第十三話-SIDE???-

ほう…。 竜の力を扱うか…。

あの人族の幼子の狙いは聖草か?

きっと目が見えないのだろうな。 ここからではしっかりと把握は出来そうにないか。


しかし、すまぬ人族の幼子よ。

人族よりも我が子の命の方が大切なのだ。

あわよくば君がこの地に辿り着かぬ事を願う我を恨んでくれ。


「う…う…」


「!? 大丈夫か!?」


「だい…じょう…」


くそ、どうしてこうなってしまったのだ。

古代竜と恐れられた我らですら乗り越えられぬ試練を与えるか、神よ!

一体何の恨みがあるというのだ。 我らは各地の守護を司っているだけだろう。


「大丈夫だ、我が愛しきアイスドラゴンよ」


もしも運命のいたずらだと言うのならば、この命と引き換えにでも…。

竜症など無くしてしまえばよいのだ。


そうして我はぐっすりと眠る我が子を見つつ聖草に目をやる。


知られては居ないだろうが、聖草は満開の花を咲かせた時こそ真の力を見せる。

しかし、それには膨大な魔力が必要となってしまう。

我は地脈に魔力を流し、それを聖草へと送り続ける。


そして我の魔力を吸い尽くす頃には満開の花が咲くのだろう。


「これで良い。 これで良いのだ」


守護神などと言われ人族を守り続けて来たがいつの日からだろう、我は恐れられる存在となった。

持つべき物はきっと力では無かったのだろう。

他の古代竜も同じような苦しみを抱くという。


それでも我らは護る事しか出来ぬのだから、これも運命なのだろう。

違う属性のドラゴンが生まれたという事は我の役目はここまでだったのか。

神よ、我が声が届くのならばこの子は恐れられぬ存在になる様に計らってくれ。

それ以外、我は望まぬ。 いや、望めぬのだから。


ここまで魔力を送り続けても蕾にすらならんか。

本当に全ての魔力を送らねば咲かないのだろう。

魔物にとって魔力と言う物は必要不可欠な物だが…。


氷竜よ、不甲斐ない親ですまぬ。


そうして居ると時間が過ぎて行く。


「この辺に聖草あると思うんだけどな…」


何故あの人族の幼子がここに居る!?

ちょっと目を離しただけだろう?

それよりもこのままでは聖草が奪われてしまう。


「人族の幼子よ、聖草を何故望む」


我は恐る恐る声を掛けてみた。

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