第7話・表裏
今回はお試しとして「」前にキャラの名前をつけないで買いています、どっちの方がいいんだろうか...
ー
みんなはカーストという言葉を聞いてどんなことを思い浮かべるだろうか、階級?地位?もしかしたらそもそもカースト制度って何?と思う人もいるかもしれない
「やっぱりかっこいいよねぇ〜悠真くん!」
「うんうん!この前美術室で隣になったんだけどさ、その時に[絵うまいね]って褒めてくれたんだ〜!」
「えー!?ずるーい!!」
ちなみに、僕がカーストと聞いて真っ先に出てくるのは学校のクラスだ、上位層は楽しくワイワイみんなで盛り上がり、そうでないものは羨ましいという感情を孕んだ目で見るか、もしくはそもそも見もしないようにするかのどちらかだろう
「って言われてるけど、そこんとこどうなの、悠真」
「……俺に聞かないでくれよ…」
そのクラスの山でトップを走り抜ける男、宮原悠真は、机に突っ伏し、寝たふりをしながら小さな声で僕の言葉に答えた
「あの様子じゃ、すっかり舞い上がってるみたいだけど」
「…まぁ、言ったよ、うん、だって上手かったし」
「悠真のそういうとこ、本当すごいなって思うよ」
「だって苦手は克服したいじゃんか…事が事だし、いつまでも避けてたら申し訳ないっていうか…」
決してモテようとしているわけじゃないのはわかっているし、悠真の優しさはその性格から来ているものだ、裏がないのは分かりきっていた…だからこそ悠真は人気者になってしまったのだけれど
「でも、一歩間違えたら女たらし扱いだよ、それ」
「それだけはご勘弁をぉぉぉぉぉ……」
さらにズーンと悠真を取り巻く空気が重くなる、ちょっといじりすぎただろうか…
「あっはっはっ、まぁまぁ、悠真が女ったらし扱いされてるのなんて今更だよ〜」
「ぐはっ!?」
「あ、怜」
「やっほー、2人ともー、なーにこそこそ話してんのさっ!」
サラッと悠真にクリティカル級の矢印が突き刺さったように見えたのはきっと僕の幻覚だろうと信じて、やってきた怜を入れ、僕たちは3人で話し始めた
「イケメンって言えば、うちのクラスには悠真がNo. 1だけど、隣のクラスにもう1人イケメンいるよね!」
「あ、あぁ、栗本だろ?」
「そうそう!栗本和也くん!」
「栗本和也……あぁ、あの爽やかイケメンの」
栗本和也という名前で頭をフル回転させると、なんとかその栗本和也の容姿が浮かんできた、確か女子生徒の中で悠真派と同じくらいの人数のファンがいる、悠真とはまた違ったタイプのイケメンだ、ちなみに誰が描いたのか宮原悠真×栗本和也の薄い本がこの学校で出回っているという、正直話を聞いた時は失神しかけたがなんとか悠真の耳に入らずにここまでこれている
「っていうか、俺はそもそもイケメンじゃなくて良いんだよ別に」
「いやー、普段のアレでそれは無理があるよ?悠真」
「まぁまぁ、怜、そこらへんにしてやってよ……そろそろ悠真が死ぬ」
「あら、やっちゃったかな」
「最初からえぐいダイレクトアタックかましてたけど?」
怜は思ったよりも物事をそのままズバッと、しかも無意識に伝えてしまうところがある、ぜひ他の人のところではやらないでほしい癖だ
「蒼くん的には、悠真みたいなモテモテになりたいのかな?」
「あはは、健全な男子高校生ならそう答えてたかもね、でも僕、恋愛ごとにかまけてる暇ないからさ」
「へぇ〜ストイックだねぇ」
主に君達の相談に乗ったり君たちが悠真の一言でピリついた時にその空気を緩和させるっていう精神が擦りにすり減っていくことしてるからなんですけどね
「まぁでも、蒼くんってフツメンだし、優しいからきっと蒼くんのこと好きな女の子もいるよ!」
「それ、褒められてるの?それともバカにされてるの?」
イケメンがイケてるメンだとして…フツメンは普通のメン……
「ん?褒めてなくない?」
「まぁフツメンも意外といないものよ、その点で言えば褒めているんじゃないかしら」
椅子に座っていたからか、突然頭の上から声が聞こえてきた、振り向くと学校指定のカバンを持って立っている紅音さんが僕らの輪の中に混ざっていた
