11 No data.

「あの」


 目の前の、女のひと。


「今日、肩の関節を元に戻すんです」


 肩の関節。なんのことだろう。


「一緒に来てもらっても、いい、ですか?」


「あ、はい」


 なんのことだろう。

 誘われるまま、なんの愛着もなく記憶も戻らない部屋を出て。街を歩いて。そして、彼女が診てもらうのをなんとなく眺めて。


 彼女の、肩の関節が。


 はまるのを。


 ぼうっと眺める。


 なんか、模型とか。


 そういうのがはまるみたいな感じなのだろうか。


 ベッドに寝せられている彼女。とくに何か異変があるでもなさそう。ただ、肩をちょっと動かしただけじゃん。


「これで、肩は正常になります」


「はぁ」


 先生。俺を関係者だと思っているらしい。まぁとりあえず話ぐらいは聞くか。


「話せるようになるかは、分かりません」


「え?」


 話せるようになるか。分からない。どういうことだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る