第三話 凶宅
一
①
「そうだな。いわゆる事故物件というやつだ」
例のごとく三ツ橋から一方的な連絡を受けて池袋の事務所に向かった僕に、イスルギは言った。
「そこはその道の識者の間では有名な幽霊アパートでな。今は非公開物件になっているんだが、噂を聞きつけた
それは識者じゃなくて
僕の胡散臭げな視線を受け流し、イスルギはバインダーファイルに視線を馳せた。
「現在ちょうど開いた状態だ。そこで一晩過ごしてもらう。それが今回の仕事だ。心配せずとも心霊体験はその部屋にいる時に限っていて、引っ越してしまえば、その後
「まだ受けるとは言ってないんですけど」
僕は冷ややかに言う。イスルギは目を細めた。
「何をそう悩むことがあるんだね。繰り返すが、
「その怖いのがきついんです」
恨みがましく見返した僕に、イスルギはにやりと笑ってみせた。
「なら二人でならどうだ? 話し相手でもいれば怖さも和らぐだろう?」
僕はぎょっとする。他人と二人きりで一晩過ごすなんて、気まずいことこの上ない。
「いや一人でいいです。人と話すの、苦手なんで……」
「まあそう言っていられるのも今のうちかもしれないよ」
イスルギは意味ありげな台詞を言い、心霊物件の住所を記した紙を差し出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。