第37話 寄り道してよかったな

「うぅ……これはこれで恥ずかしいんだけど……っ!」


 白菜の葉で身体を包んだリゼが恥ずかしそうにしている。


「贅沢は言えないわよ」


 と、同じく白菜姿のマーナ。


「ちなみに丈夫な白菜だから、ちょっとやそっとの攻撃なら防いでくれるはずだ」

「……やっぱり私の知ってる白菜じゃない件」


 ロロがぼそりとツッコむ。


「それにしてもすごい数のゴブリンだったわね……ゴブリンキングもいるし、変異種も多い。この角をすべて納品したら、相当な金額になるわよ」

「思いがけず大金持ち?」

「いえ、さすがにこれはすべて彼のものよ。わたしたちは助けてもらっただけ。むしろ救ってもらった恩を返さなくちゃいけないわ」


 マーナの言葉に、リゼが同意を示す。


「そうだよね! といっても、あたしたちみたいな駆け出しじゃ、できることって言ったら……あ、あわわわっ」


 何を思いついたのか、急に顔が真っ赤になるリゼ。


「確かにそれも一つの案かもしれないわね。自分で言うのもなんだけれど、幸い若くて可愛い女の子が三人いるんだもの」

「ちょっ、マーナ!?」

「全員? それとも代表者?」


 慌てるリゼに対して、なぜかロロは乗り気だ。

 リゼは「さささ、三人同時なんてさすがに!?」と叫ぶ。


「で、でもでもっ……ルイスさんのことだし、きっとすでに素敵な奥さんかいるんじゃないかなっ!?」

「いや、俺は独身だが」


 一体何の話をしているのだろうと思いつつ、リゼの予想を否定するルイス。


「ほ、本当にっ!?(こ、これはもしかして、超優良物件っ? この機会を利用して、一気に関係を持っちゃうっていう手も!?))」


 鼻息を荒くするリゼを余所に、ルイスは言った。


「そうだな。だったら三人で……」

「三人!? ルイスさんって、意外とそういうタイプなんですね!?」

「何の話だ? 三人にこのゴブリンの角の回収を手伝ってもらいたいんだが?」

「そっちかああああああああっ!」


 叫びながら思い切りズッコケてしまうリゼ。

 一人で勝手に勘違いしてパニックになったリゼが面白かったのか、マーナとロロはニヤニヤと笑っている。


「そんなことでいいなら、もちろんやらせてもらうわ」

「恩に報いる」

「ありがたい。さすがに一人じゃ手間がかかり過ぎるところだった」


 そうして四人でゴブリンの角を回収していくことになった。

 ちなみにゴブリンは死ぬと簡単に角が取れるようになるため、手で少し引っ張れば簡単に外れる。


「変異種はちょっと色や形が違うんだね!」

「そうね。確かギルドに報告すると、一万ゴールドくらいになるんだったかしら?」

「え、本当かっ?」


 マーナの言葉に思わず食いつくルイス。


「よしよし、それなら思ってたより稼げそうだな」

「……意外とお金好き?」

「いや、ちょっと事情があって、期限内に大金を稼がないといけないんだ」


 ロロの指摘にルイスは首を振る。


「ゴブリンキングの角はもっと高い報酬を得られるはずよ」

「そうなのか?」

「大量のゴブリンを生み出す元凶だもの。五十万は下らないと思うわ」

「マジか」


 予想外の稼ぎにルイスは驚く。


「寄り道してよかったな。元々は無視して通り過ぎるつもりだったんだが」

「「「……寄り道してくれてよかった」」」






 三十分くらいかけて、ゴブリンの角をすべて回収した。

 巣穴の外で倒したゴブリンなども含めて、全部で三百を超えているだろう。


「一体で五千ゴールドとしたら、三百体で150万ゴールドか! しかも一体辺りの単価がもっと高いのが三十くらいあって、ゴブリンキングの角もある。200万は超えそうだな」


 まさか初日でここまで稼げるとは思っていなかったルイスは、満足そうに頷く。


 そしてさすがに今から沼地に行くのは難しいと判断し、今日のところはいったん街に戻ることにした。

 なにせ回収した大量の角を持ち運ばなければならないのだ。


 それを白菜に包んで、背中に担ぐルイス。

 リゼたちも一緒に街に戻るようだ。


「よし、じゃあ行こうか」

「「「余裕で百キロ以上ありそうなのに、一人で軽々と……」」」

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