第13話 クリスマスとお正月

今日は彼が帰ってくる日。私はウキウキしていた。

一週間前なのにずっと会っていない感じがする。

昔、健吾とも数ヶ月だが遠距離してた時を思い出した。


彼がバスから降りてきた。少し眠そうな顔をしてた。

「仁、おかえり」

「ただいま、くるみ」と微笑み合った。


自宅に着いたとたん、彼は私を強く抱きしめた。

「会いたかったよ、くるみ」と囁いた。

「私も」

彼は何も言わず私をずっと抱きしめていた。

「今は僕の充電中。だからもう少しいい?」

私はドキドキしていた。


一緒にごはんを食べながら東京や病院の話を教えてもらった。

「仁、すごく頑張ってる。けど無理しないでね」

「まだ始まったばかりだよ。くるみの事考えると頑張れるんだ」とにこやかに言った。


私達はソファで寛いでいた。彼が私の肩を寄せて

「くるみ、今日はいいの?」

私はゆっくり頷いた。


私は彼に抱かれた後眠ってしまった。

ふと目が覚めた。隣に彼がいない。

書斎の明かりがついていた。


私はハーブティーを持っていった。

「仁どうぞ」

「くるみ、起きたの?嬉しいなぁ、丁度飲みたかったんだ」

私はまたベッドへ戻った。


小鳥の声が聞こえる。清々しい朝だった。

隣には彼がグッスリ寝ていた。

私はしばらく彼の寝顔を眺めていた。

「私だけの王子様」と呟いて。

彼は私に気づいて目を覚ました。

「くるみ、おはよう。今なんて言ったの?」

「なんでもないよ」

とはにかんで彼に口づけをした。

「僕はくるみだけのものだよ」

私は胸が熱くなった。



彼は週末は欠かさず戻ってきてくれた。

もう2か月半が経とうとしていた。

少し早いが今週末は二人でクリスマスパーティーをする約束をしていので、私は準備に勤しんでいた。


パーティー当日。私は彼の自宅で準備を整えていた。するとメールが届いた。仁からだ。

「急患で手術があるから戻れない」と。

私はその場にへたり込んだ。

仕事なんだから仕方がないと言い聞かせた。

だけど寂しくて涙が溢れ出して止まらなかった。


私はやけ酒のようにシャンパンやワインを飲んで

いつの間にかソファで寝てしまっていた。


「ただいまー、くるみ?」と彼が帰ってきた。

私は二日酔いでまだグルグル頭が回っていた。


「おかへりなさい。あれ?戻れないって?」

「ごめんね。手術終わったから夜行バスで帰って来たんだよ」

「朝なの?私ここへ寝ちゃったんだ」

「それより、くるみ。一人で全部飲んじゃったの?僕と一緒にパーティーだったはずなんだけど?」

と彼はにこやかに言った。

「ごめんなさい。私、やけ酒で飲んじゃって。まだグルグル回ってるのー」

ヘロヘロな口調で寝ていた。

「くるみー可愛すぎるよ」と言ってベッドまで運んでくれた。


私は頭が痛くて目が覚めた。隣には彼が寝ていた。

あれ?夢見たのかな?

うーん、おぼろげに記憶を辿って。

そうだ!お酒を飲んで…その後が分からない。

彼に淫らな私見せてないよね?やばい。どうしよう。彼に嫌われた?あー考えたら具合悪くなってきた。

私は彼を見つめてウルウルしていた。

彼が目を覚ました。

「くるみ起きてたの?二日酔いは大丈夫かい?

それにどうしたの、涙目で?」

優しい笑顔だった。

「昨日の事覚えてなくて。お酒飲んだことまでは記憶にあるの。その後が…」

「それに私大丈夫だった?酔って何かしなかった?嫌われる事してない?心配になって…ごめんなさい」とうなだれていた。


彼は私をギュッと抱きしめて

「嫌いになんかならないよ。むしろ可愛すぎて襲いそうになったくらいだよ。くるみは心配性だね。

明日は僕休みだから今日パーティーの続きしようか!」「うん!」

私はとても嬉しかった。


彼はノンアルコールのワインとシャンパンを用意していた。

チキンレッグにパエリアとフルーツやチーズの盛り合わせ。二人ははしゃいで楽しんだ。

彼も久しぶりに息抜きできた様子だった。

「くるみにプレゼントがあるんだ」

「私もプレゼントがあるの」

お互いに渡してせーので開けた。

私は彼にマフラーを、彼からは手袋をもらった。


「仁には元気でいてほしいの。風邪引いても看病に行くの時間かかっちゃうし。だから暖かいマフラーがいいと思ったの」

「凄く嬉しいよ。ありがとう」


「くるみは夏でも手が冷たい時があるから手袋にしたんだ。冷えは女性にはよくないからね」

「私も凄く嬉しい。心まで暖かくなったよ。ありがとう」

二人は熱いキスを交わした。

外は雪が降っていた。

私達だけのホワイトクリスマスだった。


自宅に戻るとあかりが来ていた。

「あかり、遅くにどうしたの?」

「仁君とデート?なんか肌潤ってるよ。

ああ、羨ましいよ。私なんか昨日彼に老けたって言われてさー。あんなヤツ、ぶん殴ってやったわよ。そうしたら別れようだって。もう散々。で実家に戻ってルナに癒しを求めていたところ」

