三
①
目覚めると、イスルギが枕元に座っていた。
カーテンが開けられ、朝日が燦々と差し込んでいた。僕は眩しさに目を眇める。
まだ、例のアパートの居間だった。あれから気を失ってしまったらしく、三ツ橋の寝ていた布団にそのまま寝かされていた。
僕が起きたことに気付いたイスルギは、「終わったよ。お疲れさま」と淡々と告げた。
ぼうっとしたまま、その白々とした顔に目を向ける。
「……三ツ橋は……?」
「彼は病院だ。まあ、この部屋を出たらすぐに熱も下がったし、明日には回復するだろう」
この部屋で虐待死があったらしい――とイスルギは僕に言った。
母親が狂った儀式に傾倒し、我が子を死に至らしめたのだという。
「虐待がばれないよう、子供は押入れにずっと閉じ込められていたそうだ」
――知ってる。
僕は怒りのあまり、ぐっと唇を噛んだ。
子供が恨むのならわかるのに――どうして加害者のおまえの方が化けて出るのだ。
僕は、イスルギの背後から覗き込む、穴の開いた顔の女を睨みつけた。
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