第6話 嫌な事を思うぐらいなら吐いちゃえよ
「って…イタタ!」
「こら!少し、我慢して下さい!」
「でも、痛いってぇ!」
「我慢しろ」
「そんなぁ…」
とまるで親子の母と娘の会話をするような感覚だ。って痛!ぶちちと髪が受付の近くにあったローラーにちぎられる。そう、私は今、髪についた図書室の埃を彼に取ってくれてるのである。ローラーを見ればあまりにも汚くてこんなにも付いてたのか引かれるのである。だが、ここは薄暗い二階の休憩室。ここに古びれたクーラーがつくとつかないでこんなにも少し寒さを感じるのは私が半袖だから?いや、私は長袖である。そうそうに寒くはない。それともこの血まみれの部分が風を感じて肌に通したのだろう。盾が脆いもんだ。今までは寒くはないのに改めて気づくと寒く感じた。そう考えれば考えるほどもう余計に考えてたら寒くなってきた。また、風が肌を押し付ける。鳥肌も立ってきた。
「寒いですか?」
「え?」
「ここ、すこし涼しいし。いまのあなたは凄く寒いかもしれないだろ?だから、僕のコートを貸すよ。良かったら…」
とローラーを置き彼が着てたコートを脱ごうとした。だが。私は思わず彼の肩を置いて彼のコートを脱がすのをやめさせた。
「な、何?」
「だ、ダイジョウブダヨ。ワタシ、へ、ヘイキダシ」
との謎のカタコト。寒がってる宇宙人だこりゃ。それを見た彼は頬を膨らます。何故拗ねる。
「何が大丈夫ですか。ほら、手が震えてるじゃないか!」
「ダイジョウブッタラダイジョウブ。アア、ヨクカンガエレバ、ゲンキ。ゲンキニナッタゾ」私は立ち上がろうとする。だが、彼に止められて強制的に座らせられた。
「まだ、終わってません」
と少し怒り篭もった声で言われた。なんか申し訳ございません。これでもめちゃめちゃ強がりタイプなんです私。すると突然
「うわぁ!?」
彼は自らの顔を私の背中に押し付けられた。私が何かを背負ってるみたいに押し付けられたのだ。寂しさもなく怒りもなくただ単に普通に押し付けられた。すると彼が小声でこう言った。
「遅くなったけど、助けてくれてありがとう」
と恥ずかしながらの声で。…あ、そういえば…私はすっかり忘れてた。あの時の事を伝えたくて彼はやってきたのか。怪我した足を引きずりながらも?そのために来てくれたのか?私はすごく微笑ましくなった。助けてよかったなと改めて思った。たとえ命が壊されても有難い命があるのだと。ローラーが埃を取り除いた私は菓子パンの袋を開けた。
「そういや、あんた名は?」
と私はメロンパンを食べる。彼はハッと気づき俯きながらあんぱんを一口。そして流れるように名乗った。
「……アーシア。アーシア・ライディン」
「ふーん。アーシアね。良い名だな」
と聞き流しメロンパンを一気に頬張る。前世でたまに食べてたメロンパンがまさかのここで食べれたのだ。形と甘さも前世で食べたまんまだった。まさに今前世にいるような感覚だ。外でこれを食べる記憶があったよな…。と思っていると。すると、アーシアがじーっと見てきた。こんなにも頬張る女はあんまりもいないよな。アーシアはあんぱんを食べ続けた。頬に付いてた餡子も食べて。薄暗い中で食べる菓子パンはサバイバル漫画とかで出てくるような場面だ。そういえば某漫画で毒入りのカレーを食べてるシーンがあったよな。あれ、なんて言う漫画だっけ?もう、ほとんどが今私の居る所と同じなのに……って何考えてんだ俺。それだとむしろ食べ心地が無くなるだろが。それからはしばらく無言の食べた。何も話してもない。クッキーとグミとは言い難いものも食べた。いや、話せないほうだ。いつ敵が来るかもしれない。いや、来てもおかしくないところだ。ここで騒いでいたら死ぬに決まってる。何せここは死と隣り合わせなんだ。もう、ここで騒いだらおしまい行きだ。そうして思っているうちに役所にあったほとんどを食べ尽くした。もう、動けない。動きたくもない。こんなにも快感のある幸福なんて今世で初めてだ。私は横になった。そう、なると寝ていたい気持ちだ。だが、そうはいかない。それがこの世界の現状だ。でも、この誘惑には敵わない。ここは死と隣り合わせなのに誘惑に負けるような感覚だ。すると、アーシアが突然顔を出してきた。言うことがなんとなく分かるが。
「寝てる暇があったら動きましょう」
「ですよね…」
体も寝る誘惑に負けてる精神よりも先に起き上がってしまった。この体は正直な子だよ。この体が羨ましく感じる。残りのお菓子はレジ袋では動きずらいため、更衣室にあったウエストポーチに入れることにした。入れる最中、体育座りしていたアーシアからこう問いられた。
「そういや、あんたは何で殺す時笑ってたの?」
「え?」
とお菓子を入れる手が止まった。あまりにも分からない質問だった。
「笑ってたの?」
「え」
「ああ、なんでもない…」
え?笑ってた?私が?殺す時に?本来なら必死の顔だろ?何で笑うんだ?私の頭の中はこんがらがっていた。私が笑うのは某魂と某ボーボボだけなのに他のもあるけど。お笑い番組とかドッキリ番組とか落語とか…。いや、落語とか笑うとか俺はおじさんか。でも、あの時彼は顎を引いていた。目も引くように開いてた。だからこんな質問、最初から納得のセリフ無し前提に聞こえた。
