第6話・担任
さくら「ふわぁぁぁ〜……」
蒼「さくら、ほらしっかり起きて」
さくら「だって〜」
いつも通り眠そうにあくびをしながら登校するさくら、毎日しっかり7時間寝てるはずなのになぁ……さくらが朝に弱いのはもう慣れっこだけど
さくら「お兄、おんぶして連れてって」
蒼「いや無理だから……」
バリバリ運動ができる悠真ならできるかもしれないけど、中学時代からずっと文化部で運動神経がまるでない僕じゃ無理、筋力が余裕で足りない
悠真「おーい、蒼ー!」
蒼「あ、悠真」
さくらとそんな会話をしながら歩いてると、後ろから悠真がやってきた、いつもは大体先に学校に着いているのに、珍しいな…
悠真「うぃ、今日は一緒に登校だな」
蒼「珍しいね、普段は先に学校に着いてるのに」
悠真「いやぁ、今日は朝練の助っ人頼まれなくてさ」
朝練の助っ人って何……?
悠真「お?さくらちゃん、おはよう」
さくら「おはようございまふ…ゆうませんぱい…」
悠真「相も変わらず眠そうだな…」
蒼「そうなんだよ……低血圧なのかな」
さくら「んぬー…」
くしくしと目を擦るさくら…クラスでもこんな感じなんだろうかと思うと、少し心配なのである……
ー
悠真「うぅ……」
蒼「悠真からしたら、もう毎日がお化け屋敷だね…」
女性恐怖症になったことがないので、僕にはよくわからないけれど、学校に来るたびに毎回のように悠真は疲弊しきっている……学校の授業よりこっちの方が深刻なんじゃなかろうか
?「ほーらお前らー、席につけ〜、ホームルーム始めるぞ〜」
蒼「あ、先生来た」
悠真「ん……?」
悠真が机に突っ伏した状態から頭だけ動かして前を見る、先生が来たのをその目で確認して体を起こした
?「出席取るぞー、いないやついるかー?」
「彩ちゃん先生!緑川さんがいません!」
?「彩ちゃん言うな?我教師ぞ?先生ぞ?」
僕たちの担任の先生であるあの人は白谷彩花(しらたにあやか)、ノリが良く、また真面目すぎることもないため、男子生徒の中で話題の美人化学教師だ、クラスのみんなからは彩ちゃん先生と呼ばれて親しまれてる、本人はそのあだ名を認めてないけど
彩花「にしてもまた緑川か…あいつはもう遅刻常習犯だな…」
白谷先生が出席簿と書かれた物に何かを書き込んでいる…緑川って、怜のことだよね……
蒼「怜、また寝坊したのかな…」
悠真「べ、別の理由かもしれないぞ?多分」
蒼「まぁ確かに、怜は優しいから道端で困ってる人を助けて遅刻とかしてそうだけど……」
彩花「そこー、ホームルーム中は私語を慎みなさい」
「「あっ、すみません!!」」
彩花「それじゃ、まずは朝の連絡事項から話して行くぞ〜、えっと、なんだっけ」
相変わらず適当だ…
ー
彩花「それじゃ、これでホームルームを終わります、それと、宮原と小野は昼休みに、弁当を食べ終わった後でいいから私のところに来なさい」
悠真「は、はい」
蒼「わかりました」
先生に呼び出されるとなると、どことなく説教されるのではないかと身構えてしまうが、決してそう言うわけではなく、少し聞きたいことがあるといった感じだ、少なくとも心当たりはない
悠真「俺たち、なんかやらかしたか?」
蒼「……強いて言うなら、ホームルーム中に喋ってたことじゃない?」
悠真「えー、それで怒られるか……?」
蒼「それだけでわざわざ呼び出したりしないでしょ、僕だけならともかく、悠真は成績も優秀だし、心当たりがないならそんなにビビることないと思うよ」
悠真「そう?……ま、パッと出てこないし…出て…出て……うん…」
蒼「授業態度では怒られるかもね」
悠真「げっ……や、やっぱりそうか…?」
毎日のように寝てたらそりゃそうなるでしょ
悠真「……テストの点は良いんだけどな…」
蒼「逆に寝てて成績下げてるの気がついて?」
そういうと、悠真は[いやだって授業退屈で眠くなるし……]と呟いた…頭が良い人には、そりゃ退屈に感じるだろうね……
怜「すみませーん!遅れましたー!」
蒼「あ、来た」
彩花「おー緑川、バリバリアウトの遅刻だが、何かあったのか?」
怜「寝坊しました!」
彩花「3回目の遅刻だから1欠席な」
怜「そんなぁ!?」
この学校って、3回遅刻すると一回分の欠席扱いになるんだよね…どこも同じなのかな…?
