第20話 準備

翌日から少しずつ彼の家に荷物を運んだ。

母には6月に入籍と式をすることは伝えた。

とても喜んでいた。


今日は休日。仁は仕事なので夕方まで帰ってこない。

私は朝から引越しの準備をしていた。

あかりと彼氏が手伝いに来てくれた。

「お姉、いよいよ新婚生活だね。仁君王子様だから、お姉耐えられるかな?」

「最近は少し慣れてきたから、たぶん大丈夫」

と言ったけど不安はある。

「私は仁さんに会うの楽しみです。イケメン王子様だとあかりから聞いていて」

と遠山さんが楽しそうだった。

実家で腹ごしらえをして昼過ぎに出発した。


遠山さんがほとんど運んでくれた。さすがです。

中に入って整理していたら仁が帰ってきた。

「仁君、この度は姉と結婚していただきありがとうございます。あとこちら私の彼氏の遠山です。今後ともよろしくお願いします」

と抜け目ない挨拶をしていた。

「はじめまして、遠山 真といいます」

と名刺を渡した。仁も慌てて名刺を出した。

「尾崎といいます。獣医をしております。今後ともよろしくお願いします」

握手をしていた。


インターホンが鳴った。

お寿司の出前だった。仁が注文してくれていたようだ。みんなでワイワイお寿司を食べて楽しんだ。

片付けも大体終わったのであかりと遠山さんには

お礼を言い帰宅してもらった。

ルナは明日連れてくる予定。


「くるみ、今日から僕達の新婚生活が始まるね。

僕がずっと夢見てたくるみとの生活。やっと現実になったよ」

私を抱きしめ熱いキスをした。

そのままベッドで二人は夜を過ごした。


キラキラした朝だった。隣には彼がいてこれからは当たり前の景色になるんだと思った。

彼の寝顔を見ていたら

「くるみ、お目覚めのチューは?」と

トロトロの顔をして甘えてきた。

私は「仁、おはよう」と言って口づけをした。


「くるみ、僕幸せ過ぎて世界中に叫びたい気分だよ」と私を抱きしめた。

「朝から大袈裟だよ。まだ始まったばかりだからね、仁」彼は子供のようにはしゃいでいた。


朝ご飯を食べて、まだ私物で残っている物を片付けていた。

彼が来て「式と入籍は一緒の日がいい?」

「うん、仁に任せるよ」

「じゃ、一緒の日にするとして。式なんだけどくるみの希望は?」

「うーん、小規模で身内や友人だけで行うプチ結婚式みたいなのがいいかな。あっ!でも仁は一人息子だからお母様が許さないよね、そんな式」

と勝手な事を言ってしまった。

彼はクスッと笑って

「大丈夫だよ。僕もそうしたいと思ってたんだ。

母さんには何も言わせないよ。それと実は式場もう予約してあるんだ」

「えっ、いつから」

「去年の10月にはしてたと思う。あの時仕事じゃなくて式場探しをしててね。くるみは仕事だって疑ってなかったからバレずにホッとしたよ」

「そうだったの、全然気づいてなかったよ。だって東京の病院に行くって言ってた時期だったし」

「ごめんよ、驚かせて。ジューンブライドにこだわったからね」

「父が倒れた時は間に合わないかもって思ったけど、ギリ大丈夫だったしね」


「いつも一番に私の事を考えてくれていて

仁、本当にありがとう。私は仁に守られてばかりだね。でもこれからは一緒に進んでいきたい。

ずっと隣で仁を支えたい」

「くるみ」と彼は愛おしく私を見つめギュッと抱きしめた。


ルナを迎えに行くため二人は実家に訪れた。

「ただいま、ルナを迎えにきました」

と言って居間に入った。

両親は穏やかにお茶を飲んでいた。

「あら、くるみ。仁さんもいらっしゃい。ここへどうぞ」

「引越しの片付けはどうだ?」父が聞いてきた。

「うん、私荷物少ないから大体終わったよ」

「そうか。母さんとも話たが仁君がもらってくれて安心してるんだ」と笑顔だった。


「あの、お父さん。結婚式の事ですが6月9日に決まりました。その日に入籍もします。急で申し訳ありませんがよろしくお願いします」

と彼はかしこまった。

「随分急だな。あと3週間じゃないか。お母さん、私の燕尾服出してくれないか」

「実は去年から式場は予約をしておりまして。僕が独断で進めていた事ですみません」

「私も昨日知ったの。でもお父さん、仁は私のこと考えてした事だからわかってあげてほしい」

私は少しムキになっていた。

「ああ、わかっているよ。仁君ほどくるみを大切にしてくれる人はいないからな。お祝い事は早い方がいい。良かったなくるみ」

父は嬉しそうにしていた。


ルナは寝ていた。

「迎えにきたよ」と小声で言って、そっとルナを持ち上げた。ムニャムニャしていた。


彼と自宅に戻った。

ルナは何が起きたのかわからない様子で周りをクンクン嗅いでいた。


「これで家族が揃ったね。記念に写真を撮ろうか。ルナおいで!」と彼は嬉しそうに言った。

ソファに座って記念写真を撮った。

10枚以上は撮ったかな?ルナが動いたり、私が下向いたり、仁が立ってたり。

