24 Erry R erde

 部屋に帰ってくる。

 ミントの確認。彼の匂い。今は、わたしの匂いになっているのだろうか。今のまっさらな彼にとっては、女のひとの匂いなのかもしれない。


 トレーニング器具。最近はわたしが使っている。肩回りの筋肉の増強。体力強化。もっとたくさん喋る。もっとたくさん弾く。そのためのトレーニング。


 少し遅れて、彼が部屋に。

 いつものように、やさしく。彼に抱きつく。

 何も、返答がなくても。彼が喋れなくても。思い出せなくても。

 それでもいい。

 そのぶんだけ、わたしが喋ってあげる。ここがあなたの帰る場所。


 耳もとに顔を寄せる。


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