紅音「怜って、本当に抜けてるわね…」
悠真「って言うか、遅刻3回して1欠席扱いを本当に受けるやつ初めて見た…」
蒼「僕も……それじゃ、そろそろ行くよ」
悠真「おう、俺らも授業の準備するか」
紅音「そうね」
そうして僕は教室を出る、僕は理系、悠真と紅音さんは文系、うちのクラスは理系よりも文系の生徒の方が多いため、理系の生徒は数学や物理、化学の授業を受ける時には教室を移動することになる
蒼「たしか……数学だから、選択B教室かな、2時間目は科学だから……っと」
筆箱と数学と化学の教科書やノートを持ち、教室を出る、理系は教室移動が多いため、1時間目と2時間目が移動教室なら教室に戻るほうが面倒くさいのでわざわざ次の授業の教科書を持って行ったりもする
由紀「蒼くん」
蒼「あ、由紀さん」
名前を呼ばれたので振り返ると、僕と同じように教科書ノートと筆箱を持った由紀さんがいた、一応、由紀さんも理系であることは知っているのだけど……
由紀「せっかくだし、一緒に向かいましょう?」
蒼「あ、はい、わかりました」
別に断る理由もないので、由紀さんと一緒に選択教室まで向かうことにした
由紀「なにかしたの?」
蒼「え?」
由紀「朝、彩花先生に呼び出されていたでしょう?」
もしかして、心配してくれているのかな……
蒼「別に、僕も悠真も何かやらかした記憶はないんですけど…」
由紀「……そう、なら良いけど、悠真も大変ね」
やっぱり悠真のことが気になるのかな…?
ー
授業を終えて昼休み、僕と悠真は怜と紅音さんと由紀さんの3人にことわって、2人で職員室まで来ていた…お弁当はちゃんと食べてきた
悠真「なぁ、本当に行かなきゃか…?」
蒼「いや先生直々の呼び出しだし、普通に行かなきゃダメでしょ」
悠真「そりゃそうだけどさ…」
蒼「ほら行くよ」
悠真「わかった…」
職員室のドアを3回ノックして、扉を開ける
蒼「……失礼します、2年B組8番の小野蒼です、白谷先生に用があって来ました、失礼します」
頭を一度下げてから職員室内へ入り、白谷先生の元へ、先生はパソコンに向かって何かを打ち込んでいた
彩花「あぁ、悪いな2人とも、わざわざ来てもらって」
悠真「い、いえ、そ、その、どどど、どういったようけんで?」
蒼「落ち着きなよ…」
やっぱり全然ダメだ悠真…悠真の女性恐怖症は、先生に対しても発揮されるらしい
彩花「あぁ、宮原に少し確認したいことがあってな、それから小野には頼みたいことが」
悠真「確認したいこと?」
蒼「頼みたいこと?」
彩花「あぁ、まずは小野の方から、準備室にこの前回収したワークがあるから、それを教室に持って行ってみんなに渡しておいてくれないか?」
蒼「あー……わかりました」
彩花「頼んだぞ、化学係」
蒼「わかりました、失礼します」
悠真「え、蒼、ちょっ」
悠真を置いて職員室から出る…ワークというのは、前回の授業で先生が進行状況の確認のために抜き打ちで回収した物だ
蒼(でも、なんでわざわざ職員室に呼び出してまで言ってきたんだろ?)
それくらいなら普通に朝のホームルームで言ってくれても良いのに……まぁ、考えてもわからないし、とりあえずはワークをとりに行くことにした
ー
彩花「ふぅ……待たせて悪いな、宮原」
悠真「あいやいや、ベベベベベつに…」
彩花「それで、今回の本題なんだが……」
悠真「……え……?」
ー
蒼「ぐっ……普通に重い…!」
全員分のワークを一度に持つと結構無理がある、特に運動をしているわけでも体が鍛えているわけでもないから普通に腕が震える
蒼「あ、悠真だ」
教室へ向かって辿々しく歩いていると、悠真が職員室から出て来た
蒼「おーい、ゆう……ま…?」
悠真「……」
手伝ってもらおうと悠真を呼ぼうとすると……彼は深刻な顔をして俯いていて…そんな彼に僕は話しかけることができなかった
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