「紅音ちゃんおはよー」
「おはよう怜、悠真は…あー」
怜のクリティカルストライクを受けて撃沈した悠真を見て紅音さんが全てを悟ったように呟く、同情の視線を送るように悠真を見つめていた
「蒼くん、だいたい察したけど、一応聞いておくわ、また怜?」
「また怜」
「またってなにさー!?」
またなものはまたなのだから仕方ない、回数こそ多くないが、怜の鋭い会心の一撃は何度も悠真を貫いてきたのだ、しかもそれでいて無自覚なのが末恐ろしいところ、ちなみに僕も何度かその被害に遭っている
「素直なのは怜の良いところだけど、素直すぎるのも考えものね……」
「だよねー…」
「なんなの2人してもー!」
「どうしたの?怜、そんなに怒って」
デジャビュ、というわけではないが、先ほどと同じようにもう1人のクラスメイトが僕たちの輪の中へと
「あっ、由紀ちゃん!」
「わっ……」
怜が勢いよく由紀さんに抱きつく、すりすりと懐きながら由紀さんに甘えている怜、どうやら寂しかったらしい
「どうしたの?……怜……」
「あのね、2人がね、私のこといじめるの」
「ちょっと待った」
「……2人とも…ダメよ?怜をいじめちゃ……」
「…は、はい、すいませんでした…」
「ご、ごめんなさい……」
そう言われると僕は何もいえずに謝るしかなくなってしまう…なんというか、朝から相変わらず騒がしいというか
「……?悠真、どうしたの?…蒼くん、いつもの?」
「……いつもの」
「……ごめんなさい、蒼くん、紅音さん、私が誤解していたわ」
「由紀ちゃん!?」
完全に味方がいなくなった怜、それでも由紀さんは怜を抱きしめて背中を撫でている、その姿はさながら母親のようで、今の彼女を見ても、[氷の女帝]なんていう人はいないだろうなと、そんなことを思ったりもした
「どうして…こんなことになったの?」
「あぁ、実は、僕と悠真と怜の3人で、イケメンがどうとか、同級生からの人気がどうとか話してて」
「それを思いっきりオブラートに包むことなく悠真にぶつけてしまったのね……彼…女の子人気すごいもの……」
由紀さんがいると話がスムーズに繋がるなぁ……由紀さんは前々から、話をまとめるのに長けている、それに察する能力も高いため、こういう時にいてほしい存在なのだ
「イケメンがどうとかって?私はまだよくわかってないのだけど」
紅音さんがそんなふうに僕に質問をしてくる、僕は別に隠すほどのことでもないと判断したため、そのまま話すことにした
「隣のクラスの、栗本和也って人いるじゃないですか、あの人も悠真とは並ぶくらいのイケメンだよねって話です」
「あー!そこから悠真が[俺はそもそもイケメンじゃなくて良いんだよ別に]とか言い出したんでしょ?」
「流石よくわかってらっしゃる」
一言一句違わず同じことを言われるとどこかで聞いていたのではと思ってしまうが、それくらい悠真はわかりやすいのだ
「栗本……和也……」
「?由紀さん、知ってるんですか?」
珍しく由紀さんが反応した、というか、体が少し震えているみたいだけど……
「……ううん、知らないわけじゃないけれど……もう解決した話…それに……」
由紀さんは、ちょっと言いずらそうにして、横を見たり下を向いたり、でも、頬を赤らめながら、その言葉を紡いでくれた
「私は、みんなのおかげで……もう一回、人を信じたいって…思えたから…だから、平気」
「由紀ちゃん……!」
「由紀……」
怜が感動でさらに由紀さんに抱きつき、紅音さんは由紀さんの頭を優しく撫でている……その行動はきっと、不安を感じてしまった由紀さんを落ち着かせるためだ
(よかったね、由紀さん……)
彼女に何があったのかはわからないけれど、でも、今の彼女には、頼れる仲間が少なくとも4人はいる、それを由紀さんも再確認したのか、彼女は嬉しそうに笑っていた
ちなみに、クラスのほとんどの男子がなぜか鼻血を出しながら倒れていた、田中はその血で、[キマシタワー]と書いていた……なにそれ?
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