第5話 初デート

今日は晴天で清々しい。

私もスッキリした気持ちで朝を迎えた。

今日は先生、いや仁に返事をする日。


妹に待ち合わせ場所まで送ってもらう。妹には念入りに仁を紹介するようにお願いされた。


はぁ、少し早く着きすぎたかな。いつもスポーティーな服装の私だが妹の服を借りて女の子らしいスカートなんかはいている。

本当にこれで良いのか不安になる。久々のスカートで股が涼しいというか落ち着かない気分。


すると彼が車で迎えにきた。

「あれ、いつもと雰囲気違うね」

「うん、今日はデートだからおしゃれしてきました」と答えた。

彼は優しい笑顔で「可愛いよ」

うわぁ、恥ずかしい。まだ慣れない。私は顔を真っ赤にして車に乗り込んだ。


彼はいつも優しくて笑顔をたやさずイケメンで眩しい存在。私耐えられるかな。いや、頑張れ45才。


彼に「今日はどこに行きたいですか?」

と尋ねられた。

私は何も考えてなかったので

「えっ、どこといわれても…」

「じゃあ、僕の行きたいところでいいかな?」

「はい」と私は返事をした。


道中はたわいもない会話をしていた。

彼が「到着したよ」と車を止めた。


そこは一面お花畑だった。色とりどりの花が風に揺れて私達を歓迎しているように思えた。


私は思わず両手を広げて

「うわぁ、キレイ」と叫んだ。

彼も私の真似をして両手広げて

「キレイだね」と叫んだ。

二人はいっぱい笑って、写真撮って、散歩をした。


久しぶりに外で自然とふれあいながらのデートっていいもんだなと感じていた。彼も美しい自然とふれあうことで元気が出るのかもしれないと思った。


「今日は僕達にとって大切な記念日だね」

と彼が言った。私は

「まだ返事聞いてないのにどうして?」と答えた。

「断る気ならドライブなんて行かないでしょ。それにさっきデートだからおしゃれしてきたって言ってたしね」

ああ、もうバレバレじゃん。彼の方がずっと大人だわ。


彼は優しく微笑んで私の肩を掴み向き合って

「好きです、くるみさん。僕とお付き合いして下さい」と告白された。

私は「はい、よろしくお願いします」

と返事をした瞬間、彼にギュッと抱きしめられていた。「もう離さない」と耳元で囁かれた。


私はお花畑に囲まれて告白されて今最高に幸せだと実感した。

もう、私は彼に夢中なのかもしれない。

私は彼の事が好きになってしまったのだ。

たった3日で。


彼は近くのサンドイッチの美味しいお店へと車を走らせた。彼は鼻歌を歌いながら上機嫌だった。私はそんな彼を見て元気をもらった。


このお花畑は小さい頃、両親と見にきた大切な思い出の場所だったと彼は言っていた。

両親は別居しているが父親は院長だから職場が一緒で、母親は獣医を引退して彼と二人暮らしだったが口論になる事が多くて家を出て、今は一人暮らしをしているようだ。

彼は今年31才になるようで、母親からはお見合い写真が送られてきたり、病院で気に入った看護師を勧めてくると迷惑そうに言っていた。

そんな話を聞くと私で良かったのかと不安になる。


そしてサンドイッチ店に到着した。

前回とは違ってお腹が空いている私。席に案内されて二人向かい合わせに座った。やはり目線をどこへやっていいのやらウロウロしてしまう。


「くるみ、メニュー決まった?」と言われて


そうだった、決めなきゃと慌てて見る。

私は卵サンドとフルーツサンドのセットにした。

彼はカツサンドと卵サンドのセットにしたようだ。


彼はにこやかに私をじっと見つめていた。

そして、小さく「くるみは可愛い」と呟くのだ。

もう、私は恥ずかしくてムズムズして

「お願いだから仁やめて」

「やーだ」と子供っぽく言うと

「僕はくるみに夢中だよ」

ああ、仁はロマンチストなのか?

人前なのにこんな事平気で言うなんて私は少し戸惑っていた。

恋は盲目なんて言ったが今の彼がそうなのかもしれない。

だか、言われるとやはり嬉しくて女性ホルモン大量放出している。お互い支え合っていると思うことにした。


サンドイッチが来た。めちゃくちゃ美味しかった。

彼は私の食べてる姿が好きなようでニコニコして

「可愛い」

と言いながら食べていた。


彼にご馳走になったのでお礼を言い車に乗り込んだ。


私は彼に聞いてみた。

「私のどこに惹かれたの?」


彼は私をじっと見つめた。

「たぶん、一目惚れかな。くるみを見た時可愛らしい人だと思った。僕は君が泣いている姿を見てドキドキしたんだ。この人を助けたいし守りたいと思った。僕には初めての感情だったから。君に会えるのが楽しみでいつもワクワクしてたしね。くるみは運命の人だよ」

私は胸が熱くなった。

彼の頬にチュッとして

「私も好きです」とニコッと笑った。

彼の耳がみるみる赤くなって、とろけるような笑顔で私に言った。

「今度は口にお願いします」

私はそんな彼が可愛く思えた。


彼は少し無言だった。私もあえて話をしなかった。夕日が綺麗で眩しくて穏やかな時間が流れた。


彼は

「いつまでもくるみと一緒にいたい、絶対失いたくない」と言っていた。

私は頷くことしかできなかった。

今の彼は全力で私に向かってくる。受け止める事ができるようになりたい。ならなければ彼の気持ちに応えることができないと思った。


自宅まで彼に送ってもらった。

すると見張っていたかのように妹が飛び出しててきて彼に挨拶をしていた。

「ふつつかな姉ですがよろしくお願いします」

彼もびっくりした顔をして車から降りてお辞儀をしていた。

彼に「ごめんなさい」と謝って妹を引っ張った。

私に「また明日」と言うと車で立ち去っていった。


妹に「どうして出てきたの。後できちんと会わせたかったのに。仁もびっくりしてたよ」

と怒った。

妹はそんな事お構なしに

「凄いイケメンだね。それに仁って言うんだ彼。もう名前で呼び合う仲なの?お姉もまんざらでもないじゃん。あんな彼氏もう二度とできないよ。大事にしてね。両親には内緒にしておきます」

とニヤニヤして家に入った。


私は少し疲れ気味で家に入った。

ルナが大歓迎してくれた。私はルナに顔を埋めた。


お風呂に入って部屋に戻ると妹が待っていた。

明日朝自宅に戻るからとの事だった。

彼氏と仲直りしたようでこちらも一件落着してホッとした。


彼からLINEが届いていた。

今日のデート写真だった。私こんな笑顔してたんだーと思った。仁もカッコいいし可愛い。二人とも素敵な恋人同士のように写っていた。恋人?

イヤイヤまだそこまでいっていない。


彼からは相変わらず恥ずかしい愛のメッセージが届いているし、この恋の行方はどうなるのか楽しんでいこうとベッドに入った。

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