第10話 デッドラン ①


「そこに井戸があるから体を洗ってこい」


 鳥が挨拶を交わしてるのを横目に居酒屋の店主にそう言われた政岡。


 暗くて良くわからなかったそうで政岡が寝ていた所はベットではなく馬のトイレだったようだ。


「まさか肥料作りの部屋で寝てるとは思わなかったよ」

 

「すんませんでした……」


「まぁ、俺に害はねぇけど、よくあんな臭いところで寝れたな」


 店主は井戸を案内して店に戻った。どうやらもう営業をしているらしく、人の出入りがある。


 政岡は井戸の水で体を洗うことにした。


 日本の季節で言うと夏よりの春くらい。日が出ていれば暑いというより暖かい気温で、水浴びをしても凍えるほどではない。政岡は桶いっぱいの水を頭から被る。水が滴る政岡。勿論タオルはない。馬小屋の壁にもたれ少しだけ二度寝。日差しと風で乾かす算段。


 幾らか時間が流れ、ある程度乾いた政岡は居酒屋に入ってカレー、もとい白湯を頼む。


「今街は激アツだぜ」


 日本にいた頃は毎日聞いていた言葉が耳に届き、後ろの席の会話を盗み聞きする。


「街に新しい魔石買取所がオープンしたんだけどよ、そこで買取したらガラガラクジが引けて、外れても幾らか割増で買取してくれる。なんと、一等が出たら10万ゴールドだってよ」


 カードショップみたいなことしてるやん! 政岡、一人で目を見開く。いつの間にか置かれていたカレーを見つめる。考えることことはただ一つ。


 カレーを平らげ席を立つ政岡。


「ごちそうさんです、ありがとうございます」


 店主に軽く頭を下げ、会計を済ます。


「アテはあるのか?」


 店主は政岡を見つめる。この村唯一の良心。


「はい、たった今、見つけました」


 笑顔を見せる政岡、根拠なんてない。


 そのまま政岡は店を出た。確かな足取りで、背中は雄弁に。


「……本当か?」


 店主はそれ以上考えることなく、日々の業務に専念する。

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