第4話 テセウスの船

「この二日で魔素と魔力の定義付けは完成度について言及しなければ完了した、魔素の最大量か1502、そして今朝起きてすぐ鑑定して1503だったことをかんがみれば2回の枯渇と魔素不足をて1500から3伸びて1503になった可能性が見てとれる。」


「つまり一回気絶or死にそうな体調不良に見舞みまわれる度に1魔素が増えて、それを基準の数値としておそらくキリの良い1500の魔素を元から魔法のハッピーセットで有していたと、地獄か?」


 そんな辛い思いをしてやっと1伸びるそれを続けるには尋常ではない根気が必要だし続けたところでたかが知れている。


 魔素自動回復速度上昇や最大魔素量増加等は気絶して起きないまま餓死等の危険がある、今までも同じような危険を犯していたが、直接ではないとはいえ命の危機を自覚した今では今のところ自ら危険を犯す必要性も感じない。


 それに、私の計画を開始するのが何十年後になるのだろうか?老化による計画への影響は?それ以前に事故死や病死の可能性は?考え出せば問題点はキリがなく上がってくる。


「常識を捨てろ、良識を捨てろ、そんなもの人間が人間のために作った物差しだ。」


「私にこの力を授けてくださった方は人間の枠組みの外のお方だ、だから使い方も人間の枠組みで使おうとすれば制限される、回復魔法なんて現在の人間の常識をはるかに越えて……あはぁ」(ニチャア)


「そうだ、回復魔法…いや、自然回復…駄目だ、複製…そうだ複製だ…脳細胞…いや脆い…複数の機能を持った細胞に…いや、万能細胞に脳の機能を付与…さらに心臓にしか魔素を蓄積ちくせき出来ない問題の解決…いっそ血液も…いけるか?」


「まさか、テセウスの船を自分の身体で再現することになるとは思いませんでしたが、理想の為ならやむを得ない、いやむしろ人間であることを捨てる良い切っ掛けとなってくれることだろう。」


「世界、と呼ぶのでは抽象的ちゅうしょうてきすぎて貴方を指し示すのに適していない、人間の作った枠組みの中で最も貴方の存在に近いものはやはり『神』なのでしょう、人間を逸脱いつだつしようとしながら貴方をたたえる為に、貴方を表すのに人間の言葉をもちいないといけない、ジレンマですね。」


「神よ、私は貴方にいただいたこの力で新たな自分へと生まれ変わります、完全な不老不死、それはやはり人間が常に追い求めていただけあって、それに近いイメージは既に完成している、ファンタジーの中に有る吸血鬼だ。」


「細胞の一つでも残っていれば生き返る、これを再現するなら全ての細胞に分化する万能細胞に脳の機能を付与し、細胞全てに自分の記憶をコピーする、細胞には一瞬にして人体を形作れる程の細胞分裂機能を、その上で細胞自体に肉体の設計図を持たせておき必要以上の分裂を防ぐ、設計図の劣化による癌化も新たに【状態維持魔法】でも作り付与して防ぎ、予備の身体も事前に作っておけば不測の事態でも何とかなるでしょうし、常に予備の身体と同期しておけば記憶の欠損もないでしょう。」


「予備の身体まで侵食するような能力が有った場合も考えて、さらにスタンドアローン型の予備も作り自分の肉体だけでなく出来るのならば魂的なものにも記憶を……(ここから早口)そうか魂!心臓付近に魔素が蓄積するのはそこに魂がり、魂とは魔素を受け入れる器そのものなのでは?だからこそ魂が身体から離れる時に21グラム分の何かが共に身体から離れる。」


「魂が魔素の器ならば魔素を受け入れられる肉体を作ればそれは魂のストックを作ることと同意義?スタンドアローン型以外の全ての予備と常にリンクし、万が一侵食を受けた場合は自動でリンクを切断するようにして、スタンドアローン型は定期的に更新をし魂の分け身を入れておく、魂の可視化をして直接記憶を保持する能力の付与を行えばわざわざ記憶を細胞にコピーする必要はなくなるし、それどころか万が一肉体を失った際の紐付けの優先順位も思いのままだ!記憶に関しては物理的アプローチなんて全部ポイですねぇ!」


「そのための第一歩は、魂の存在証明つまり魂の可視化、次は魂への思考能力と記憶保持能力の付与とこれまでの記憶のコピー、その過程で意識の連続性の確保といった所ですか、そして魂の総量の増加と分け身の作成!」


 今、いかれポンチ大増殖計画が発動する!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る