第12話 抵抗するんじゃねぇぞ
ダンジョンに向かう道すがら、馬車に揺られながら金髪の少年ジークがルイスに尋ねた。
「ちなみにルイスはその格好で大丈夫なの……?」
「え? ああ。これが一番落ち着くんだ」
ルイスが身に着けているのは、農作業で使っていた作業着である。
当然、防御力などないに等しい。
ジークたちが相応の装備をしているのとは対照的である。
「そ、そう(落ち着くとか、そういう問題じゃない気が……)」
苦笑しつつ、ジークはある提案をした。
「僕たちは見習い期間で、ある程度お互いのことを知ってるけど、新しくルイスが加わったし、改めてそれぞれの能力を確認しておこう」
「そうっすね! メンバーの特徴を理解することが、パーティ戦の第一歩っす!」
リオが同意する。
もちろんルイスとしても異論はない。
「ルイスはステータス測定って受けた?」
「ステータス測定……?」
聞き慣れない言葉に首を傾げるルイス。
「攻撃力、防御力、敏捷力、体力、それから魔力の五つの項目で、現時点の能力を知るためのものなんだ。例えば【パラディン】の僕は、攻撃力がE判定、防御力がC判定、敏捷力E判定、体力D判定、魔力D判定だった」
同じ天職でも、どの能力が高いかは個人差がある。
そしてその能力値の傾向次第で、戦い方も変わってくるという。
「僕の場合、どちらかというと【パラディン】ではオーソドックスな能力バランスだね。攻撃役はあまり向いていないけど、盾役と回復役ならどちらでもいけるよ。でも、今回は【聖女】のコルットさんがいるから、盾役として前衛にいるのがいいかな?」
ジークは剣と盾を装備しているが、まだ剣系の特技は習得できていないらしい。
盾系の特技と、簡単な回復魔法を使えるといった状態のようだ。
続いてリオがステータス測定の結果を開示する。
「【赤魔導師】のおれは攻撃力F判定、防御力E判定、敏捷力D判定、体力E判定、魔力C判定っす。魔導師系にしては、敏捷力が高めって言われたっす。基本は後衛っすけど、あちこち動き回りながら戦えるっすよ。体力はあまりないっすけど」
ステータス測定における攻撃力というのは、あくまで物理的な攻撃力だ。
魔力値が高く、赤魔法という攻撃的な魔法に長けた【赤魔導師】であるリオは、恐らくパーティの火力役として活躍できるだろう。
「あ、あたしは……【聖女】で、攻撃力F判定、防御力C判定、敏捷力F判定、体力F判定、魔力C判定、です……」
コルットがおずおずと測定結果を口にする。
「防御力がCというのは【聖女】としては珍しいよね」
「……あたし、昔からちょっと人よりも打たれ強いんです……」
「そういう問題っすかね……?」
【聖女】は回復のエキスパートだ。
現時点で、すでに中級レベルの回復魔法を使うことができるという。
防御力が高くても、その役割からして明らかに後衛だろう。
「なるほど……なんか面白そうだな」
今の自分がどれくらいの実力なのか、機会があれば、ぜひ自分も判定してもらいたいと思うルイスだった。
「【農民】って、どうやって戦うっすか? 武器は鍬とか……?」
「そうだな。鍬で魔物を倒すこともあるが……」
と、そのときである。
彼らの乗る馬車の行く手を阻むように、武装した集団が現れた。
「ひひいいいんっ!?」
その集団が放った矢が前脚を掠め、馬が鳴き声を上げて停止する。
「へへっ、抵抗するんじゃねぇぞ」
「大人しく金目のもん、全部だしやがれ。そうすりゃ命だけは助けてやるぜ」
「ただし、女は貰ってくけどなぁ! ぎゃははははっ!」
どうやら盗賊のようだ。
「わざわざ戦士を狙うとは、馬鹿な盗賊ですわね……」
試験官のエリザが呆れたように溜息をつく。
まったく焦る素振りもない。
それもそのはず、いくらこちらが少数で、しかもまだ見習いの少年少女たちばかりであったとしても、戦士とそうではない人間たちの差は大きく、まず太刀打ちなどできないのだ。
「ちょうどいいな。こんなふうに土を操作して戦うこともできるぞ」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「な、なんか出てきたっす!?」
「土でできた腕……っ?」
ルイスが土を操作して作り出したのは、巨大な腕だった。
「「「は?」」」
いきなり地面が盛り上がったかと思うと、目の前に出現した高さ三メートルを超える腕。
つい先ほどまで意気揚々としていた盗賊たちも、唖然として言葉を失う。
直後、その腕が盗賊たちをまとめて殴り飛ばした。
「「「ぎゃああああああああああああああっ!?」」」
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