目覚めると、イスルギが枕元に座っていた。

 カーテンが開けられ、朝日が燦々と差し込んでいた。僕は眩しさに目を眇める。

 まだ、例のアパートの居間だった。あれから気を失ってしまったらしく、三ツ橋の寝ていた布団にそのまま寝かされていた。

 僕が起きたことに気付いたイスルギは、「終わったよ。お疲れさま」と淡々と告げた。

 ぼうっとしたまま、その白々とした顔に目を向ける。

「……三ツ橋は……?」

「彼は病院だ。まあ、この部屋を出たらすぐに熱も下がったし、明日には回復するだろう」

 この部屋で虐待死があったらしい――とイスルギは僕に言った。

 母親が狂った儀式に傾倒し、我が子を死に至らしめたのだという。

「虐待がばれないよう、子供は押入れにずっと閉じ込められていたそうだ」

 ――知ってる。

 僕は怒りのあまり、ぐっと唇を噛んだ。

 子供が恨むのならわかるのに――どうして加害者のの方が化けて出るのだ。

 僕は、イスルギの背後から覗き込む、穴の開いた顔の女を睨みつけた。

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