「それは大変だったね。私でよければ話相手にどうぞ。あかりにはいつも助けてもらってるから」

「話が早い。じゃあ付き合ってもらおうかな」


ああ、すっかり寝不足だー。3時間は寝たかな?

今日は月曜日だから45才にはちと辛い。

でももう少しでお正月。もうひと頑張り。


会社の大掃除も終えて明日から一週間お正月休みだ。彼は5日間のお休みで明後日戻ってくる。

彼とゆっくりできるのが待ち遠しい。


あかりは彼氏と別れたので、私と仁と3人で初詣に行きたいと騒いでいる。

一年の計は元旦にあり。

だから晴れ着を来て初詣に行きたいと言い出した。


「仁君、お姉の晴れ着姿見たら何て言うかな?綺麗だよっとか言うのかな?私は初詣で運命的な出会いがあるかもしれないし。ねっだから着物着ようよ」

と盛り上がっていた。

「わかりました。私も着て行くから。それでいい?」

「ありがとう!母さんに着物用意してもらうね」


彼も両親と年越しをするようだ。彼は私としたかったが、お母様がどうしてもと譲らず彼が折れたようだ。


私も両親とあかりとルナで年越し蕎麦を食べていた。

除夜の鐘が鳴り始めた。

あかりと私は3、2、1

「あけましておめでとう」と叫んだ。

お互い良い年にしようねと約束した。


電話が鳴る。彼からだった。

「くるみ、あけましておめでとう」

「仁、あけましておめでとう」

「明日僕が迎えに行くから待っていて」

「うん、ありがとう。待ってるね」

「いろいろ話したい事あるけど明日のお楽しみにしよう。また明日」

「うん、楽しみにしてる。また明日」


天気も晴天。今日は元旦。初詣。

朝から二人の着付けで大忙しのお母さん。

髪もささっと結ってくれた。

おせちをのんびり食べているお父さん。

ルナはいつも通りいびきをかいて寝ている。

あかりは苦しくて大変と嘆いていた。

私はだから着物なんてよせばいいのにと思っていた。


彼が迎えに来てくれた。


あかりは一目散に仁に駆け寄って

「あけましておめでとうございます。今年も姉をよろしくお願いします」と挨拶していた。

「こちらこそ、よろしくお願いします。今日はお着物なんですね。お綺麗ですよ」

と彼に言われてあかりは舞い上がっていた。

私も彼の方へ歩み寄った。すると彼は

「くるみなの?凄く綺麗だ。これ以上僕をどうするつもりなの!」とろけそうな顔で言った。

「えっ!あのー気に入ってもらえて嬉しいです」

私は顔を真っ赤にして答えた。あかりの見てる前で恥ずかしいよ。

あかりは私を小突いて

「仁君って王子様だね」と小声で言った。

3人は賑やかに初詣に繰り出した。


すごい人で迷子になりそうだ。彼は私の手をギュッと握っていてくれた。彼はマフラーを巻いてくれている。嬉しかった。

私も手袋を履いているが、手を握る時は彼の温もりを直に感じたい気持ちになった。


やっとお参りの順番がきた。3人は神様にお祈りをして、おみくじを引いた。

あかりは小吉。私と仁は大吉だった。

あかりは小吉こそ良い年になると言って御守りをたくさん買っていた。

私と彼は絶対今年は良い年になると確信した。


自宅に戻り、あかりは仁にお礼を言って入っていった。私も着替えてから彼の自宅に行く予定だったのに、彼が私の晴れ着姿を両親に見せたいと言い出した。私は渋々OKした。

母に伝えて仁の両親の元へ向かった。


お母様が出てきて

「あら、素敵じゃないくるみさん。とても似合ってるわ。お父さんも来てちょうだい」と笑顔だった。

「おめでとう、くるみさん。とても綺麗だ。仁の事をよろしく頼む」と力強く言われた。

「あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」と挨拶した。


「仁。くるみさんに惚れ直したんじゃないの?

あなた達とてもお似合いよ。誰が見ても素敵なカップルよ」

お母様に言われて、とても嬉しかった。

会った時はどうなるかと思ったが、案外良い人だと理解した。

「母さん。僕の目に狂いは無かったでしょ?

