第4話 後押しされて
私は結局そのまま自宅に戻り、今日あった出来事を頭の中で整理してって無理。私の人生ここで確変か?
うーんどうしたらいいの?彼の気持ちは嘘ではなかった。だけど10才以上年上の私に何ができるの?
今は仕事はイマイチだけど自由で案外充実していて好きな環境なのに、それを壊して純愛に飛び込む。そもそも私は彼のこと好きになるのかな?
それに彼は私と結婚したいと考えていたらどうなるの?そうだよ、付き合ってみたら私のこと嫌いになるかもしれないし。今盛り上がってるけど私のおばさんぶりを知ってショック死するかも。
うぇーん、一人で考えても何もまとまらない。
そうだ。高校の友人で7才下の彼と結婚した理香がいたな。ちょっと相談してみようかな?
理香とは母の通院している病院の事務をしているのでたまに会うのだ。早速LINEで長文メールを送る。理香の返答を参考にしよう。
なかなか寝付けない私。ぐるぐる彼の顔が浮かんで眠れない。羊なんか数えても無駄。いつの間にか羊の顔が彼になっている。結局あまり眠れず朝を迎えた。
両親には顔が老けたと言われてショック。
まさか年下の男子に告白されたなんて間違っても言えない。
取り敢えず仕事に行こう。
職場でもげっそりしているけど何かあったのかと聞かれる始末。すっかり一晩で老けてしまった。
なんとか仕事を終えて帰宅。ルナが全身で喜んで飛びついてきた。もうルナだけで良いと思うほどヘトヘトだった。
明日は休み。少しゆっくりしよう。そして彼の事考えなきゃ。
理香のLINEが来ていたので恐る恐る開く。
彼女の回答はシンプルだった。
「くるみは彼のこと嫌い?彼はあなたに真剣に誠実に告白してきたんだよ。逃げては駄目。彼にしっかり向き合ってみたらどう?先のことなんて誰にもわからない。今をきちんと生きられない人に未来なんてないよ」
ちょっと厳しいが愛のある内容だった。
なんだか涙が出てきた。歳を重ねると涙もろくなるのかな。
ピコンとメールの着信音。見ると彼からだった。
「今、電話してもいいですか?」
えっ、返事聞かせてとかじゃないよね。まだ心の準備が出来ていない。
だけど理香の逃げてはダメを思い出し
「大丈夫です」と返信した。
彼から電話がかかってきた。ドキドキしながら
「はい」と出る。
彼は優しい声で
「ただ声が聞きたかった」と言った。
私は胸が高鳴った。こんな感情いつぶりだろう。
「あっ、何かお話があったのでは」と聞き直すと
「本当は君に会いたい。けど約束の日まで我慢する。だから声を聞かせて」と。
何だ、この王子様のような甘い声。ドラマに出てきそうなセリフ。私は完全に舞い上がっていた。
「声といっても…」
彼は「君のことを教えて」と言った。
「えーと、美山くるみ45才です。趣味は映画鑑賞で両親とルナの4人暮らしをしています。妹が一人いて彼氏と同棲中。バツイチ子ナシ。仕事は住宅の設計助手をやっています。このぐらいでいいですか?」
彼は「ありがとう。今日はこれぐらいにしないとね。また明日」と言い電話が切れた。
私はドキドキが止まらない。
なんだこれは!ラブコメドラマのヒロインかー!
ああ、今日も眠れなさそう。
これ毎日続くのどうしようと思っていたら、知らないうちに寝落ちしていた。
朝だと思ったらもう11時。ほとんど昼じゃん。若者みたいな生活してる。規則正しい生活しないと年なんだから体にこたえる。
ルナは私が起きないので母と散歩に出かけたらしい。
休日なんだけど、心がざわついて落ち着かない。部屋の掃除、洗濯しながら溜息ばかりついている私を見て父は何かあったのかと心配していた。面倒なので仕事のことにしておいた。
妹が突然帰ってきた。彼氏と喧嘩したらしく2〜3日居候させてと入ってきた。嫌な予感がする。妹は感の鋭い子で今の私の状況直ぐに気づかれそう。
そして夜になり妹は私の部屋にきて
「一緒に飲もう」と入ってきた。
本当は断りたかったが理由が見つからず、妹は彼氏の愚痴を聞いてほしいようだった。
いつも妹には助けられているから、こんな時ぐらい力になりたい。ビールが無くなったので下に取りに行って戻ったら、妹がやけにニヤついてこちらを見ていた。
もしかしてと思い携帯を見たら彼から
「今、電話いい?」と来ていた。
妹は「彼氏出来たんだ。いつからー」と聞いてきた。
「うーん、まだ付き合ってないけど。年下でたぶん10才以上違うと思う。どうしようか考え中なんだ」
と答えると、妹は食い付き気味に
「考え中ってなによ。そんな45才のおばさが考えたらダメでしょう。そもそもOKしか答えはないんだよ。お姉はフリーなんだから年齢なんて関係ないし付き合いなよ。恋愛できる時期なんてもう少ししかないよ。もったいないなぁ。お姉は若く見えるし10才くらい問題ないよ。いけるいける」
と励まされた。
私は妹を励まさなきゃならないのに逆に妹に背中を押された。
私は彼に「いいですよ」と返信した。
彼からの電話に「はい」と出る私。
彼はいきなり
「今日からくるみと呼んでいい?」と言ってきた。
「えっ!」
「ごめん、いきなり過ぎたね。くるみちゃんにする?くるみさんがいいかな?」
「先生の好きな呼び方でいいですよ」と答えた。
「僕はくるみが気に入ってるんだけどいい?」
いつもと同じ甘い声で私はドキドキする。
「いいですよ」
「僕のことも先生じゃなく名前で呼んで欲しいんだ。
「えっあの、先生じゃダメですか?」
と私は焦って言ってしまった。すると
「僕は名前で呼んでほしい。だから
甘え上手な先生。私はドキドキが止まりません。
「わかりました、
「ありがとうくるみ。また明日」と電話は切れた。
私はすっかり彼のペースに振り回されている。
ドラマのヒロインみたいに45才になってこんな思いをするなんて。神様のイタズラなのか、友人や妹の言う通り今を楽しもうと思った。
明日は彼と会う日である。
私の心は決まっていた。私は彼にきちんと向き合おうと思うのだった。
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