第39話 Cランクが一人で来るんじゃねぇよ
30%の税金を引いても、報酬は200万ゴールドを越えていた。
「こんなに?」
「ゴブリンキング一体で100万ゴールドの報酬となりますからね!」
「えっ、すごいな、ゴブリンキング。ただのゴブリンは五千ゴールドなのに……一体で200体分?」
「なにせ無限にゴブリンを生み出す凶悪な魔物ですから! 放っておいたら、200体どころじゃないですよ! それから捕まっていた冒険者たちの救助をしていただいたことも、プラス査定されています!」
どうやら冒険者の救助というのも報酬になるらしい。
「マジか。捕まっててくれてありがとうな」
「「「あまり嬉しくないお礼……」」」
リゼ、マーナ、ロロの三人娘が思わず苦笑する。
ちなみに査定中に白菜から着替え、今は普通の服を着ていた。
と、そこへ。
「がっはっはっは! 聞いたぞ、ルイス! いきなり大活躍だってな!」
大きな笑い声を響かせながらやってきたのは、サブギルドマスターのバルクだった。
すぐ後ろに専属秘書のミレアもいる。
「やっぱこのオレの目に狂いはなかったってことだな!」
「サブマスではなく、紹介してくれた知人の方の先見がすごいのでは?」
「そこは伏せておく方向で頼むぜ?」
「手柄を独り占めする気満々ですね……」
ウィンクしてくるバルクに呆れるミレア。
「あと、おじさんのウィンク、吐き気がするほど気持ち悪いのでやめた方がよろしいかと」
「もうちょっとオブラートに包んでくれねぇかな!?」
まったく忖度しない専属秘書に大声でツッコんでから、バルクはルイスの方に向き直って、
「お前さんが活躍してくればしてくれるほど、オレのこのギルド内での評価がうなぎ上りになるからな! ぜひ頑張ってくれよ! がっはっはっは!」
豪快に笑いながら去っていった。
ミレアは「頭の悪いサブマスで申し訳ありません」と言い残してから、バルクの後を追う。
「……何だったんだ?」
ゴブリンキングの巣穴を見つけたことで、いきなり大金を稼げた初日。
だが運が良かったお陰だと気を引き締め、その翌日もルイスはミスリルの鍬のための資金を稼ごうと、冒険に出ていた。
「ここにグレートボアがいるはずだよな」
元々は昨日、挑もうとしていた『エンヤル沼地』のグレートボア狩りである。
一体討伐につき50万ゴールドなので、目標の500万ゴールドを達成するためには、ほぼ八体倒せばいい計算だ。
足場の悪い沼地だが、土を自在に操れるルイスは、土で足場を作って沼の中も真っ直ぐ進んでいく。
だがなかなかグレートボアが見つからない。
「畑には頻繁に来てたんだが、いざこっちから探すとなるとなかなかいないな。っと、そうだ。だったらこいつを使えば」
ルイスが収納から取り出したのは、巨大なサツマイモ。
グレートボアはこのサツマイモを好み、よく畑に姿を現したのである。
そのサツマイモをグレートボアを誘き寄せるための仕掛けとして、置いておくことにした。
と、そのとき。
「……ん? もしかして先客か?」
冒険者らしい集団を発見するルイス。
彼らもグレートボアを求めて、この沼地に足を運んだのかもしれない。
「おい、あんた、ここで何をしている!?」
そのうちの一人がルイスに気が付いて怒鳴ってきた。
「この沼地は魔物も出る危険な一帯だぞ!?」
「もしかして農家が迷い込んじまったのか?」
「いや、迷い込むような場所じゃねぇだろ」
どうやらルイスの姿を見て、一般人だと勘違いしてしまっているらしい。
「(リゼたちにも勘違いされたし、もうちょっと冒険者っぽい格好にした方がいいのかもな……)」
そんなふうに思いつつ、ルイスは誤解を訂正した。
「いや、こう見えて俺は冒険者だ」
「なに? 同業者なのか? だが、たった一人じゃ危険なのは一緒だぞ? なにせこの沼地に棲息するグレートボアは、Bランク冒険者なら三人、Cランク冒険者なら十人は必要な強敵だ。俺たちもこうして三つのパーティが合同で討伐に来ている」
彼らは全員がCランクの冒険者らしい。
十人以上いる大所帯だと思っていたら、どうやら合同パーティだったようだ。
「もっとも、あんたがAランク冒険者っていうなら、話は別だが……」
「俺もCランクだ」
「「「Cランクが一人で来るんじゃねぇよ!」」」
めちゃくちゃ怒られてしまうルイスだった。
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