「怖いと思わないように……かな」
「かな?」
アーシアは首傾げた。出任せに聞こえてるのだろう。はい、出任せですよ。本当に分からないんだ。気がつけばあの太った少年を殺してしまったのだ。もしもこれが殺人ではなく隕石破壊、または討伐したのが伝説のドラゴンだったら、ラノベの主人公みたいに『僕、なんかしましたか?』と言うわ何気に任務をしただけですが?の顔で済ますことが出来るのだから。でも、人を殺すことはその場合とは別だ。私がしてるのは犯罪。完全で確信の目撃者ありの犯罪。別に怖くはないのだ。でも殺した後に残った感覚が、何故か懐かしく、気持ちいい。と気持ち悪い感覚。今でも消したい感覚だ。私は打った。この気持ちを今にでも消したいからだ。
ああ、消したい。消したい。消したい。消したい。消したい。消したい。消されたくない。消したい。消されたくない。消したい。消されたくない。消されたくない。消されたくない。消されたくない。消され……たくない?何で連呼してる度に途中に消されたくないと思えてきたのだろう。俺は消したい。だが、何かが壊れそうだ。心?頭?どっちも分からない程に壊れてきたのだ。あれ?おかしいな。息が辛いぞ。ああ、また、真っ白になっていく……。その途端に
「大丈夫?」
ハッとした少年の声がしたからだ。しかも嫌だった優しさのある声がした。声がした方向、右に素早く振り回すとそこには心配して様子を伺うアーシアの姿があった。そのせいか、息が辛くなくなった。というか元の正常の息に戻っていく。そして、もっと感じたかったのは気のせいなのか?死ぬかと思ったような感覚だ。私は胸を撫で下ろす。なんだか落ち着く。それを見兼ねたアーシアは「はぁ」とため息をついた。どうやら心配をしてくれたらしい。お菓子を入れてる手はいつの間にかまた止まっていたらしい。
「とりあえず、大丈夫だよ。ありがと。心配してくれて」
「別に。あんたが頭がおかしいのは確かだと分かったから」
優しいな。最後の一言が無ければな。お菓子を入れ終え私はウエストポーチを担ぎ立ち上がった。しばらくアーシアの埃取りのせいで膝が図書室の時よりも痺れてる。
「さて、私、行きますけど。あなたは?」
とアーシアに振り返る。アーシアを少し考えてこう言った。小声で。
「行く……」
と俯いた。だが何故だろう。女の子らしい俯き方と胡桃色のショートボブと灰茶の瞳が合いすぎたせいか余計に俺の理想系のヒロインって感じがして可愛く見てきた。ついでに京●ニ風の目をしてて可愛い。今すぐにでも抱きしめたい。だが、そんな事はしてはいけない。私の性別は女だ。女が童貞男のような考えていてたまるか。私は我慢し「そっか〜」と素っ気なく返した。二階を降りて洗面所近く入口、私が最初に入ったところに戻ったのだ。本来ならここで寝泊まる予定ではあったが、ここだと居心地が悪い。何せ役所だし。休憩室を行ってみたが皮が剥がれたソファーしかなかったのだ。開きっぱなしの古びれた扉が行動再開のゲートを告げる。私とアーシアは歩いた。それぞれ違う歩幅で。
何度も何度も歩いても木と草は親切に門を作り入れるように見えてきた。俺は《ト●ロ》の世界にでもいるのか。いや、先程の遠くから爆発音が聞こえてきたのでもう《ト●ロ》の世界では無くなったな。どれくらい歩いてきたのだろう。息が荒れてもなければ当然疲れやしない。けど、アーシアを見てみると疲れが出たのかはぁはぁと息が荒い。
「疲れた?」
と私が心配そうに言っても
「大丈夫」
と返される。きっと強がってるのだ。ここまで来ると俺のドッペルゲンガー(?)に見えてきた。アーシアの強がり私は呆れてしまった。なんかつまんないから。私は辺りを見渡した。辺りは木ばかりで目が狂いそうだ。
__なんか出口っぽいのはないのか?
と必死に辺りを見渡した。アーシアも体ごと後ろを振り向いたり左右を振り向くと大胆な行動をしてる。大体その素振りは失敗しがちだが彼は片足を固定して振り向いてるのだ。これは相当体幹がいい方の人らしい。おそらくは体幹が上手いと聞く体操の選手かなと私はアーシアを見た。しかも持っているピストルはあの《ル●ン三世》の登場人物である次●大介の愛銃『S&W M19』。この実物がここで見られるとは思わなかった。前世では《ル●ン三世》かネットでしか見られなかった。一度は触れてみたいと願ったがまさかここで見られるとは思えなかった。しかしそれで撃たれる寸前だったが。気が付くともう何かが見えそうだ。ここまで歩けばもう見えるだろう。と思っていたその時、緑の木の間から綺麗な青色が見えてきた。
「おい、見ろ!」
「……?なんですか」
私の掛け声でアーシアの振り回しは終わってた。もうちょっと見たかったな。私は綺麗な青色に向け指を刺した。それを見たアーシアは突然走り出した。今までの怪我が嘘のように走り出したのだ。
「お、おい待って!」
私は彼を追いかけた。彼が殺されないように。
【視点:田中少尉】
私達の船に一羽のカモメが通りかかる。そして、先に行かず私達の方向に回ってまた通り越す。右から来た二、三羽のカモメも同じようだ。カモメ達の皆はここがよく分からないが危険なところだと分かって回ったのかな?カモメに食事を盗る知識以外にそんな知識にもあったのかな?私は回ったカモメ達が感心を持ちながら空を眺めてた。
