第十話

「これがBランクの冒険者証…所謂ギルドカードだニャ! 王都の冒険者とかは恰好付けてカードとしか言わないニャ。 すなわちウチのマスターは王都かぶれの恰好付けニャ」


「おぉ!!!」


驚きの声がついつい出てしまった。

田舎者だって笑われたりしないかな?


「これはランクによってギルドカードの色が変わるニャ。 Bランクは青ニャ。 その上は自分の目で確かめて欲しいニャ」


カッコイイ! 毎回色が違うなんて!

きっとギルドカード一枚一枚にかなりの価値が…!


「新人! 俺はFランクだから金属どころか木製だぜ!!!」


木製のギルドカードもあるんだ…。

湿気に弱そう? 加工してあるのかな?

じゃないと腐ってしまうような…。


「アンタは二番目に新人ニャ! しかもいつもサボってるニャ!」


サボってても冒険者で居て良いんだね…。

僕もサボっちゃおうかな?


「おい、お前はサボんなよ?」


見抜かれてた!?

と言うかこっちまで来てたの?


「サボったら皆に連れまわされてサボれない身体にされるニャ」


恐ろしくない? なんか悪徳商会みたいな感じなのかな!?

本で読んだ程度だけど、アレは怖いや。


「何考えてるかしらんがここのやつらは面倒見が良いんだ。 カード失効前に皆で協力して期限伸ばしてやってんだよ」


「や、優しさ…?」


「それ以外に何があんだよ…って言いてぇけど、手伝ったら皆酒奢ってくれるだろってやましい気持ちでやってんな…」


周りを見渡すと視線をそらしたからきっとそう言う事なんだろう…。


「ちなみにさっきのサボり魔は毎回奢らされるニャ」


それってぱわはら…って奴では?

本人がそれでもサボりたいって言うのならそれでもいいのか?


「ちなみにあの新人はサボり魔だけど単純な戦闘だけならこのギルドでも中々の上位に入るニャ。 サボらなければきっと昇格してるニャ」


ボロッカスに言われてるけど本人は何も気にしていない?

もしかして強靭なメンタルを持って…。

いや、そんな事は無いのかもしれない。 うん。

僕も修行はサボりたかったし。


「き、緊急!!! ガイロリュートの街周辺に大量の敵性存在の確認! 冒険者に大量の負傷者あり!!!」


「ちっ! よりによってガイロリュートかよ」


あそこは良い評判が無いのかな? 高ランク冒険者が多いって聞いてたけど…。


「魔物の脅威レベルが異常に高いそうです!」


「伝令感謝する。 おい、この中で動ける奴は居るか!」


しーんとするギルド内。

例え相手に恨みがあっても死んでしまって良いなんて事は無い。


「僕が行きます!」


「お前一人で行くってのかよ!」


「誰か着いて来てくれれば心強いですけど、僕には仲間が居ますから」


「それじゃ、俺が行くよ」


さっきのサボり魔の冒険者が声を上げる。


「良いんだな?」


「あぁ、当然だろう。 どんな奴であれ臣民が死んでいくのは見過ごせないさ」


「分かりました、第十二王子殿。 ここは貴方にお任せ致しましょう」


「おい、その名で呼ぶなって! 俺は家出してんだから!」


ルティナ王女殿下にバレなかったの凄いね。


「【天馬】 !!! 覚醒!!!」


僕のその一言で天馬の魔力が満ち溢れ、一回り大きくなったので二人、三人程度なら乗れるだろうという感じになってしまった。


「おいおい、覚醒って特定の奴しか使えねぇだろ…。 まぁ良いや。 殿下を頼むぞ」


「任せて下さい!」


そしてこの任務で様々な出会いをする事となるのは、今の僕はまだ知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る