
「パスなら俺か。JOKERは避けるにしてああ、8のペアが揃ったな⋯⋯⋯⋯⋯耐えられ⋯⋯ない⋯⋯⋯程じゃ⋯⋯ない。」
まじできついな。4は初めて食らったからびっくりしたが8食らうと4が本当に弱いって感じるな。
「大丈夫?」
「ああ、なれたらそうでもないな。」
「強いね。金城は。」
「そうでも無いさ。」
「うわっ空気あっま。気持ち悪。さっさと引こ。」
そう言った彼女は一切の躊躇いなく引いた。
━━━━JOKERと書かれたカードを
嘘つきだらけのデスゲーム 華ノ木 @clownliar
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