潮風が気持ちいい。こんなに気持ちいいのはいつぶりだろう。陸上少尉である私は今、真っ青の海に男三人で船に乗られてる。[とある任務]のためである。一人だけ体が大きいせいかそれとも担いでる銃のせいで船が窮屈に感じた。すると
「少尉」
と裾を引っ張ってきたのは同じ少尉の松田だ。松田の顔はまさに仏頂面だ。何か言いそうだなと私の勘はまっすぐに当たった。
「少尉。これいつまでやるんすか?今日、午後五時に《水●の魔女》が始まるんすよ。しかも続編の。これに間に合うんですか?」
と松田が言う。松田はれっきとしたアニメヲタクであるのだ。そして私のところにアニメヲタクなんて死ぬほどいる。そんな事かと私はため息をついた。
「残念ながらこれは明日中の任務だ。だから《水●の魔女》とやらには到底間に合わない」
「そんな馬鹿な…」
と松田が船に伏せてしまった。海面を浸してる両手を揺らせて。そんな最中「ガハッハッハ」と声の主に私は眉を寄せた。同じ陸上中尉の永瀬だ。この人とは初対面だが、へらへらと人を笑い物にするような態度が余計に腹を立たせる。
「そりゃ当たり前だろうがここの大体の任務は一日中だろうがよぉ…」
と水筒にある水を飲み干し。涎のように流れる水を拭い永瀬は話し続ける。私は違和感を覚えた。『ここの大体の任務』?つまり彼は一度ここの任務に着いたことがあったのか?いや、何度もあったのか。
「え、ここの任務毎度受けてんすか?」
と松田が不思議そうに言う。口の利き方の前に私と同じことを思った。「ああ、まぁな」と相槌をうち永瀬は続いた。きっと冗談の混じえて言うのだろうと私は心底思った。しかし永瀬の顔は何故か俯いていたのだ。
「お前らは確かここ初めてだよな?」
と確認してきた。なんだ今更…。私と松田は本来は南米のところで難民の救助がメインのような仕事。綺麗な水を作るために細い土管を運んだことだってあったのだ。まぁ、松田もほぼ同じとは言えるかな。一応、私と松田は他の軍人達とは比較的に付き合いが長い方だ。松田は仕事態度は普通で良い方と言われてるが私からすれば嘘だと言いたい。それは見ての通り彼はアニメの事になれば今でも帰りたいと言いまくるれっきとしたアニメヲタクなのだ。まさに彼の体言なのだ。もういっそ[れっきとしたアニメヲタク]の称号でも挙げたい程だ。まぁ、そんなことを言っても帰られないことでも称賛がしたい。だが、そんなアニメヲタクの彼には妻と子供二人いるというのだ。しかも妻も彼と同じのアニメヲタクでもあるのだ。彼にとっては微笑ましいのかもしれないが独身の私にとっては羨ましく思える。だが今回の任務は永瀬の顔から見てかぎり思ったより激務なのかもしれない。そう思っていると永瀬は胸ポケットにある煙草をとり火をつけた。
「松田って確かお子さんがいるんだよな…何歳だ」
「あ、はい。男の子で十歳です。その妹は八歳ですが」
「十歳ね…。若いな…」
と煙草を吸う。何だ?もうそんな年齢だったのか、私は海ともに時の流れを感じさせた。実は昔、私は松田の息子である耀太に出会ったのだ。あの頃の耀太は五歳でとても活発の子だった。まさに育ち盛りの男の子だった。公園で耀太の友達と元気いっぱいに走りまくる耀太をベンチで松田とその妻と一緒に微笑ましく思えたのにもうそんな時が過ぎたのか。私は時の流れを改めて感じた。同時に私も歳だなと新たに思ったのだ。しかし、対する永瀬は喜怒哀楽が全然感じない顔だ。今までのからかいの顔が嘘ように思えてくる。そのような顔だ。「ふぅ…」と煙草の煙を吐いても永瀬は無表情のままだ。そして、しばらくの無言が続いた。分かるだろうが私も松田も彼の行動が分からなかった。それは永瀬が突然耀太の年齢に聞きに来たからだ。この任務、正直私は違和感だらけなのだ。まずは一つ。何故、船に乗らされてる事だ。これの理由を隊長がこう言った。
「ただ、船に乗って島を眺めてればいい」と
このゴム船で男三人乗らされてる状況だ。どうにもここだけでも違和感しかないのだ。さらに、私達が銃を持たされてること。島を眺めるだけなのに銃は必要あるのかと。すると遠方を見た永瀬が何かに気づき銃を構えた。そして、
パパパパァン!
と十発を撃った。一体何があったと私は永瀬が撃った方向に顔を寄せた。よくに何かが浮かんだ。魚か?と最初は思った。しかし、見えたものに私は血の気が引くように凍った。凍る私を見て煙草の煙を吐いた後の永瀬はこう言った。
「俺達の任務はこれだ」
このたった一言で私を戦慄を覚えさせた。浮かんでいたのは人だ。人が浮かんでるのだ。そして、周りには赤いのをばらまいてる。血だ。永瀬は殺したのだ。人を。
「もう、知ってるんだろ?お前ら。これが今回の任務はただの人救いじゃないことよ」
知ってた。知りたくなかった。響く銃声と爆発音。そして、私達の船に寄っていく撃たれた少女の死体。私達がやってるのは人殺し。いや、戦場に駆られたのだ。私は本当に知りたくなかった。さっきの永瀬の質問いや、確かめをしたのかが何となく分かった。しかし、状況が飲み込めてないのか松田は
「し、知らないすよ!そんなの!」
と立ち上がった。そういえば、松田はここの任務は初めてだな。銃も訓練以外で持たせた事も。
