恋花火 咲いて勢い 想い告げ

『恋花火 咲いて勢い 想い告げ』

      桃もちみいか作





【夏だから〜花火大会🎆の恋物語〜】


 勢いまかせに、好きな男の子を花火大会に誘っちゃった。


 来てくれて嬉しい!

 よかった。


 ……憧れの彼。


 気づけば、大好きになってた。


 来るとは言ってたけど、来てくれないかと思ってた。ドキドキしながら待ってた。


「よぉっ! 待たせたかな? でもさ、早くね? 俺も約束の時間より早く来たのに」

「……楽しみにしてたから、早く来すぎちゃった」

「あっ、ああ、そっか。ちょっとそれ嬉しいけど」

「嬉しい?」

「うん、嬉しいよ」


 花火大会の会場の河原沿いを歩く。

 たくさんの人がいて、お祭りの屋台が建ち並ぶ。


 お互い、言葉少なになってる気がする。

 普段は二人でめっちゃ喋るのに。


 私、浴衣なんて着てきたけど、変じゃないかな〜?


 君のとなり、ドキドキが止まらない。


 歩くのもぎこちなくって。


「今日、浴衣を着て来てくれたんだ? 可愛いね。……まあ、いつも可愛いけど」

「――えっ?」

「俺のためにお洒落してきてくれたの? なーんて自意識過剰かあ」

「えっ、えーっと」

「俺も浴衣を買って着てくれば良かったかなあ」


 どうしよう。

 上手く話せない。

 君とどんな風にお喋りしてたっけ?


 花火が上がりだす。

 夜空に大輪の色とりどりな、火の花が咲く。

 二人で花火を見上げる。

 花火は大きな音と火薬の匂いをさせ、広がる空の黒いキャンパスに彩りを変えて咲く。

 

 私は次々と夜の空に上がる綺麗な花火を見ながらも、ちらちらと背の高い君の横顔を仰ぎ見てしまいます。


「……わっ、私!」

「んっ?」

「あのね! ……さっきの合ってるの、当たりだよ。今日ね、君のために浴衣を着て来たの」

「そっ、そっか。……ありがとう」


 花火のどーんと大きな音は、二人の声を時々かきけす。


「屋台でさ、焼きそばでも買って。そこの土手で食べながら、花火見るか?」

「うん……」

「どうした?」

「……うん」


 私は歩いていこうとする彼の服の裾を握った。

 振り向いた彼の笑顔は、私の大好きな優しい笑顔だ。


「行こう」

「うん。……あのね」

「んっ?」

「好き」

「えっ?」

「大好きっ!」


 私と君。

 ふたり、じっと見つめ合う。


「好きです。……もしっ! もし良かったら、私と付き合ってくださいっ!」


 ……あの、聞こえたよね?

 返事……。


 聞こえてたら、返事が欲しいよ。


 鳴り止まない花火の音が、私のドキドキと混ざる。

 でも、私の心臓の音は花火の音にも負けない。


 びっくりした顔した君、ちょっとしたら恥ずかしそうに照れた。


「聞こえた? 私の告白」

「ああ、もちろん。聞き逃がせない内容でしたので」

「そ、そっか。……出来たら、返事欲しいんですけど」


 私がそう言ったら、弾けるように君はにこって笑った。




         おしまい♪

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