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その後も、男性達や女性達が周りで盛り上がり、たまに私に話を振って。
私は高級な時計を眺めた後、その光景をまた見る。
思ったより、悪い気はしなかった。
飲み会から2時間が経とうとした時、個室の襖がゆっくりと開いた・・・
何気なくそこを見ると・・・
そこには、少し汗を浮かべた結城部長がいた。
「結城部長!!!お疲れ様です!!!」
「珍しいですね!?」
私の周りにいた第2営業部の男性達と女性達、そして他の席にいる、恐らく第2営業部の男性達は歓びの声を上げた。
虫1匹も殺せないような顔で笑い、結城部長が少しだけ、私を見たような気がする。
「もう締めるかな?少しだけ参加するよ。」
スーツのジャケットを脱ぎながら、結城部長が私のいるテーブルに着く。
長袖のワイシャツの袖を捲り、結城部長の腕が現れる・・・。
“菩薩”の顔には似合わないような、よく筋肉のついた腕。
少し深呼吸をして、私は高級な腕時計を眺め、右手で少しだけ触れる。
「結城部長、クールビズなんですから、ネクタイ外しちゃいましょうよ!」
その言葉に、私は顔を上げる。
そんな私を、結城部長が少しだけ見たような気がする。
「これは、いいよ。」
ネクタイを緩めるどころか、結城部長はネクタイを絞め直した。
「花崎さんって、今恋人いるんですか?」
営業事務の女性が言った一言に、周りにいた男性達も静まり返る。
そして、全員が私を見ている・・・。
私は少し深呼吸をして、ゆっくりと高級な腕時計を眺める。
そして、顔を上げた時・・・
「そういうのは、よくないね?」
と、結城部長が言った。
私を見ていた全員が、今度は結城部長を見る。
「こんな大勢の前でそういうのは、よくないね?」
と、営業事務の女性に優しく諭す。
「そうですよね!?ごめんなさい、花崎さん!!!
花崎さんのこと、私すごく興味がありすぎて、気になって聞いちゃいました・・・。」
高級な腕時計に触れながら、慌てて謝る女性に私は笑い掛ける。
「もっと仲良くなれたら、教えてあげる。」
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