12Erry R erde

 あぁ。

 しまった。

 ひとりで来れば、よかったのに。


 そう。

 日中の彼には、私の肩と声のことは、話していない。だから、彼は。なにも知らない。


 帰り道。

 ごめんなさいって言いたいけど。声が出ない。肩も、うまく動かない。彼に、伝える方法が。無い。


 彼の、部屋。


 促されるまま、ベッドに寝る。わたしの匂い。わたしが寝てたから。


 彼。

 透明な机の前で。

 しょぼんとしている。ごめんなさい。わたしのせいで。気にしないで。わたしは、何も。気にしてないから。


「ごめんなさい」


 えっ。


「何も、わからなかった」


 どうしよう。泣きはじめちゃった。何も彼はわるくないのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る