「い、いま、人を殺しましたよ。そ、それに息子とほぼ同じ年齢の子を…」
正しく松田の言う通りだ。あの死体をみれば恐らく耀太と同じ年齢の子だ。まさかと[とある任務]は…と私は永瀬と目が合った。永瀬は私と目が合ったせいか頷いた。
「まぁ、落ち着け。今回の任務はこの島に出た奴を殺すだけ。俺はその任務をまっとうした。それだけだ」
と永瀬が指した先は目の前にある島だ。そう今回の任務は出た人を殺す。しかも出てくるのは十二から十四の子供がくる。リーダーの永瀬から来る通信が来るだけでここを出たくてこの持ってる銃で撃たれた人はもう二百人を超えた。この海岸沿いで自殺する奴もいた。最初は気まぐれの冷やかし通知かと思った。だがその通知で永瀬の表情が暗く見える度に冗談ではないと確信した。私は持ってる銃を強く握りしめた。涙も何度も止めさせた。松田は口を合わふためるがそれはそうだ。耀太とほぼ同い年の子を殺すのだ。その気持ちがすぐに分かるのだ。松田は静かに座った。その目は悲しそうにしぼむのだ。縮んだ煙草は役目を終えて海に投げ捨てられた。永瀬は続いた。
「お前らの気持ちは分かる。最初の俺もそうだった。」
と永瀬はここでの事を自分の身で起こった事を語った。
「島にいる子供達がいた。四、五人はいたな。俺の方に泳いできた。そして、俺の先輩が立ち上がって、子供達に向けて銃を構えて泳いでくる子供達を撃ったのだ。バンバンバンってね。その後の先輩の顔はなんだと思う?歯を食いしばって目を赤くしてた。その顔は今でも覚えてる。先輩も同じ気持ちだなと。」
と永瀬は上を向いた。その空で自由に空を飛ぶカモメを見た。私は永瀬のある事に気づいた。銃を構えてた手が震えてることを。
「先輩もこんな気持ちで撃ったのか…」
そして、
「あれ?なんでだ?」
永瀬の目から涙が出たのだ。
「疲れてるのかな」
と手で目を覆い隠した。私は自然に永瀬の背中を摩った。彼も何年も我慢をしたのだろう。背中から感じる圧力。何人も子供を殺してきたという圧力という名の呪い。松田も吊られるようにもらい泣きだ。
「う、う、うぅぅ……」
永瀬は目を赤くしながら泣いた。これは、永瀬の罪だ。永瀬だけじゃない。ここの任務に全うした軍人達も。そして、それを無視してきた私でさえも。すると水に入る音に聞こえた。すぐに目の前を見た。目の前の砂浜には少年が走ってきたのだ。こっち向かって泳ごうとした。その時、松田が銃を構えだした。
「松田!」
「これは仕方ないのですよ!先輩!じゃないと…」
「だが……」
引き金を引く指が震えてる。涙目ながらも撃とうとする姿勢に私は無視できなかった。彼も立派な兵士だなと改めて思った。しかし、
「待て」
永瀬が松田を止めた。涙を拭いながら彼は睨めるような真剣な眼差しで。
「何でですか」
「見ろ」
私は双眼鏡で確信した。もう一度目の前を見た。追いかけてきたのだろうか少女が少年の手を引いてる。泳ぎを止めさせているようにしてるのだ。その少女は血まみれのワンピースを着ていたのだ。きっと彼女は彼を守るために殺したのだと。それからは彼と彼女は口論になった。きっとあの少女は私達を気づいているだろう。銃を持ってることに。対しての少年は気づいていない。ただここを出たいことで必死になってるのだろう。
「どうしますか?先輩」
「……一旦様子見だ」
「はい」
松田は銃を構えるのをやめた。この状況を飲み込めてくれる松田はすごいな。よく成長したと思う。中尉止まりの私でもそうだが彼が一番成長したと。それにしても口論にしては長いな。通常はそうなのか?すると少女が私達の方に指を指した。説得してるのだろう。そして、少年は足を崩れだして倒れた。
__あ、危ない。
私は限界まで顔を寄せた。しかし、彼は倒れてなかった。彼女が手を腕を掴んだからだ。そして、少女は掴んだ彼を抱きしめたのだ。私は安堵をした。そして、湧き出てきたのだ。未来のある彼女らを殺したくないのだと。彼女達の青春はここで終わるのかとここで私達で壊すのかと私は怖くなっていた。壊すのが嫌いだからだ。すると、
「おーい!」
と遠くから私達と同じ船が来た。違う班の船だ。両手を広げて私達の方に振ってきたのだ。船を止めて一人の私達の船が寄りかかってきた。
「交代だ。すぐに本部に戻るよう」
「了解」
と私達は敬礼をした。そして、反応するように彼らも敬礼した。
「さて、本部に戻るぞ」
「はい」
「は、はい……」
と松田は持ってる銃を置いてゴム船のエンジンをかけた。船は右回転し遠回りするように船は進んだ。私は遠くなるあの砂浜を見た。あの少年少女があの島で殺し合うのがとても嫌に感じた。それは私だけではない。永瀬も松田も交代した軍人達皆、この殺し合いに参加をしてるのだから。とても嫌に、決まってる。
【視点:シェリア・オリエント】
「……」
「……」
__何で抱きしめてるんだ。私……
現在の私はアーシアを抱きしめてるのだ。私から抱きしめた?なんで?これには訳があった。アーシアが突然走り出したのは救助の船が見えたからだ。私も一応見えたがそうでもなかった。船にいたのは三人の軍人。そう、これは罠で泳ぐ人を殺すのが分かった。だとすればアーシアが危険だ。