これでいいと思った。最後は必ずうまくいくのだから。


慌ただしいが結婚式の準備が始まった。

まず、今日は家族以外の友人や知人に招待状を出す。

来週は私と仁の衣装合わせがあるようだ。

あと最終の打ち合わせをして当日を待つだけ。


招待状は彼が作ってあるので、20人以内で収まるように言われた。

「私は5人くらいだから後は仁の方で決めてね」

「了解」


0時を過ぎる頃

「仁、終わりそう?私もう眠くて」

「うん、もう少しだから。くるみは先に休んで」

と言うと、私を抱えてベッドへ運んでくれた。

彼は私におやすみのキスをして戻っていった。


朝、ルナが私の顔を舐めている。

「ルナおはよう」

仁はまだグッスリ寝ていた。ルナはすかさず仁の顔を舐め回してた。

「くるみ?今日はどうしたの?いつもと違う」

と言って目を覚ました。

「あっ!ルナだったのか。もう、僕はてっきりくるみがしてるかと思ったよ」

ルナはキョトンと仁を見ていた。私は面白くてクスクス笑っていた。


朝ご飯を食べて、ルナのお手入れをして二人は出勤した。


私は会社に6月に結婚することを報告した。

仕事は続けていくのでお願いした。

同期の佐和子はびっくりしていたけど、後で説明すると言ってその場を立ち去った。


昼休み。早速佐和子が来た。

「佐和子、外で話そう」と屋上へ行った。

「いきなりびっくりさせてごめんなさい」

と謝った。

「あのね、彼氏いたの?まずそこからだよね」

と怒り気味で言われた。

「うん、一年前くらいから付き合うことになって、いろいろあって結婚することになったの」

「説明が簡単過ぎるでしょう。どこの誰?いくつか?職業は?どこで知り合ったとか?なんかあるでしょう」と興奮している彼女。

「たぶん驚くと思うけど、31才で職業は獣医。映画館で再会して彼から告白されてお付き合いしたの。これでいい?」

佐和子は目を見開いて、口を開けたまま絶句していた。

「くるみ、前世でどんな徳積んできたの?そんな事あるの?奇跡だわぁ。騙されてないよね?」

「うん、騙されてないよ。健吾にも同じこと言われたんだ」

「健吾さん、彼を知ってるんだ」

「うん、会社の設立パーティーで会ったから」

「それって、うちの社長も出席してたよね。後で聞いてみよう」彼女はニヤッとした。

「それで佐和子には招待状送ったから、よろしくお願いします。会社の人は佐和子だけだから内緒にしてね」「承知しました」


動物病院の朝礼で院長が仁先生の結婚を報告した。

仁からは

「結婚式には是非参加してください。よろしくお願いします」

「先生、おめでとうございます」と祝福を受けた。


橘が「いきなりだな。もう少し早く俺にだけでも言ってほしかった」

「ごめん、悪かった」と仁は謝った。

「あと、僕達の結婚式はお前の誕生日なんだ。悪いな。一条さんにも謝った方がいいか?」

「マジか。俺の誕生日にすることないだろう」

とキレ気味に言った。

「だから謝ってるだろう。絶対来てくれよ」

と橘の肩を叩いた。


今日は衣装合わせの日。私達と仁のお母様の3人で式場へ向かった。

お母様はハイテンションで私よりウキウキしていた。

「お母さんの結婚式じゃないからね。お願いだから静かにしててよ」彼が忠告した。

「仁、私はくるみさんの付き添いなんだから大丈夫よ。仁こそ気をつけてね。くるみさん見てデレデレしないでよ」とお互い言い合っていた。


3人は衣装室に案内された。

まず、ドレスを決めるように言われた。

お母様はあれこれと指示して5着選んでくれた。

彼は1着選んだ。私は着せ替え人形のようだった。

最後の1着。彼が選んだドレス。試着してお披露目した。彼もお母様も私に目を奪われていた。

私もこのドレスが一番好きだった。

彼の選んだドレスで決まった。お母様は少し悔しがっていた。

今度は彼の番だ。私のドレスに合わせるので3着が用意されていた。彼はどのタキシードも王子様のように素敵だった。係員の女性達からも声が上がっていた。最後はお母様が決めてくれた。


帰りにレストランで食事をした。

「仁、くるみさん。今日はありがとう。

私結婚式挙げてないから、とても楽しかったわ」

お母様は満足していた。

「父さんが僕に連れていってくれって」

「あの人、変なところ気がつくから嫌なのよ。

でもお礼言わないとね」と嬉しそうだった。


お母様を送って、私達は自宅に戻った。

ルナが大喜びで迎えてくれた。

もう、二人はクタクタだった。

招待状もほとんどが出席。あともう少し。


私はハーブティーを入れた。

ソファで私は彼に寄りかかって、彼も私に寄りかかっていた。ルナは彼に抱っこされて寝ていた。

ずっと続いてほしいと思う時間だった。

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