第3話 告白
最近できた近くの喫茶店に決めて足を進ませた。
またも何を話そうか迷走してしまう。先生も無言。どうしようか、やっぱりお断りしようかと思った時
「甘いもの好きですか?」と聞いていた。
私は大の甘党だ。特に小豆あんが大好きである。もちろん洋菓子も好きだが和菓子の方がうーんと好きである。
「はい、和菓子が好きです」と答えた。
先生は少し困った表情をしたが
「これから行く喫茶店に有名なパンケーキがあるようなのでどうかと思って。僕は甘いものがそんなに得意ではないので、あくまでも聞いた話ですがとても美味しいそうです」
「そうですか。私パンケーキ好きですよ。そういえば友人も美味しいと言っていたような気がします。でも先生は甘いもの苦手なのによかったのですか?」
「僕は大丈夫です。あなたが喜んでくれるならそれでいいのです」
えっ、今なんて言ったの?私が喜ぶならって。今私に何が起きているか考えないことにした。
カランコロン
「いらっしゃいませ、2名様ですか?」
「はい」
「こちらへどうぞ」と案内された。
席に座った瞬間、現実が私に襲いかかってきた。おばさんがイケメン男子と喫茶店。シュールだよなぁこの光景。違和感ありまくり。店員さんの視線も感じる。
私はソワソワして落ち着かなかった。パンケーキどころじゃない。ビビるな私。そもそもOKしたのは私なのだから。
おすすめのパンケーキとコーヒーを注文した。先生はパスタを注文したようだ。
向かい合わせで目線をどうしたらいいか分からず窓の景色を眺めていたら
「迷惑でしたか?」と聞いてきた。
「いえ、迷惑ではないです。ただ私みたいなおばさんが先生のような若い人と一緒に食事だなんて少し戸惑っているだけです」と答えた。
先生はすかさず少し強い口調で
「美山さんはおばさんではないです。むしろ可愛らしい人だと思います」
何?今なんて言ったの?可愛らしいって。顔が火照ってきた。私は気をしっかり持てと自分を励ましてきっと何かの罰ゲームだと頭をよぎった。
「先生、私は45才のおばさんです。確かに実年齢よりは若く見られますが、先生とは10才以上も上ですし勘違いするようなこと言わないで下さい」
と私も強い口調で言い返してしまった。
先生は少し悲しい顔で
「すみません。でも勘違いでも冗談でもありません。僕の感じたままをお伝えしただけです」
私はどう接していいのか戸惑っていた。
変な空気が流れる中パンケーキとパスタがテーブルに並んだ。
食べたい気分ではなかったがパンケーキを口へ運んだ。
フワフワでしっとりしたパンケーキ。一口食べて気分上昇。すっかりパンケーキに夢中になり食べていた。その姿を見て先生はクスッと笑って
「やっぱり可愛いですよ」と。
少し沈黙があった。先生が真面目な顔をして
「僕とお付き合いして頂けないでしょうか?無理を承知で言っています。付き合うかどうかは3か月お試しで付き合ってから決めてもらって構いません。どうでしょうか?」
私は口をポカンと開けて、ラブコメの主人公にでもなったのかと思う瞬間だった。
私は深呼吸して
「えーと、なぜ私なの?私は年上ですし貴方には若い方が良いと思うし、そもそも私と付き合っている場合じゃないと思いますよ」と冷静に答えた。
先生は苦しい表情をしてうつむき加減で
「僕は今まで本気で人を好きになった事がないのです。たぶん僕の初恋はあなただと思うのです。病院で初めて会った日からあなたの事ばかり考えてしまっているのに気がついた。けど診察も終わりあなたに会えない毎日は苦しくて行き場のない気持ちが溢れそうになっていた。このままでは駄目だと外に出て映画館に足を向けました。そして、そこにあなたがいた。僕は神様が会わせてくれたのだと思いました。」
「だから今日は絶対あなたを失いたくないと少し強引だと思いましたがお誘いしました」
私が初恋の相手?この状況はどうしたらいいの?
信じられないことばかりで私はまた深呼吸をした。
彼の気持ちはしっかり伝わってきた。
だが少し考えさせてほしいとしか言えなかった。彼の大切な時間を私が奪っていいのかと。
彼は頷いてくれた。その代わり連絡先を教えて欲しいと言われアドレスと電話番号を交換した。休日に会う約束をして別れた。
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