__やば!
とアーシアを腕を掴めばそれからは口論になった。私はあれは罠だと伝えてもアーシアは違うと言う。ああ、何をすれば説得その時
「うわぁ!」
砂浜が一気に引かれたのかアーシアの足が崩れだした。このままじゃ軍人に殺される!と私は彼を覆いかぶさった。言えば抱きしめた、その方が一番のやり方だ…
__あ……
私は約〇・一秒でやっと理解した。これは私がやった事だと。あと一歩でタックルという寸前に、前を見ると交代だろう軍人が乗ってる船に近寄ってる船があった。気づかない間を計らい私は抱きしめてるアーシアを姫抱っこに持ち替えて走り出した。たまたま走り出せば走り出すほどアーシアがどれだけ軽いのかも分かった。
「……軽」
と小言を吐くと
「!お、お、降ろして!降ろしてください!」
アーシアが顔を赤くして一刻も早く降ろしたいとばかりに足をばたつかせる。あまりにもウザかったため私は彼を降ろしてあげた。
「な、なんですか、いきなり!姫抱っこして」
降ろしてあげた第一声がこのツッコミである。そりゃそうだ。分からない行動してるのは私だよな。
「えっと……あれだあれ。ほら、こういう系ってさ…救助ぽい船があるが実はそれは罠だって事があるだろ?それだよ、だから……そうです」
アーシアは少し目を開いた。なんでこんな事をあの海の時に思い浮かばなかったのだろう。私は後悔した。これが本当の簡単な説得だった。だが、アーシアは
「だけど抱きしめたという謎の行動に繋がらないでしょ」
との正論。するとアーシアは
「ですがさっきの事は本当ですか?」
と言った。私は目を分からずながらも頷いた。それしかないのだ。私もあれが救助の船だったら即刻止めはしなかった。頷いた私を見てアーシアは俯き私との目線を逸らした。信じたくないのだろう。そもそも私の話なんて信じられないもんだから。第一、話を聞いてない。
「……ごめんなさい」
思わなかった。ごめんなさい?私は一瞬焦って彼を見た。まぁ、本来のサバイバル漫画でお馴染みの孤立した島の海には危険がいっぱいみたいなもの。まぁ、アーシアが出たい気持ちが分かる。だが、アーシアの俯いた顔をから見るかぎりやっと落ち着いて気づいたらしい様子。
「ま、まあ、そういうのがあるから…」
と私が言うとアーシアはゆっくりと頷いた。けどまだ顔は俯いたままだ。
「さて、別んとこ行こうか…」
と私はその場を去ろうしたらアーシアも無言のまま私についてきた。きっと絶望してるのだろう。俯く顔が暗い。それよりも私はある事に気づくこの島で分かったこと。やはり、あのステージで見た通りこの島は元有人島だ。出口が塞がっているサバイバルのための元有人島であること。あのステージで見たこの島の地図には小さかったが色んなところで地図記号らしき記号があった。灯台、電波塔、学校、水田地帯に果樹園。先程出たあの役所らしきの記号もあった。しかし、あの役所は所々崩れかけてるが形はしっかりと整ってる。おそらくコンクリートで創ったのだろう。形状…が四角なのがその証拠だ。海を離れて数メートル。そこことの周辺を探ると何かを建てられた跡にその家族が住んでいたであろう周辺の木が家に突っ込まれてた。近くには子供が遊んでいたのであろう砂場用のシャベルとバケツに苔付きの腐った滑り台があったのだ。私はアーシアとその家の中に入る早々にバキバキとガラスを踏む音が分かった。中庭から入ってきたからすぐ近くにあるとっくに割れた窓から入ってくるなんで何か罪悪感が感じたがここが元住居だとすればなんだか冒険が始まるような気がした。しばらく俯いてたアーシアが私
「あ、あなた、入らない方が…」
とアーシアに止められたが止められない。これは好奇心と言うのだろう。私はアーシアの警告を無視して家の中に入った。これではわたしはまるで冒険をしてる少年のようだ。でも、誰もがこの好奇心には耐えられない。と思えたのもいつぶりだろうか。私は振り向き
「ちょっとはいいだろう」
と胸が高鳴りながら進んだ。アーシアは仕方なくついて行った。ここにいると敵に見つかるリスクが高いからな。それにしても家の中は湿気だらけだ。もう、池が作れそうなほどに。どおりでこの辺りには虫が外でうじゃうじゃしまくるよな。私もアーシアも虫は平気だが一部の虫嫌いには嫌なところだ。来るだけで泡を吐きそうだ。私は目の前の焦げ茶の扉を開く。開くとそこには埃まみれの洗濯機と汚れた洗面台があった。どうやらここは更衣所だ。洗濯機の下に敷いてる足拭きマットが何よりも示してるのだ。ならば足拭きマットの先には浴室なのかと思って開けたらビンゴ。汚く冷たそうな水が入ってあるバスタブに壊されてる床とヒビが入ってる壁とまさにホラー映画でもいるような気分だ。ガシャガシャとパンプスと音ともに鳴らして入った。そうするある物が目に映った。映ったのはプラスチック製の水鉄砲。小さい頃によく遊んでた。しかも二本も持ってあるし二本とも黒色の銃だ。これは元からかな?きっとこの家の子供が二丁の銃でこの浴室で遊んでたかな。子供の遊びは正直興味はなかったが私の子供の頃なんかを思い出すのが興味深く感じた。
「何かあった?」
とアーシアがひょっこりと顔を出した。なんだか心配そうに見ている。
「あ、ううん。なんでもないよ!」
と私は浴室をでた。ここにいるとなんか呪われそうだから
廃家を出ていき。私達はしばらくの間に歩いた。もうどれくらい時間がかかったのだろう。もう、夕暮れのはずなのに空はまだ赤に染ってない。これって時間ボケというのかな?とそんなと思ったら突然、アーシアが突然背中を合わせた。もう、気づくのか…私は関心をした。
「早いな」
「それは足音が聞こえましたから」
と言った。アーシアの言う通りだ。どうやら私達は囲まれたらしい。しかもおよそ二十人程度に。さらに私達を待ち伏せていたのだろう。男どもざわざわと囲うように立ち寄ってきた。男の一人は汚い声で
「よぉ、嬢ちゃん。俺達と組まない?そんなひょろひょろの男よりも効率がいいぜぇ…」
と言われてきた。まさにアーシアはその通りのひょろひょろの男だ。だが、私は
「悪いがこいつがいいんだ…だから、そこらの女でも行けばどうだ?」
私は冷たい声で返した。気に入られないのか男は舌打ちをした。
「けっ、この場合は手のひら返すのが女だろ?」
「手のひら返さない女がここにいますが?」
とまた冷たく返してやった。悪いな俺が返さねぇ女で。
「ばか。僕は平気だ」
「あほ。こんな汚い所に行ってたまるか」
と再び前を向くとあいつらは戦う気満々だ。私達も……と私はアーシアの目を合わせる。アーシアもこくんと頷く。私達は銃を構えようとした。しかし、
「そこまで」
と後ろから声がした。後ろを見ると灰色の少年が剣を抜いているのだ。その隣にいるのは黄色のロングヘアの少女だ。うわぁ…ラブラブだ。と私は呆れたのだ。まるでラノベにいそうな主人公とヒロインをしているようだ。すると、アーシアの手が震えてる。
「どうしたアーシア?」
と問おうとしたら。アーシア
「カファール、どうゆう事?」
アーシアの顔が恐怖の顔だった。
「え?知ってる人?」
と私が問うとアーシアは頷いた。
「アーシア、貴方は何をやってるの?アーシア…あなたはそんな事をするの?」
アーシアがビクッと肩が跳ねた。どうやらカファールはあの少女らしい。
「こ、これには訳が……」
「どうしてそんなことを……」
そのカファールから涙が出てきたのだ。彼女は涙を手で拭った。
__あーこれ、ふりだな
私は彼女、カファールのふり気づいた。そして、もう分かったのだ。これは嵌められてると。けど、アーシアは気づいていないみたいだ。もしかして…私はこれからカファールの言う事が分かってきた。
「女の子を使って殺しを働かせたなんて…」
「なぁ!」
とアーシアは驚いた。胸に釘を打たれたのだろう。周りの男子もからかうように笑いながら
「うわぁひど…」
「これは無いわァ」
「女の子を利用するなんてことを……」
アーシアは一本、引きつった顔をする。まるで追い込まれてるように。あれ?おかしいな…これどこかで見覚えのあるぞ。
「ち、違う!これは違うんだ!これは…」
「言い訳なんて聞きたくないわ!あなた最低よ!この最低人間!」
とトドメを刺されたの感覚だ。『最低人間』…ね。それはどっちだろう。アーシアは効いてしまったのかこれ以上は言わなかった。そして、膝を崩れさせた。
「二度とその顔を見せないで吐き気がするわ!」
とカファールは隣にいた彼に這い寄った。そして、隠れてるようで隠れてない意地悪な笑みを見せた。さらに周りの巻き添えどもクスクスと笑われた。これではアーシアが虐められっ子だ。………あれ?
