09 昆塚
想像していないぐらい重たい話がいきなり来たので、ちょっと理解が追いついてこない。
「あなたとは、街で会って」
即席の、ピアノみたいなやつ。ちょっと音が変わる。
「なんか、しょうかいはん、っていうかたに。家を教えてもらって。なんか、その流れでいろいろ」
哨戒班。この女を俺の連れだと勘違いして、部屋内の諸々を任せたのか。たしかに、哨戒班の任務は街の哨戒。俺の部屋の中は、哨戒範囲外ではある。部屋は街じゃない。
「おっと。やばいな。いま何時だ」
部屋には時計がない。いままで、時計が必要な生活をしてこなかった。形態端末。
夜明けまで。
3分ぐらいか。
時間がない。
「あの」
ピアノ。
「そうだな。ええと。俺の話を3分でします。その上で、この部屋に残るか決めてください」
3分で、できるだろうか。
「俺は、街を狙う怪物に、半分心を食われました。なので、1日の半分は記憶がありません」
自分のことながら、なんと無難な説明。
「いま怪物は俺の半分を食って満足しているようですが、いずれ街を崩壊させに来ます。その前に、俺が闘います。これが俺の任務です」
そう。任務。そして。
「場合によっては、俺は死にます。それが目的でもあります。俺は生粋の死にたがりなので」
しぬためなら。なんだっていい。
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