第5話 万能魔細胞

必要なことをまとめるとしよう。


「まずは不滅の肉体からつくりましょう、完全な0から創っては拒絶反応が出る危険性が高そうです、創造魔法なら可能でしょうが魔力が不足し過ぎる事態は避けたい、ならば私の肉体から少しずつ改造して置き換えていけば良い。」


そして、仮説が正しければこの肉体を創る事により保有最大魔素は増え魔素不足問題も一挙に解決出来る。


ずは魔力を大量に保有出来る細胞を暫定的に【魔細胞】と名付けそれによって構築される臓器をそれぞれ【魔臓】血液を【魔血】とし、面倒だし骨も肉も神経やらも魔臓の一部ということで、血液なんかも分けたらいくらでも分けられるけれど、現在の血液を役割自体は全く同じで魔素保有量が多い魔血と入れ換えれば問題はないでしょう、となれば。」


「【創造魔法:魔素漏洩防止用ガラス容器】おお、なんか未知のウィルスでも入ってそうな円筒状の容器が出てきましたが、これに【創造魔法:万能魔細胞】よし、特殊な研究施設などを持たない私が創造魔法を発動する際に想定した方法で分化誘導を促すために………指を切り落とします。」


「万能魔細胞とはうたっていますが、より正確に言うと【侵食型万能魔細胞】と言ったところですか?」


個人の細胞に分化させるためにシグナルを出す必要などなく、普通の細胞に侵食しそれを同じDNAを持つ魔細胞に変化させ反応が終われば侵食は止まる、医学知識など無い一般人でも想像出来そうな程度のご都合主義細胞だ。


「直に自分に投与した際に自我の連続性の確認が取れませんし、大きな部位だと痛みや違和感が酷くて急な対応が必要な時に命取りですからやはり小指ですか、それも違和感を最小限にするべく第一間接程度まで、関節ならば素人でもいけるでしょう。」


「こういう使用用途ではないですが、紙の大きさを整えるための裁断機が一番鋭く一息にいける刃物ですかね?」


万が一の為に左腕に部屋に有ったマジックで【回復魔法:完全回復】と書いてから裁断機の狭い隙間に指を挟み込む、鋭い裁断機の刃に触れただけで指の薄皮が切れて、血は出ていないのに肉が露出している、こんな馬鹿な行為をすることになるとは夢にも思わなかった、いや、裁断機の刃で怪我をした日の夢では見たかもしれない。


「よし、いくぞ…いくぞ!」


ぐっと右手に力を入れ…(ダンッ!)


「ウッグッぎっ!(ゴッ!)がっ!?」


左手の短くなった小指を押さえながらのたうちまわり、左足の小指を裁断機の台座にしたたか打ち付ける。


「~☆ー_ー ̄ー@ー!」


声にならない声で悲鳴をあげつつ部屋中を真っ赤に染め上げる。


不味いとは思っているが何が不味いかわからない、全身がこわばり痙攣けいれんし脂汗がにじみ出る、額からだらだらと溢れる脂汗が目に入るが拭いている余裕など無いので汗が目にみる、思考が纏まらない。


何かしなければならなかったはずだ、汗と涙でぼやける視界で万が一の備えに左腕にマジックで書いた【回復魔法:π△□復】の文字を見つける、なんだこれは?


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、初めて魔法を使った時の方が重症だった筈なのに妙に冷静なせいで余計に痛みが際立つ…特に足の小指、痛みを何とかしなければ何もわからない、確かアレがいいんじゃなかったか。


「ひっひっふー…ひっひっふー…ひっひっふー…心なしか楽になった気がする…あ、【回復魔法:完全回復】ふぅ~~、想像の遥か上を来る足の小指の痛みは完全な想定外、左手の小指の方が綺麗に切れたおかげで痛みが少ないとか予想外過ぎる。」


裁断機の刃の横に落ちていた自分の手に付いていない方の小指を拾い円筒状のガラスの容器に回収する。


裁断機の刃は骨に当たって刃こぼれがあったので修復魔法のリペアで修復し、部屋もクリーンで飛び散った血液を綺麗にする。


「あぁ、もう少しです…もう少しで…」


恍惚としながらも次は何も蹴る物がない風呂場ですること、文字は油性のマジックで書くこと、実験が成功した暁には痛覚を遮断か麻痺できる魔法かスキルを創造することに決めたのであった。

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