第4話 破壊だけが目的

 ぱっ、と、きりかわって、あのジャングルに立っていた。どこをどうみても、ジャングルだった。

 木がいっぱい生えてるし、みたことあるような、ないような、フルーツ的なものも実っている。みかん、ぽいのとか、バナナっぽいのとか。

「へい」

 と、そこへあの子が声をかけてきた。一週間まえと、まったく同じ格好だった。ピンクにつつまれている。

 オレがなににも、はんのうできずにいると、マーガはまた「へい」と声をかけてきた。

 で、つい「なにが」と、いう言葉でこたえていた。

「まあまあまあ」

 と、マーガはなだめにくる。

「そう、生き急ぐなってば、アマデラ」

 けっこう近くに立っていて、笑っている。そういえば、この子はかわいかった。そこまで思い出した頃、急にいろいろ心からわきでてきて「マジか」と、いっていた。

 それに足元にヘンな感じがあってみてみると、今回は靴をはいていない。家のなかにいたかららしい。

 また来てしまったのか、宇宙の底、とかいう、謎しかない場所に。

 また来たけど、あたまの中はぜんぜんついていかない。それで、マーガへむけて「で」と、なにかをまる投げするみたいに、進行をふった。

「はい」

 と、マーガはないか、司会者みたいに声をいれた。そして、話し出す。

「というわけで、これでわかったでしょ、アマデラ。きみはここによばれ、で、還ることもできる、そういうしくみだと」

「うん、わかったら、なにかが、おしまいな気がするけど、わかった」

「それ、百点の回答だ」どういう気なのか、マーガがほめた。どうでもよかった。「あ、ただね」

 ん、ただね、ってなによ。

 まだ、なにかあんのかよ。と、心の中で、じゃっかん、やさぐれる。

「一回、アマデラをこっちに呼ぶじゃん」

「それってば、お取り寄せ商品感覚なのかしら」

「でね」マーガは右手の指を立てて話してくる。でも、話かけて急に「あ、だめた」と、言い出す。

 なので、オレは「いや、マーガ、きみはたしかにダメなところがたくさんあるとは思うけども、じぶんを攻めすぎるのはよくない」と、いっておいた。

「じゃなくて、来た」

「ああ来たよ、オレは。来たというか、こさせられたよ、オレは。靴もなく、靴がないという、ハンディを持たされて、ここに」

「で、破壊蜘蛛がね」

「きょうに、破壊蜘蛛か」

「破壊に寄生されて、破壊だけが目的になった蜘蛛なの」

「なんか、前回されてない説明がほうりこまれてきた気する。こまるよ、あとから追加設定のせつめいとか、消費者はきびしい評価するよ、そういうの」

「それはそうと、わたしの靴、ひとつ貸してあげる。いつも三つもってるから」

 また、話しが急にへんぼうした。

 マーガはピンクの服の下をがさごそやって、スリッパみたいなのを渡して来た。真緑色だった。渡してくるし、こっちは靴下だけだったし、「あ、どうも」と、流れでうけとった。履いてみると、靴は伸びて、足にピッタリはまった。

 それを見てマーガは「うわ、かっこわるい」といった。

「キミの靴だ」オレは言い返した。「元ネタは、キミのセンスだ。この靴は」

「で、走れるかい、アマデラ。いまから二時間」

「そのとつぜんの二時間はなんなんだ」

「うしろ」

 マーガが指さすので、振り返った。

 なにもない。ジャングルの木があるだけだった。

 ただ、よく見るとマーガの指は斜め上をさしている。目をそっちに向けると、木の上になにかいた。

 でっかい蜘蛛だった。

 きっと、熊ぐらいある。

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