第4話 一般教養

全ての授業、一度も出席したことがありません。

出席は、毎年1回1月のテストの時だけです。

ちなみに、卒業時の私の通信簿はオールBでした(ABCDEの5段階評価)。

答案用紙には、いつも以下のように、日本拳法部の部歌を書いていました。


「握りしめたる拳に秘めた、おとこ根性の見せどころ。なにがなんでも勝たねばならぬ、それが道だよ拳法道、拳法道。」

「体育会日本拳法部 平栗雅人 押忍」


これでBです。

  とはいえ、部歌だけでは能がないので、人類学でも社会学でも統計学でも、新書や文庫で読んだことをベースにした自分なりの「〇〇論」のようなものを書いていました。統計学では「統計でうそをつく方法」というブルーバックス新書を読んでいたので、その内容に自分なりの考えを加えて、小論文にしました。

  結局、テストの設問には何一つ答えておらず、全面、自分なりの考え(+部歌)を勝手に書きまくっていただけでしたが、これも私の「自分勝手な日本拳法(ただただ、前へ出てぶん殴りまくるだけ)」と同じ、といえるかもしれません。

私の所属する日本拳法部はセレクションではありませんが、おそらく先生(教授)は、誤解して単位をくれたのではないか、と思います。

まあ、あの時代自体が、今と違いのんびりしていた、ということもありました。とにかく、部歌で単位がもらえたのですから、やはり「日本拳法をやっていてよかった」ということになるでしょう。

私としては、各教科の教科書代が高い(当時で、一冊3,000円くらいした)ので、それなら自分で、例えば人類学ならその類いの新書や文庫を買って読んで独学しようと思ったのです。私の趣味は本屋巡り(立ち読み)でしたので、在学5年間中、授業に拘束されない時間が多かったので、岩波・中公・講談社・ブルーバックス等々の新書を中心に、随分と本が読めました。

弁護士や会計士、学校教師の資格を取るといった、目的が定まっているのであれば授業も大切でしょう。しかし、私は社会心理学が専攻でしたので、「人を観察する」という勉強スタイルの方が好きで、特に在学中ほぼ全期間やっていた各種アルバイト(で経験した人間関係)が、結果的にその後の人生で役に立ちました。

また、大学に入った私は、それまでの小中高、そして予備校時代の「授業」というスタイルからようやく脱却できる、ということにその意義を感じていました。ですから、キャンパスのベンチや部室、電車や本屋での立ち読みで「知識や情報に触れる」ことを以て大学での学習にする、ということを義(よし:正当である)としていたのです。

〇 ハーバード大学生の勉強法

「大学における勉強」については、面白い話があります。

大学卒業後、就職した会社の駐在員としてボストンに住んでいた(1986年)頃のことです。

はじめに借りたアパートの近くに住むハーバードの学生と仲良くなったのですが、彼女の部屋にはオーストラリア関係の本が、絨毯を敷いた部屋に何十冊も転がっていました。   

彼女は「これからはオーストラリアよ。借金してでもシドニーにコンドミニアムでも買いなさい。2000年のオリンピックで跳ね上がるから。」なんて言う。

で、私は「ヘェ-、ハーバードというのは普通の人が知らない、そんなことまで教えてくれるんだ。」なんて感心していると、ブロンドの彼女はその豊かな胸を押し上げプルプル震わせながらこう言いました。「あんたね、大学の授業っていうのは教室だけじゃないのよ。」と。

ちなみに、なんでお前みたいな、英語も下手くそな醜男(ぶおとこ)が、そんな娘と仲良くなれたんだ、と言われるかもしれませんが、これもまた時代というものもあったのだと思います。

当時の日本は「Japan as Number One」なんて本が書かれたくらい、世界中から評価され「飛ぶ鳥を落とす」というくらいの、もの凄い勢いがあったのです。1988年に南米へ行った時も「Karate Kids」(1984年の米映画。2010年の『ベスト・キッド』はそのリメイク)なんていう、日本人が活躍する映画が大ヒットしていて、どこへ行っても「ハポネス(日本人)」と言って珍しがられ、話しかけられました。


  1980年代の日本とは、ここ10数年間の「在日韓国人政治家や官僚ばかりの(偽物の)日本」とは全く違う、もの凄いパワーと夢に溢れた時代だったのです。

天才ダンサーでもある大阪市立登美丘高等学校ダンス部元コーチ・アカネさんが「日本の1980年代のジャパンポップスに着目」されていたのは、その天性の直観力からの慧眼といえます。

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