第22話 エピローグ

仁とくるみは小さなログハウスに暮らしていた。

街からは一時間くらい離れた自然豊かな静かな場所だった。


くるみは77才になっていた。2年前に悪性リンパ腫が見つかり入退院を繰り返していた。

仁はくるみの為に獣医を引退して、田舎で一緒に暮らすことを決めた。


くるみはあまり長くない事を知っていた。

「仁、私こんなに痩せて、髪も真っ白になっちゃってごめんなさい」

「大丈夫だよ。今も変わらずくるみは可愛いよ」

と私の頭を撫でた。

「私は仁に出会えたこと心から感謝してるの。仁にこんなに愛されて人生を終えるなんて、こんな幸せ者はいないもの。ありがとう仁。私だけの素敵な王子様」

とかぼそい声で呟いて、笑顔で息を引き取った。


「くるみ?くるみ!ずっと一緒だって約束したじゃないか。くるみ!」と仁は号泣した。


絶望感に纏われたまま丸一日が経っていた。


電話が鳴った。橘からだった。

仁はゆっくり話始めた。


くるみが亡くなってから半年後、仁は縁側でくるみがギリギリまで書いていた手記を読んでいた。

僕達が出会ってから二人で愛を育んだ出来事がびっしり書いてあった。

仁はくるみの事を思い出していた。

「ああ、僕は誰よりも幸せだったよ。もう少しで会えるから待っていてくれ。くるみ」

とポツリと言った。


翌朝、橘が訪れた。仁は縁側で椅子に座ったまま眠っていた。橘は慌てて救急車を呼んで病院へ駆け込んだ。仁は胃がんで医者からはあと半年かもって一年だと言われていた。橘だけにはがんの事を伝えていた。何かあれば頼むと。

そして仁はくるみの元へ旅立った。

橘は弁護士から一通の手紙を渡された。



親愛なる橘へ


この手紙を読んでいるということは僕はもうこの世には存在しない。


一つだけお願いしたい事がある。

くるみが手がけた手記を出版してほしい。

くるみの望みを叶えてあげたい。

僕達の愛の軌跡だ。出版するにあたっての資金は用意してあるので使ってほしい。

こんな事、橘にしか頼めない。最後まで面倒をかけるが頼む。


お前は僕達のことを応援して励ましてくれた大切な親友だ。

橘、心から感謝している。ありがとう。


仁より



短い手紙だった。橘は涙が止まらなかった。

仁の願い通り本は出版された。



END

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恋愛に年の差なんて関係ない きんつば @ejiko

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