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7月も下旬が始まる。
経理部の中では、静かな時間が過ぎる。
全員が各々の作業に没頭している。
そんな中、1つの書類に気付き・・・私はゆっくりと立ち上がる。
「営業部、行ってきます。」
フロアの床に、少しだけピンヒールの音が響く。
規則正しいその音が、わたしを冷静にしていく。
もうすぐ、営業部・・・
「麻美さん!!!」
急に大きな声で呼び止められ、私は立ち止まる。
ゆっくりと振り向くと、何度か経理の処理でやり取りをした男の人。
「なにか?」
役職者ではないのを確認し、私は足を気持ち広く開き、左手を腰に当てる。
そんな私の姿を見て、目の前の男の人が興奮していくのがすぐに分かった。
「金曜日、飲みに行きませんか!?」
社内で、大きな声でそんなことを言った。
私が少し深呼吸をした時・・・
「キミ、よくないね?」
と、少しだけ香るタバコの匂いが私の後ろからした。
振り返ると、私の真後ろ・・・。
私に身体を少し触れるように立つ、結城部長がいた。
「ゆ、結城部長・・・!?」
突然現れた結城部長に、目の前の男性が慌て出す。
「キミ、社内で、あんなに大きな声で女性を誘うものじゃないよ?」
「失礼しました!!!」
と、また大きな声を出し、走り去って行った。
それを見送りながらも、真後ろに感じる熱に身体が興奮していくのが分かる。
「それで、花崎さん。」
「はい・・・」
「金曜日、僕とお食事行きませんか?」
と、私の耳元で囁いた。
耳元から背筋にかけて快感の波が走り、私は無意識に身体を捩る。
その反動で、真後ろにいた結城部長の身体にトンっと当たり・・・
そのタイミングで、結城部長の右手がスルリと私のお腹に回る。
「行きませんか?」
また、耳元で囁かれ・・・
私は無理矢理、深呼吸をする。
そして、結城部長の右手に手を添え、ゆっくりと私の身体から離していく。
「結城部長、こちら、印鑑お忘れですよ?」
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