07 昆塚

 こうなると、なかなか難儀だった。


 日が暮れて、完全な夜になると、目が覚める。そのとき、どこにいて、何をしているかは、完全に分からない。

 とはいえ、街の中にいる。街を出ない限りは、どんな方法でも。


「大丈夫ですよ。我々の管轄下にあります」


 哨戒班。


「今日の俺は、何をしていた」


 訊いてみる。


「女を部屋に連れ込んでました」


「は?」


「部屋の中のことまでは。分かりません。いかがわしい感じではなさそうですけど」


「いや、そんなことじゃなくて」


 ピアノの女か。なんとなく、そんな気がする。


「任務は」


「保留。報告は受け取っています」


「そうか」


 夜しか動けない以上、どうしようもなかった。


 とりあえず。

 部屋に戻る。

 何も、変化はない。

 陽光を遮断してみようか。いや、なんか、無理だな。どっちみち、半分食われたという事実は変わらない。光や時間ではなく、もっと根源的なところで、何かを失っている。


「あ?」


 部屋のドアが開いた。なぜ。


「あ」


 女。店でピアノ弾いてた女か。

 こちらに近付いてきて。

 指が。

 肩にふれる。

 ぱたぱた。


「ただいま」


「いや俺の部屋だけど」


「うん。だから、ただいまです」


 どうなっている。

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