認めてくれてありがとう」

と彼は嬉しそうだった。


両親と別れたあと、私は自宅に戻り急いで着替えた。母にはお泊まりする事を伝えて外出した。


「ごめん、おまたせ」と彼の車に乗った。

「晴れ着姿のくるみは最高に綺麗で気絶するかと思ったよ」

気絶って?嬉しいけどくすぐったいよ。

「仁が喜んでくれたなら私も着物着て良かった」

とニコリとした。


仁の自宅に着いた。

「やっと二人きりになれたー」

と私を抱きしめチュッとした。

「くるみ愛してる。僕の大切な宝物」

と耳元で甘く囁く彼。

強く抱きしめ熱いキスをした。

私は幸せな気持ちでいっぱいになった。


私達はテレビでやっていたホラー映画を見ていた。

私はホラーが大の苦手だ。彼は楽しんで見ていたので嫌とは言えず我慢した。

緊迫したシーンで携帯がピコンとなった。

私はびっくりして

「ウギャー」と叫んでしまった。

彼も私の叫びに驚いていた。

「ご、ごめんなさい」

「もしかして、くるみホラー苦手だったの?」

「うん」

「なんだ。言ってくれれば見なかったのに」

「仁が楽しんでたから言えなかった」

とポツリと言った。

「苦手な事はきちんと僕に伝えてね。これからずっと一緒に生きていくんだから」

「ありがとう、仁」

私は胸がジーンと熱くなった。


「お腹空いてない?」「うん、そうだね」

「おせちがあるけど、どうですか?」

「まさか、仁の手料理?じゃないよね」

「そう言いたいところだけど、母さんの手作りなんだ。二人で楽しみなさいって。あの人普段は勝手でワガママなんだけど、気の利いたところもあってさ。さぁ、食べよう」

私達はワインを飲みながら、お母様のおせちをご馳走になった。

「美味しい。お母様料理上手だね。私、料理あまり得意じゃないの」と落ち込む私。

「知ってるよ。くるみの料理で僕は満足だよ」

優しく微笑んだ。


「あのね。私は仁の喜ぶ顔が見たいの。だからお母様に料理を教えてもらおうかと今思ったんだけど大丈夫かな?」と真剣に言った。

「くるみ、僕のために嬉しいよ。母はきっと快くOKしてくれるよ」

と彼は嬉しくてしかたない様子で私を抱きしめた。


彼との楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。

もうこんな時間。夜中の1時になろうとしていた。

「仁、もうそろそろお休みしよう。このままだと私寝不足で老けちゃうよ」と冗談ぽく言った。

彼は笑顔で私をお姫様抱っこしてベッドへ運んだ。

「くるみ、今日は寝かせないよ」

彼に包まれて熱い夜を過ごした。


目が覚めたら、もうお昼になっていた。

仁はまだ寝てる。私はそっーと彼の方を向いて、

可愛い寝顔を眺めていた。

寝顔は本当子供っぽくて、たまらなく可愛い。

私は静かにキスをした。

「くるみ、もう一度して」と甘える彼。

「仁、いつから目が覚めてたの?」

と言いながら私はキスをした。

彼は嬉しそうに「僕は幸せ者だぁ」


私達は近くの百貨店の初売りに行くことにした。

たくさんの人で賑わっていた。

すると後ろから誰かを呼んでいる声がした。

「仁、おーい。仁こっちだ、おーい」

と手を振ってる人がいる。見ると橘さんだった。

彼は橘さんに駆け寄り

「おー橘。病院の事は父から聞いている。感謝してるよ、ありがとう。それより、東京に戻ってなかったのか?どうした?」

橘さんの隣には若い女性が困った顔で立っていた。

「一条さん?あれ?もしかしてお付き合いしてるのかな?」仁がニヤッとして言った。

「仁先生、勘違いしないで下さい。まだ、お付き合いはしていません。橘先生にどうしてもと言われて初売りに来ただけです」

と一条さんはキッパリ言った。

仁は「橘は凄く良いヤツだから、これからも一条さんよろしく頼むよ。橘の気持ちも少し組んでほしい。お互い良い年になるといいね」

と爽やかな笑顔で話した。

一条さんは顔を真っ赤にして

「わかりました。橘先生の事は私が責任を持ちます」と言って橘さんを引っ張ってどこかへ行ってしまった。


「彼女あんな感じだけど真面目で信頼できる看護師の一人なんだ。橘も女の見る目あるじゃん。あの子になら橘を任せてもいいと思う。なんか楽しみ増えちゃったなぁ」

と彼は嬉しそうに語っていた。

「そうだね。みんな幸せになってほしい」

と私は呟いた。

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