13 昆塚

 目が、覚めた。

 目もとのあたりが、かさかさする。これは。乾いた涙か。

 ベッド。目の前に、彼女の胸。起こさないように、そっと、離れる。


 自分の部屋。自分のベッド。彼女。


 残酷なほど、心は冷静だった。


 普通に類推できてしまう。


 記憶がない自分を連れて、彼女が肩を元に戻しに行く。そこで、記憶の無い自分が彼女の声について聞かされる。


 部屋に帰ったあと、うちひしがれている何も知れない自分を、彼女がなだめてくれて。肩の動かない彼女が、あお向けで。その上に自分という形で眠っていた。


 そんな感じか。


 一応、彼女の身体をさわって確認する。大丈夫。肩はちゃんとはまっているし、綺麗なまま。何も、起きてはいない。本当にあお向けとうつ伏せで寝てただけ。なんか笑えてくる。


「さて」


 行くか。

 彼女の肩は治った。

 あとは、俺の街のほうを。

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