プチ…
何だこの音は……。ああ、まただ。また理性の音が聞こえた。そして、同時に思い出した。これは走馬灯だ。思い出したのはあの洗礼式だ。私はその傍観者になってるのだ。アーシアがあの頃の私でカファールがリリナ。なんだか親の言う事よりも何度もやきつけた光景だ。そして、嘲笑う姿。カファールの嘲笑う姿を見れば見るほど頭がまた真っ白になるほどになっていく。けど、何故か違う。この感情は何だろう。真っ白の裏に黒いのが混ざっていく。
「さぁ、アーシアのお人形さん」
カファールは私に声をかけた。凄くイラつかせそうな声だ。余計に腹が立つ。カファールは私にゆっくりと近寄ってきた。そして、手を差し伸べた。
「その銃で彼を殺してください!」
「……はぁ」
何言ってんだよ。私は…
「何を言ってるのですか」
と思わずにボヤいた。すると
「プッ……アハハハハ!」
「ぎゃーははははははは!」
「ひぃーひぃー!」
と怒涛に聞こえてくる笑い声がふりかかったのだ。からかいの笑い声だ。私が一番嫌いな笑い声。
「まぁまぁ、そんなに笑わないで」
とカファールが巻き添え達の笑いを止めた。そして、私に向けて
「さ、彼を殺して。そして、自分を解放するのよ」
と私は押した。押したさきには膝が崩れたアーシアがいた。………このままこの子をコロス?違ウノニ?するとアーシアはハッと気づき私が向いてる方に気づいた。アーシアは
「あ、あぁ……」
と尻で後ずさった。まるで強敵の肉食動物に近寄られた子どもの草食動物のように。すると
「た、助けて…ください…」
アーシアは私に対する威厳に怯えている。
「おいおい、命乞いかよ」
「だっせぇ」
「よわよわ〜」
と囲い達がアーシアをからかった。私が一歩歩けばアーシアも一歩後ずさった。私は殺したくない。すると聞こえてきたのだ。
「ちょろ…」
くすりと笑うカファールの悪魔の声が…
「よくやったよカファール。君は偉い子だ」
とナイフを持ってた子がカファールに寄り添った。しかも、私でも聞こえるような小声で。
「でしょ?ダーリン」
「ああ、きっと彼女も私達のことを分からせたのよ。けど、ちょろい」
私は思わずゆっくりと後ろを見た。カファールは目は笑っていても口は…笑ってなかった。
「あの子、本当にお人形さんみたいだから可愛く扱おうね。ダーリン♡」
「そうだね。その方がきっといい」
「そうよ、可愛く、可愛く、ね♡」
今度は目は笑ってなくて口は笑っていた。人を馬鹿にするような笑みだ。
プツン…
ああ、また理性の糸が切れた。これは限界が来た。私は前を向き直し銃を構えた。アーシアは怯えた視線を私に向けた。しかし、その割りには覚悟のある視線でもあった。ここでも察してくれる子なのか?私は殺すのがもったいないと感じた。ニヤニヤと嘲笑う巻き添え達とカファールというクソ女。こいつらは……後で殺しとこう。それがいい。丁度、アーシアがうざく見えたから。けど…。私は銃口をアーシアに向けた。同時にアーシアは手で覆いかぶさった。そして、聞こえる周りとニヤリ声と共に……
[……………それでいいのか?]
__いいんだ。それで…
[面白くないと思うか?]
__面白くなてもいい……
[記憶を入れ替える前の我儘お嬢様の皮をかぶったお人形さんでもいいのか?]
__それは嫌だ!
[お、即答wほら、これはお前がよく分かるだろ?]
__私は……どうすれば……
「この状況を変えよう。舞台はとある自殺者が出た学校」
__……
「ここには十人ぐらいの生徒達が一人の生徒を虐めていた。いじめられっ子はいつか助けられると願ってました」
__……!
「しかし、なんということでしょう。教師は十人のいじめっ子の未来を優先すると言いつけられた。そう、教師はいじめっ子の味方につきました。これではもういじめられっ子の未来が完全に失われたのでした」
__……はぁっ!
「さて、いじめられっ子の精神は自殺寸前だ。さぁ、ここでどうする?いじめっ子の未来を優先していじめられっ子の未来を壊すかそれともいじめられっ子の未来を優先していじめっ子ね未来を壊すか。いや、別の方法で自分の楽しみに優先するか。それとも……いや」
私はいつの間にか自分を見失ってたんだ。私が人形でわない事を。そして、私は私である事を。それに、この答えなんてもう、一つに決まってるよ。
[じゃあ、全部混ぜてあんたの未来で有効活用しちゃう?]
