23 ???

 ピアノ。綺麗で、透明な。


「あのピアノは」


『人だよ。この店内で、お前以外唯一の』


 人、か。

 ピアノを弾いている女。楽しそうに、にこにこしている。それなのに、曲調はどこまでも軟らかで、静かだった。


「あ」


 見ていたことに気付いたのか、女が声をかけてくる。その瞬間だけ、ピアノの音が、ちょっと速くなる。


 自分の中の、大事な何かが。


 満たされるような。


 そんな気がした。

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