第十二話

走り過ぎたせいで大分疲弊してしまったが、周囲に比較的生物の少ない場所で野営の準備をする。

とは行っても簡単に作れる簡易テントや寝袋くらいしか無いのだが…。

今日はゆっくり休むか、見張りはどうしようか…。

ここで結界の魔道具を使ってしまうのも少し早い気がするが。


「気にしないで寝よう。 弱そうなのしか居ないし」


そうして寝袋へと入る。

簡易テントの為隙間風が若干ある様だ。 ここは山の近くだから余計に寒い。

だが眠れない程ではない。


少しは眠れた。

疲れは取り切れていなかったが、致し方ない。

軽く保存食を食べ、テントを魔法鞄にしまい込む。


「畳まなくても入るんだったらそれでいいか…」


とは思った物の他の物が取り出せなくなったりはしないのだろうか…。

まぁそこまで気にはならないだろう。

山が燃えてしまうんじゃ…と思って今は氷の竜の剣と、風の竜の剣のみ装備している。


いざ山へ!


と思っていたのだがどれだけ歩いても頂上には着かない。

流石に大きい山だ。


「ブモモモモモモモモ!」


豚の様な鳴き声なのに風の流れが人型の其れ。

オークか…。

こん棒などを持っているのか?


人間とは違いすぐに襲い掛かってくるオーク。

思ったよりも愚鈍で大振りな攻撃。

避けるのも容易だろう。


半歩ずれて攻撃を回避する。


ドォォォォォン!


「…は?」


馬鹿力にもほどがあるだろ。

衝撃波だけで若干吹き飛ばされたぞ。

これをもろに食らうのはまずいって事だけは分かる。 いや、身体中がこれを受けるなと警告を出す。


動き自体は愚鈍だからこそ俺なら勝てそうだ。


一気に距離を詰め、斬り裂く。


俺の身体では剣を扱いきれずに深手にはならない様だ。

しかし、確実に一撃が入った。

これなら行けるな。

足を止める事無く止めどない連撃を浴びせる。

血液を流し過ぎたオークはその場で倒れ込んでしまう。


「まだ息はあるのか。 すまないな。 俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ」


そう言ってオークの首をしっかりと刎ねる。

俺はまだ光を見ていないから死ねないんだ。 ごめんよ。

オークの死体はきっとボロボロになっているだろう。

このままにしてしまえば魔物が来てしまうかもしれない。


氷の竜の剣で凍らせておく。


力を込めて振るえばその竜の力の一部を扱えるのはいいね。


そうして凍らせたオークを後目に俺は歩き出す。

あれが溶けて他の魔物が来たとしてもその頃には俺は居ないからな。


そうして進んでいく俺を見つめる者が居たのに一切気付く事はなかった。

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