__…………あ
「………?」
アーシアは目をゆっくりと瞬かせた。何故か少し腐ってる匂いがしたからだ。鼻を防ぎたいほどの匂い……ではなかったが。アーシアは覆いかぶさった手を見てみれば水滴が小さく流れてた。アーシアが目の前を見ると銃口にポタポタと水が流れてた。そうさっき撃ったのはあの家にあった水鉄砲だ。何で?とアーシアは私と目を合わせた。そうだよ私。何でこんなことをしてるんだよ。それだと《悪役令嬢》のレッテルが変わりやしないんだ。私はこの嫌で大嫌いな人生を変えに来たんだ。私に合ってない。私じゃない。それだと新しい私に前世に寄せた私になれない。こんな非道な行動は…
「違うんだ」
周りがは?という顔だ。私が思いしない行動だったのだから。私は水鉄砲から本物の銃に切り替えた。その本物の銃口はアーシアとは別の方向に向けて発砲した。その方向とは
「ぐあっ!」
そうからかった巻き添えの一人にだ。しかも弾は頭に命中した。そして巻き添えの一人が倒れた。それだ。これは私が決めた。これは私が選んだ。それが私の求めてのだ。周りにいる十人のと
「っは!これは助けるじゃねぇよ……」
__これは私の…いや、俺の楽しみだ。俺が求めたのをなぁ!
俺はすぐ銃をアーシアに投げ捨て、刀を抜き即座に振り向き三人の巻き添えに向かって走った。それを見た三人は「ひぃ!」と化け物でも見てる反応だ。彼らの銃を向ける時間がなんだかスローモーションのように感じる。俺は即座に右から順に殺そうする。が、遅すぎたせいか彼らはバラバラに銃口を右へ左へと発砲しまくる。これだと素人の動きじゃねぇか。俺はすぐに防御体制にした。バラバラのおかげか簡単にも避けきった。俺の反応通りに右から順に殺せた。右は胴体からの心臓一直線に斬っての心臓刺し。中央の人は右の人ともに脳に突き刺した。すると
「うわぁぁぁぁぁ!」
おっと忘れてた。左の人が居たのを忘れてた。左の人の銃からガードするように脳に突き刺された中央の人を盾にした。卑怯かよ!というツッコミを入れられることもなく右の人と中央の人を抜いて左の人にトドメ的な心臓を刺した。気配を察したおかげで後ろにいた巻き添えを二人を左の人が持ってた銃でマシンガンで殺せた。ああ、どうしよう。こんなにも胸が高ぶったのはいつぶりだろうか。《悪役令嬢》のレッテルを忘れられるどころか俺が令嬢でも忘れそうだよ。と思っていたら左から
「うおおおおぉ!」
とまさにど素人のような巻き添えが斧で襲い掛かってくるが俺は刀で防いでそのままの勢いで斬った。そして、脳を突き刺す。ついでにこんなにも楽しいのは何故だろう。すごく心地がいい。呼吸のしかたも忘れてきた。いや、炎が纏ったようだ。心臓に肺に目が…俺の全てが炎に包まれるみたいだ。すると、
「くぅそぉ!」
巻き添えの一人がマシンガンをアーシアに向けて撃とうとしてるのが見えた。ハッと気づいた俺はその巻き添えを殺そうとしたが
「させねぇぞ!」
と俺より体格がでかい奴が庇いやがった。でかい奴は必死とは裏腹にはどこか馬鹿にした顔だ。これはこいつ殺してる暇があるがアーシアを守れない。と思いきや
「助太刀いたす!」
と林から駆け出す音が俺を通り越した。反応した俺は即座にきたでかい奴の拳を躱した。その拳を踏み台にして目に向かって斬ったのだ。その直後だ。音は、いや、男はでかい奴を踏み台して高く飛んだ。その衝動で俺は反射条件で脳に突き刺した。突き刺した先には男はクルクルと回って二丁の銃でアーシアに銃口向けた巻き添えに撃った。
「ごあぁ!」
アーシアはとっくに躱してたせいか。撃たれたのは巻き添えだけで済んだ。銃声からすれば四、五発は撃たれたな。俺はでかい奴の脳から刀を抜いた。
「君達、しゃがんでぇ!」
「え」
とアーシアを助けた男がクルクルと二丁の銃を撃ちまくった。俺とアーシアはしゃがんだ。アーシアはともかく俺は危機一髪だった。警告を聞いたなかったら死んでた。二丁の銃は巻き添え達の腹、足、太ももを撃たれるという素人ぶりだがこれはある意味すごい。だが、一部の巻き添え達はしゃがまれたが
「そして、君、いいね」
何故か俺が指に刺された気分だ。立ち上がり目の前を見るとあの時バスにいた茶髪の少年ではないか。俺は目を見開いた。思いもしない人が再会したのだ。茶髪の少年は俺と目が合った事に気づきニコッと微笑んだ。微笑みは子供のような微笑みだった。
「俺が思ったとおりだ。俺も同じ事を考えてたんだ」
と俺は少しでも見過ごせない速さで俺の後ろを通り越した。そして、通り越した際に茶髪の少年は言った。
「さて、敵を倒していくか!」
と楽しそうな声で。しかも、子供のような笑みが周りにいる奴らを馬鹿にするような笑みに変わっていく。あー、なんか分かる。俺は茶髪の少年に同情した。そして、茶髪の少年に背中を任せられるように走った。しかし、それが行けるか行けないかがここでのザ・お約束展開だ。ナイフを持ってる少年はカファールを抱きつきながら
「お、お前ら何やってるんだ!早く撃て!」
