第38話 税金がかかるのか

 領都の冒険者ギルドに戻ったルイスは、職員のフィネを呼び出す。


「あっ、ルイスさん! どうやらパーティに加入されたみたいですね!」


 リゼたちも一緒だったせいか、勘違いされてしまった。


「いや、別にパーティに入ったわけじゃない」

「そうなんですか? まだお試しってところですかね? 良いと思います! 相性もありますし、試しに一緒に活動してみてから決めるのが吉です! それで、今日は依頼を探されているわけですね!」

「依頼じゃなくて報告だ。これを見てくれ」


 そう言って、ルイスはカウンターの上に白菜を置いた。


「……白菜?」


 首を傾げるフィネ。


「これはただの袋だ」

「は、白菜の袋……初めて見ました! かわいいですね! そういえば、皆さんも白菜の服! どこに売ってるんですか?」


 どうやら彼女は白菜のデザインだと思っているようだ。


「本物の白菜だぞ? まぁそんなことより、ゴブリンを倒してきたんだ。報酬額を計算してくれないか?」


 ルイスが白菜を広げ、中に入った大量の角を見せる。


「ゴブリンを倒してこられたんですね! では確認させてええええええええええええええっ!? こここ、これ全部っ、ゴブリンの角ですかっ!?」


 そのあまりの量に仰天し、フィネは大声で叫んでしまう。

 それを聞きつけ、他の職員たちが何だ何だと集まってきた。


「おいおい、なんて量のゴブリンの角だ? この量は初めて見たぞ」

「これ、変異種の角も交ってないか?」

「本当だ! しかも結構あるぞ!」


 魔物の素材に詳しい彼らにとっても珍しいことだったらしく、一気に騒ぎになる。

 フィネが慌てて訊いてきた。


「る、ルイスさんっ、これ、一体どうしたんですかっ?」

「西の森でゴブリンの巣穴を見つけたんだ」

「まさか巣穴に入ったんですか!? いくらゴブリンでも、Cランク冒険者一人じゃ危険ですよ!?」


 叫ぶフィネだが、一方で他の職員が首を傾げながら、


「いや、仮に巣穴のゴブリンを殲滅したところで、こんな数は集まらない……ま、まさか、ゴブリンキングがっ!? だとしたら大変だ! ゴブリンキングが率いる群れは、凄まじい早さで拡大していく! 一刻も早く対応しなければ……っ!」

「ゴブリンキングなら倒したぞ」

「って、倒したああああああああああああああっ!?」

「見ろ、めちゃくちゃデカい角もあるぞ!? これってまさか、ゴブリンキングの角じゃないか!?」

「ほ、本当だ!? マジで倒したのか!?」


 ざわつく職員たちに、ルイスは経緯を説明した。


「ゴブリンキングのいる巣穴に一人で乗り込んで、ゴブリンを殲滅させた……?」

「しかも捕まっていた三人を助けて……」

「な、なるほど、見慣れない顔だが、もしかして上級冒険者なのか……」

「い、いえ、ルイスさんは、新人冒険者のはずです……」

「「「新人冒険者!?」」」


 フィネがおずおずと説明すると、先輩職員たちはあり得ないとばかりに叫んだ。


「そ、そうか……じゃあ君が、噂の……」

「サブギルドマスターが、まったく無名の男を、無理やり試験にねじ込んだっていう……」

「【農民】という天職で、戦士としての活動実績もないと聞いていたが……」


 その後、ゴブリンの角は数が多く、また特殊な角も含まれているということで、いったん預かられることになった。

 そうして三十分ほどの査定が終わり、


「お待たせしました! こちらが報酬になります! 税金の30%を引いた金額となっているので、確認をお願いします!」

「げっ、税金がかかるのか」

「そうです! 金額に関係なく、一律30%があらかじめ徴収される仕組みです!」


 30%……結構な金額だな……と思いつつ、恐る恐る確認してみると、


「217万ゴールド?」

「はい! 税引き前だと310万ゴールド! 新人冒険者の最初の報酬としては、歴代最高額みたいです!」

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