と彼の巻き添え達に命令をした。この展開…もう予想がつけるな。俺は投げ捨てた銃を持ち右へ左へと撃ちまくった。俺が撃ってみればあら不思議。見事に心臓と脳に命中しまくりだ。茶髪の少年の方も同様の現象が起こった。茶髪の少年の顔を見ればまるで玩具を壊すような勢いで人を殺しまくってる。狂気の笑みを見せながら。あー、こわ。巻き添え達が私と茶髪の少年が首や脳に刺されたり撃たれりともう素人どころではない。こいつらは素人以下のミジンコに過ぎなくなった。いや、こいつらはかませ犬と言わせても過言ではないな。巻き添えの数が十、五、二、と、とうとう一人は茶髪の少年によって撃たれてしまった。つまり残りはナイフを持ってる少年とカファールだけになってしまった。すごく見事な殺風景だな。木も土も血だらけだ。私の刀も血だらけだ。あー、これも血まみれだ。俺はほとんど赤に染まったワンピースを見た。この姿を両親がみればきっと絶望顔だな…。すると
「き、君、な、何、やってんの…」
とナイフを持ってる少年は膝を震えだしながら俺に向けて言った。この場合はっきり言ってやった方がすごく気持ちいいよな。俺は正直にはっきりに言わせてやった。
「ちゃんと私、解放しましたけど?何か?」
これは完全な煽りである。今までで一番完璧な煽り。ナイフを持ってる少年は歯を食いしばって今度は茶髪の少年に睨みつけた。
「お前のせいで…お前のせいで…」
「ん?俺?いや〜、なんか照れますなぁ」
と茶髪の少年はとぼけてんのか照れてる行為を見せる。行為が火種になったのか。ナイフを持ってる少年は
「お前のせいで俺の計画は台無しだったんだよ!」
と彼のもう一つのナイフを持った。隠しナイフもあるのかよ!と私は驚いた。そして、ナイフを二つとも持ち茶髪の少年に向けた。
「お前のせいで、お前のせいでぇぇぇぇ!」
と走り出した。茶髪の少年は軽くナイフを躱した。しかし、躱した直後に彼は首に向けて飛び蹴りをされた。茶髪の少年は思いっきり吹っ飛ばされた。茶髪の少年が吹っ飛ばされた先には俺がいたのだ。
__嘘だろ!?
しかも、俺は茶髪の少年のクッション代わりになるように吹っ飛ばされた。
「ぐぁあ!」
と俺は木にぶつかった。
「がはっ、はぁ!」
「おいおいそんなのかよ…」
ナイフを持ってる少年は軽く嘲笑った。
「本当に馬鹿かよ。あの人形と一緒じゃねぇか」
と歪んだ笑顔のまま指をさした。これはド肝を抜かれた。私は「は?」しか出られなかった。何言ってんだよ。
「お前も人形と同じだと信じて良かったわ。本当にお前ら馬鹿だからよ。こんなんで俺の計画を壊されてたまるか」
すごい憤りを感じた。そして、こいつの計画がなんとなく分かった気がした。それだけではない。計画の何よりも一番憤りを感じたのは俺を『人形』呼ばわりのことだ。何も知らないお前に言われたくない。呼ばれたくもない。ナイフを持ってる少年は俺に向けて
「君も思うだろ?俺が手を差し伸べたんだから有難く受け入れ…」
「そうか、そうか、つまり君はそういう奴なんだな」
とナイフを持ってる少年はハッとした。茶髪の少年は立ち上がり「ゲホッゲホッ」と唾を吐いた。出てきた涎を拭い俺の方に振り向いた。俺に向いた途端ニコッと笑った。
「嫌な事を思うぐらいなら吐いちゃえよ」
__……!
い、今なんてと言うまもなく茶髪の少年の目の向きはナイフを持ってる少年に直した。
「こうやって…」
と軽く飛んでその瞬間に
「さ!」
素早い動きだった。茶髪の少年はナイフを持ってる少年殴りかかったのだ。だがナイフを持ってる少年は見事に躱して続く茶髪の少年の蹴りにも躱したのだ。
__なんだ……これは……
まるで俺の
「あ、すべっちゃった!」
と言った直後に茶髪の少年は自ら持ってた銃 ハンドガンを背中に投げたのだ。ナイフを持ってる少年は安堵なのか馬鹿にするような笑みをした。ナイフの向きは俺に向いた。きっと俺を殺すのだ。ナイフを持ってる少年は俺に笑みを見せた。悪魔の笑みを。だが、回避する方法が一つある。それがこの
そう、ある人が言った。全てのドラマは緊迫で作られている。そう俺達の人生も他の人達の人生にもその緊迫は存在する。そう全ては緊迫まみれである。でも、どんなに普通に過ごしていたとしてその緊迫は生まれないしちっとも生まれやしない。緊迫にも時、場所、場合にも条件が付けられてるから。
__じゃあ、どうやって生まれるんだろう?
実はそれを出来るやつが一人いる。そう、奴だ。奴はどんな時でも緊迫した場面を見せつけられる。強い奴でもあり弱い奴でもある。知識が沢山あれば偏る知識を持つ。つまり、これらを纏めた矛盾をしまくる奴だ。奴とは何か?分かるだろう?そう、漫画でよく見られる主人公だ。主人公はいつでも緊迫した場面を作られる。そして、引き立て役を盾にして作られるのだ。では、主人公とは何か。何をすると思う。国の一番になる者?世界一、宇宙一を目指す?これは合っていて全然違うのだ。主人公はどんな状況に陥ってもどんな不幸と幸運があっても相手がどんなに卑怯でもそれらをぶっ飛ばすような熱くなれる
「そのヤバい奴らが……主人公」
俺は一瞬、頭が白くなったが引き金を引いた。弾は見事にナイフを持ってる少年の頭に命中した。彼が倒れたのと同時に俺は綺麗に着地した。
「……え?」
それを見たカファールは膝を崩れ落ちた。そりゃそうだ愛しい人を殺せば簡単に崩れ落ちるよな。下を見ると黄色い水溜まりが彼女のワンピースを汚したのだ。カファールの目に映ってるのは誰なんだろう。きっとカファールの目には全身他人の血を浴びまくっている同年代の少女が映っていた。その少女は生き生きとした表情のまま、何事も無かったかのように愛らしく笑いカファールを見つめてた。
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